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2次創作小説「ガンダム レコンギスタの囹圄」目次 [Gのレコンギスタ ファンジン]

この作品は「ガンダム Gのレコンギスタ」の続編2次創作「ガンダム レコンギスタの囹圄」です。

5部作になるという劇場版の完成が待ちきれない方など、暇なときに読んでいただければ幸いです。

前半・後半部分をクリックすると記事に飛びます。

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第01話「法王の亡命」        前半 後半 加筆済み
第02話「クンタラの矜持」      前半 後半 加筆済み
第03話「アメリア包囲網」      前半 後半 加筆済み
第04話「ケルベスの教え子たち」   前半 後半 加筆済み
第05話「ザンクト・ポルトの混乱」  前半 後半 加筆済み
第06話「恋文」           前半 後半 加筆済み
第07話「ムーンレイス」       前半 後半 加筆済み
第08話「フルムーンシップを奪え!」 前半 後半 加筆済み
第09話「全体主義の胎動」      前半 後半 加筆済み
第10話「ビーナスの秘密」      前半 後半 加筆済み
第11話「ヘルメス財団」       前半 後半 加筆済み
第12話「全権大使ベルリ」      前半 後半 加筆済み
第13話「失われた設計図」      前半 後半 加筆済み
第14話「宇宙世紀の再来」      前半 後半 加筆済み
第15話「月の同盟」         前半 後半 加筆済み
第16話「死の商人」         前半 後半 加筆済み
第17話「レイハントンの子供」    前半 後半 加筆済み
第18話「信仰の根源」        前半 後半 加筆済み
第19話「トワサンガ大乱」      前半 後半 加筆済み
第20話「残留思念」         前半 後半 加筆済み
第21話「法王庁の影」        前半 後半 加筆済み
第22話「主導権争い」        前半 後半 加筆済み
第23話「王政の理屈」        前半 後半 加筆済み
第24話「砂塵に帰す」        前半 後半 加筆済み
第25話「ニュータイプの導き」    前半 後半 加筆済み
第26話「千年の夢」最終回      前半 後半 加筆済み

最後まで読んでくださった方々に感謝いたします。コメント機能は外してあるのでご容赦ください。

Gレコ劇場版に少しでも善いファンがついて富野監督の想いが伝わるようお祈り申し上げます。


ガンダム Gのレコンギスタ キャラクターデザインワークス

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 一迅社
  • 発売日: 2015/07/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



ガンダムウェポンズ ガンダム Gのレコンギスタ編 (ホビージャパンMOOK 684)

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ホビージャパン
  • 発売日: 2015/10/31
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ガンダム Gのレコンギスタ オフィシャルガイドブック

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 学研パブリッシング
  • 発売日: 2015/09/23
  • メディア: 単行本



ガンダム Gのレコンギスタ

ガンダム Gのレコンギスタ

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: Kindle版




共通テーマ:アニメ

劇場版「ガンダム Gのレコンギスタ I」公開日11月29日に決定 [Gのレコンギスタ ファンジン]

劇場版「ガンダム Gのレコンギスタ I『行け!コア・ファイター』」の公開日が11月29日に決定しました。→https://natalie.mu/comic/news/344889

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2週間限定公開ですから年末公開の大作が始まる前の閑散期にようやく箱を確保したみたい。スクリーン数にも限りがあるので、アニメ映画は確保が難しいんですよね。

いまのアニメファンにこの作品のテーマ性が通用するとは思っていないので、劇場5部作って本当かなって感じだったのですが、変更はなさそう。売れなかったとしても最後までやるみたいです。劇場にこだわるより配信オリジナルの方が予算確保はできそうな気もしますけど・・・。

結局ガンダムであったことがこうしてあだになるんですよね。試写会でも自称ガンダムファンが胸ぐらを掴み合ったとの情報があるように、気狂いの集まりなので出来れば関わりたくない。青葉の事件がありましたけど、アニメファンなんていまはあんなもんですよ。

自分の人生が上手くいかないものだから気狂いになってどこでも暴れる。

金を貯めて嫁ともどもセカンドライフに突入したウチらが関わる相手じゃない。そういうことなんですな。ガンダムでやらず、もっと思いっきり難解であったならバカは寄ってこなかった。変に媚びるから警察を呼ぶの呼ばないのって話になる。

この作品が放送されていた当時からおかしい奴がたくさんいて、何とかフレンズ2だの、京アニ放火事件だのを経て、アニメにすがりついていちゃいかんわけですよ。

ガンダムじゃなければアマゾンオリジナルの予算で好きに作れたのに、やはり冨野はテレビ時代の人なんですよね。テレビと映画の時代の人。それでもガンダムじゃなければもっと自由があった。

ガンダム=青葉レベルでしょ。あいつがガンダムだったのでは?


ガンダム Gのレコンギスタ キャラクターデザインワークス

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ガンダム Gのレコンギスタ コミックセット (カドカワコミックス・エース) [マーケットプレイスセット]

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  • 作者: 太田 多門
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/12/22
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安田 朗 ガンダムデザインワークス

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 一迅社
  • 発売日: 2017/06/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




共通テーマ:映画

劇場版『ガンダム Gのレコンギスタ』フランス「Japan Expo」で公開 [Gのレコンギスタ ファンジン]

記事→劇場版『ガンダム Gのレコンギスタ』世界最速上映!フランス「Japan Expo」7月4日~7日パリで開催!

記事→ガンダム Gのレコンギスタ:劇場版は全5部作 第1部「行け!コアファイター」世界初上映

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大人は観なくていいと言い切っているのがなかなか心強い。

ここでいう「大人」とはゲーセンで奇声を上げている「大人」のことで、見放されているんだよな。あいつらは最近女体メカプラモを作っているらしい。

な? そういう奴らだったろ? 人として終わってるんだよ。

「ガンダム」とタイトルにあるが「ガンダム」じゃないとも言い切っている。

バンダイは「ガンダム」で金儲けしたいのなら、女体ガンダムが戦う作品を作ればいいんだよ。あとは声優イベントのチケットをつけて、ソシャゲ展開して。いくらでも金になるぞ。ガンダムファンなんていまはそんな連中ばっかりなんだからせいぜい巻き上げてください。

ようやくだな。田舎で公開予定がないのがつらいところだ。


ガンダム Gのレコンギスタ キャラクターデザインワークス

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  • 出版社/メーカー: 一迅社
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共通テーマ:アニメ

「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:73(Gレコ2次創作 第26話・最終回・後半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第26話「千年の夢」最終回・後半



(OP)


ベルリとラライヤが降りたのはスコード教の神殿の奥の院だった。

上空から見ると天井部分がレイハントン家の紋章になってキラキラと輝いている。その中庭には青々とした芝が広がり、色とりどりの花が咲き乱れて、年中蝶々が舞っているようなのどかな場所だった。

普段はスコード教の幹部しか入れない奥の院に、モビルスーツで上空から舞い降りて侵入したのはベルリとラライヤが初めてだった。そのような不敬なことは絶対に赦さない厳格な雰囲気が漂う場所に立ち、ふたりは切羽詰まった外の世界とあまりに違うことに驚いていた。

ふたりは口々に案内してくれる人を探した。牧師や神父、職員、信徒いずれも見当たらない。少し戸惑いながらもふたりは建物の中へと入っていった。

上空からレイハントンの紋章に見えたのは、天井のステンドグラスのためだった。柔らかな光が天井と壁面の窓から差し込んで小さな埃をキラキラと輝かしていた。ベルリとラライヤは様々な色ガラスに照らされて2体の美しいオブジェのように映えた。

複雑な通路を抜けると礼拝堂があった。スコード教の上級幹部かもしくは神学校の成績優秀者しか入れない特別な礼拝堂なのでさほど広くはなく、壁面には古代の様々な宗教の神々がレリーフになって掲げられていた。

ふたりは注意深くG-メタルの挿入口になりそうなものを探した。壁の隅々、礼拝堂の椅子、祭壇、真っ白で装飾的な柱、そのどこかにG-メタルを使う場所があるはずなのだ。

ラライヤ「(ガッカリした表情で)ありませんねぇ」

ベルリ「上空から見たときはもっと大きな建物だと思ったのに、ここで行き止まりなのか」

ラライヤ「(人差し指を口に当て)誰か来ます。アイーダさん?」

ベルリの脳裏にも閃くものがあった。上空を見上げると、天井付近にグリモアが近づいてくるのが見えた。グリモアの方もすぐにG-セルフとG-アルケインを発見したのか、ゆっくりと中庭へと降りてきた。ハッチが開くと中からアイーダが姿を現した。

ベルリ「どうして姉さんがここに?」

アイーダ「さあ・・・閃くものがあったんです。ここに来なきゃいけないって。ふたりも?」

ラライヤ「わたしたちもそうです」

ラライヤが応えるのをアイーダは不思議そうに見つめた。ノレドでないことが奇異に感じられたのだ。

ベルリ「ここはスコード教の神殿なんですけど、G-メタルを使って何かをしなきゃいけないはずなのに、どこにも使える場所がなくて。もう時間もないし、最悪、みんな脱出してもらって、ぼくはG-セルフで薔薇のキューブを押し返せないかやってみようと思うんです」

アイーダ「そのことなんですけど、あたし、冬の宮殿でリリンちゃんにG-メタルを渡したままなんです。2枚必要だったら、あたしは取り返しのつかない失敗をしたことになる」

ベルリ「大丈夫(首に掛けたG-メタルを外す)。ぼくらはずっと何かに導かれて来た気がするんです。ひとりはジムカーオ大佐で、彼の敷いた道筋はとんでもないものだったけれど、同時に別の何かがぼくらを守っていてくれているはずなんです。そんな気がします」

ラライヤ「また誰かが来ますね」

アイーダ「あたしにも見えます。あれは法王さま!」

続いてやってきたのは、メガファウナの高速艇だった。着陸した船の中からゲル法王とリンゴが姿を現した。地面に降りたリンゴはそのままへたり込み、ゲル法王は地に足がつかないほど慌てていた。

リンゴ「もうダメだ。早く避難しなきゃ。すぐに薔薇のキューブがぶつかってくるよーー!」

ベルリやアイーダが口々にゲル法王に話しかけたが、法王は目をカッと見開いたまま口を真一文字に結んで神殿に向かう階段を駆け上がり、半ばまで達したところで突然止まって皆を振り返った。

ゲル法王「(怒鳴り声のような怖ろしい声で)生贄のふたりはモビルスーツへ! 他の者はこのわたくしについてきなさい。レイハントンの紋章は女の首に!」

普段の温厚なゲル法王の口調とはまったく違うために、4人の若者はのけぞるほど驚いた。しかし、歯をギリギリと噛みしめ宙の一点を見つめるゲル法王に威圧されて、ベルリはG-メタルをアイーダの首に下げると自分はG-セルフのコクピットに潜り込んだ。

隣ではラライヤが同じようにG-アルケインのコクピットに入って親指を立てて合図した。

ゲル法王「ついて来なさい!」

ゲル法王は神殿の中へと走り出した。

アイーダとリンゴは必死に法王の背中を追いかけた。アイーダは走りながら「生贄」のことを質問したがゲル法王はそれには応えてはくれなかった。

3人はステンドグラスの明かりが差し込む通路を抜けて、小さな礼拝堂へと辿り着いた。法王は法衣を翻して一気に参列者席を抜けると祭壇に上がってしゃがみこんだ。祭壇の床には扉があった。法王は扉を開いた。するとそこに下へ降りる階段が出現した。ゲル法王はためらいなく真っ暗な階段を下っていった。アイーダとリンゴもそれに続いた。

13段の階段はそのまま細い通路に繋がっていた。ゲル法王はなおもその細い通路を走り続け、アイーダとリンゴはその背中を追いかけた。息が切れかかったころ、行き止まりに突き当たって3人は脚を止めた。真っ暗だったためにリンゴはアイーダの背中にぶつかってしまった。

リンゴがパイロットスーツからペンライトを取り出して行き止まりになった壁を照らすと、そこにはレイハントンの紋章が刻まれていた。

2羽のつがいの鳥が、反対向きに並んだ形になっていて、上空から見下ろした神殿の天井と同じ形をしていた。

ゲル法王「さあここにそれを差し込んで」

アイーダはベルリから受け取ったG-メタルを紐から取り外して挿入口らしき場所に差し込んだ。するとレイハントンの紋章はうっすらと輝き、行き止まりになっていた扉が開いた。

眩い輝きが3人の視界を白く染めた。

ゲル法王は天に祈りを捧げてから光の中へ脚を踏み入れた。アイーダは法王が話した言葉の意味を気にして「生贄」のことを訊ねながら光の中へと脚を踏み入れた・・・。







アイーダ「なッ!」

輝く光の中へ脚を踏み入れたはずのアイーダは、自分が椅子に座っていることに驚愕して脚をジタバタと動かしてしまった。視線を上げると眼前に青い地球が見えている。メガ粒子砲の閃光がこちらに向かって飛んできている。撃ってきているのはムーンレイスの艦隊だった。

何が起こったのか理解するのに少し時間が掛かった。彼女は自分の掌を眺めて意識がエンフォーサーの中にあることを理解した。いま彼女はエンフォーサーの中に入ってシルヴァーシップの中央指令室の椅子に座って船を操作しているのだ。

そうとわかると目の前に広がる光景が何を意味しているのかすぐにわかった。彼女は声に出さず攻撃と航行の停止を指示した。すると彼女が乗り移ったシルヴァーシップは逆噴射をかけ、そのまま後ろの薔薇のキューブに激突した。

シルヴァーシップは一瞬で破壊されたが、薔薇のキューブには傷ひとつつかなかった。

アイーダはまた自分がシルヴァーシップの中央指令室にいるのを理解した。また別のエンフォーサーに乗り移ったのだ。そして自分の指示が乗っている船だけに届くわけではなく、別の船の別のエンフォーサーにも連動しているのだと感覚的に悟った。

彼女がシルヴァーシップ全艇に攻撃と航行の停止を命じた瞬間のことだった・・・。







ディアナ・ソレルは敵のシルヴァーシップが突然逆噴射をかけて薔薇のキューブにぶつかっていくさまを唖然と眺めた。何が起こったのかと考える間もなく、彼女は自分の身体の中をアイーダ・スルガンが通り過ぎて行ったことを悟った。

ディアナ「全軍薔薇のキューブの側面に回り込んでエンジンを狙え!」

ディアナ・ソレルの命令一下、ムーンレイスの艦隊は薔薇のキューブの前面から回避行動を取って側面に回り込んだ。すでに地球は眼前に迫っており、あと少し回避が遅れれば重力に引かれて手遅れになる寸前であった。

彼女たちを悩ましていたシルヴァーシップの艦隊は逆噴射したまま薔薇のキューブに激突して粉々に砕け散っていく。その様をモニターで眺めながら、ディアナ・ソレルは別のことを考えていた。

ディアナ(そうですか。あの方は地球でそんなお仕事をされてから亡くなりましたか)







冬の宮殿で宇宙世紀の歴史の研究に余念のなかったウィルミット・ゼナムとリリンは、目の前の空間にゲル法王の姿が映し出されて驚いた。

ウィルミットは袖でさめざめと涙を拭った。

ウィルミット「法王猊下! ああ、なんという姿に。おいたわしや・・・」

横にいたリリンは法王の姿を見上げながら大きく頷くと、首から下げていたアイーダのG-メタルを挿入口に差し込んだ。







ベルリ「えええーーー!!」

生贄とはどんなものだろうと身構えていたベルリとラライヤは、G-セルフとG-アルケインが突然薔薇のキューブの真ん前に出てしまってたことに驚いた。薔薇のキューブは30分もしないうちに大気圏に突入してキャピタル・タワーを直撃するところまで迫っていた。

何か武器がないか探したベルリは、自分がやるべきことは攻撃ではないと悟った。彼にはG-メタルはないのにG-セルフのすべての隠された機能を彼は理解していた。ベルリはいまG-セルフと一体となっており、それはラライヤも同じであった。

ベルリにはラライヤの姿が見え、ラライヤにはベルリの姿が見えた。しかし、それだけではない。薔薇のキューブにはノレドとルイン、そしてジムカーオがいるのがはっきりと見えた。

ジムカーオが放つオーラに、悪意はまったくなかった。その意味に気づいたのはルイン・リーであった。

薔薇のキューブの中央部分側面でYG-201と交戦していたルインとノレドは、敵のモビルスーツが自爆していくのを見ながら全身の感覚がモビルスーツと一体になるのを感じ取った。ルインにはジムカーオの姿がハッキリ見えた。そして彼が何を行おうとしていたのかもすべてわかったのだ。

ルイン「ビーナス・グロゥブでニュータイプ能力を発揮したとき、あなたはスコード教に改宗してエンフォーサーの仲間になるか、儀式の末に食べられるかと迫られ、クンタラの教えを捨てたのだ。それからあなたはずっと大きな虚無を抱えてひたすら大執行の時を待った。信仰を捨てて生き延びたことを悔やむでもなく、喜ぶでもなく!」

巨大な精神感応はルインとベルリ、そしてジムカーオへと拡がっていった。

ベルリ「神に会いたいがためにクンパ大佐の大罪を見逃し、父と母が殺されることも黙認した! ニュータイプの力というのはそういうことのために使うものなのか!」

ふたりの姿を交互に見比べながら、ジムカーオは嬉しそうに手を叩いた。彼の眼にも確かにルインとベルリが見えていた。

ジムカーオ「おお、これは・・・。てっきり一方的に大虐殺をして終わりかと思っていたよ。さすがにそれは気が引けたんだ。君たちには感謝しなきゃいけないな」

ルイン「そんなことのために!」

ベルリ「どれだけの人を殺したというんだ!」

ジムカーオ「教えてあげるが、現在までで人類の人口の4分の1が死んでいる。ラビアンローズが地上に落下すれば、100分の1にまで激減する。大執行とはね、こういうものなんだ。君たちは死を怖れているが、宇宙世紀の理屈ではこれくらいは平気なんだよ。なにか、レイハントンが仕掛けを施しているようだから、自分はそちらを調べさせてもらう。では失礼」

そう告げるなり、ジムカーオの気配が忽然と消えた。ニュータイプとしての能力に長けた彼は、精神感応をすることも切断することも自在にできるようだった。

ルイン「その力で人々を操っていたのか! クソッ!」

ラライヤ「時間がない!」

ベルリ「みんな避難してください! ぼくが・・・ガンダムがこれを押し返してみせます!」

ベルリは薔薇のキューブに突進した。真っ黒な四角い塊にG-セルフが取りついても、米粒より小さく感じられた。ラライヤはG-セルフがベルリ自身であって、またベルリとは別の誰かであることを知った。ベルリもまたいつのころからか彼を守護する力が憑依していたのだ。

ラライヤは感覚器官が一体化したG-アルケインで薔薇のキューブを押し返すなかに加わった。

ルインもまた避難はせずにその列に加わるため、彼はG-シルヴァーでノレドの元を飛び去っていった。

彼らの会話をノレドも聞いていた。しかし彼女には自分にも何かできるという確信がなかった。ベルリのところに行って、一緒に薔薇のキューブを押し返せばいいのか、避難すればいいのか、ベルリはどちらなら喜んでくれるだろうと彼女は考えてしまった。

ノレドはまたボロボロと涙をこぼしながら薔薇のキューブの中央部分で立ち竦んだ。彼女の耳に、ベルリの声が聞こえた。

ベルリ「ノレド! 手紙の約束を果たせ! 君が書いてくれた手紙の約束を今こそ果たしてくれ!」

ノレドはハッと顔を上げて正面を見た。そこには薔薇のキューブなど存在せず、ただ必死に巨大構造物を押し返そうとするベルリの姿だけがあった。

ノレド「手紙、受け取ってくれたの?」

ベルリ「サウスリングの机の中にノベルに守らせて置いてあっただろう! ずっとパイロットスーツの中に入れてある!」

ノレドは顔を真っ赤にしてベルリを見つめ、そして自分が彼に宛てた手紙が確かに懐に隠してあるのを知った。

ラライヤ「ノレドさん! G-ルシファーはそんなものじゃないでしょ!」

ノレドは自分がG-ルシファーと一体となっていることを改めて思い出し、じっとその設計思想を走査していった。

ノレド「そうか・・・、光の粒子、月光蝶だ!」

ノレドがそう叫んだ瞬間、パイロットシートのエンフォーサーが動き出した。彼女はもうバララ・ペオールの顔ではなかった。キュルキュルと高い動作音を立てたエンフォーサーが薔薇のキューブの全体構造を解析した。

ノレド「2時間掛かる?全部消滅させるのに2時間も?!」








ハリー「しぶとい!」

ハリー・オードはターンXとオルカともに∀ガンダムがキャピタル・タワーに向かうのを阻止するために戦っていた。しかし突然∀ガンダムは向きを変えて上昇し始めた。ハリーが視線を上げるとその先には巨大な薔薇のキューブがタワーめがけて落ちようとしているのが目に入った。

ハリー「オルカは退避! ターンXのパイロット! コクピットを開けろ。(ターンXのトリーティがハッチを開く。ハリーもスモーのハッチを開ける)ロープを渡すから機体を交換するぞ。スモーは地上に自動で降りるようにセットしておく。(トリーティはあまりの高さに恐怖している)怖がるな! ターンXに乗ったままならお前も死ぬぞ!」

ハリーは渡したロープを伝ってターンXに移動した。トリーティもヘルメットの中でしきりにスコードスコードと唱えながら必死の形相で渡ってみせた。

ハリー「あとは自動だ。お前は勇敢だったよ」

ターンXに搭乗したハリーは、オルカと自分のスモーが退避したのを見届けてから、全速で∀ガンダムを追いかけた。

彼には方向を変えた∀ガンダムに何者かの意思が宿ったように感じていた。おそらくは遠隔操作で動かされていたはずの∀ガンダムに、別の何かがやって来て操縦系を奪い去ったのだ。ハリーにはその人物に覚えがあった。だが確信がなかった。

いま、∀ガンダムとターンXの2機は、第二宇宙速度を超えて飛行していた。向かう先は薔薇のキューブであった。先行した∀ガンダムは円を描くように薔薇のキューブに取りつくと月光蝶を放って巨大な構造物を消滅させていった。

∀ガンダムとランデブーしたハリー・オードの眼下にあるザンクト・ポルトから眩いばかりの光が放たれ、レイハントンの紋章が宇宙空間に浮かび上がった。その光が∀ガンダムに触れたとき、ハリーはそこにディアナ・ソレルの姿を見た。

ハリー「ターンX! 月光蝶を放て!」








ザンクト・ポルトから閃光が放たれたのを、ケルベスはクラウンの中から眺めた。

彼が144番ナットを制圧したとき、そこにはザンクト・ポルトからの避難民が集結していた。すでに彼らに抵抗の意思はなく、制圧は簡単であったが、それより彼が頭に来たのは寝返った自分の教え子たちが避難民を放置していたことだった。

彼はクラウンの位置を確認してすぐさま運航表を切ると、一般人から先に地上へと降ろしていった。その手際の良さに驚いた彼の生徒たちはますます心酔した表情で彼の指示をテキパキとこなしていった。

ケルベスは1機を残してクラウンを地上に降ろしてしまうと、1台のレックスノーと数人のガード兵士を率いてザンクト・ポルトへと向かっていたのだ。

輝きを目にしたとき、彼はベルリとルインが共に薔薇のキューブを阻止するために力を合わせているのだと悟った。そして、輝きの源がゲル法王なのだとも理解した。

ケルベス「いいか、みんな。スコード教はゲル法王猊下の下で生まれ変わる。これからは真の世界宗教になっていくだろう」

だが彼がそう告げるまでもなく、その場にいた兵士たちすべてが彼と同じことを考えていた。








ジット団のメンバーと共にラトルパイソンに乗っていたマニィは、小さな子供を抱えたまま自分はもう地球には戻れなくなったのだと悟った。

ルインはベルリと共に戦っている。彼は罪人だ。彼と共に行くなら、もう地球には住めなくなったのだ。彼女はごめんねごめんねと子供に謝りながらザンクト・ポルトから発する光を眺めた。

彼女のそばで同じように子供を抱えていたクン・スーンは、しきりに頷いていた。

スーン「そうか、そういうことだったのか」

コバシ「レコンギスタなんてしなくても、レイハントン家が何もかも用意していてくれたんだね。あたしたち、法王庁の連中に踊らされすぎたみたい」

スーン「無理なんかしなくても、地球に来られたんだ・・・。レイハントン家が戦ってきたのは、軍産複合体とニュータイプ研究所。彼らの地球再支配がつまりレコンギスタだったと・・・」

もっと早くわかっていればキア隊長は死なずに済んだ、その言葉を飲み込んだクン・スーンの気持ちはコバシにはよくわかっていた。それはニュータイプの共感現象がなくてもわかったのである。








部屋に入るなり気絶して何の役にも立たなかったリンゴがすっくと立ち上った。彼の身体はジムカーオに乗っ取られていた。

リンゴの眼には神々しい光に包まれたゲル法王の姿が映っていた。そのまま彼はゲル法王の法衣を引き掴んで倒そうとした。ところがその手を掴んだアイーダが手首を捻って投げ飛ばしてしまった。

アイーダは法王を守るように立ちはだかった。

アイーダ「これくらいの心得は父に仕込まれています!」

リンゴ「まいったな。男の方が強いと思ってこちらを選んだのにとんだ見込み違いだった」

その口調はジムカーオそのままであった。アイーダは両手を前に出して構えたままリンゴを殴る隙を伺った。リンゴに憑依したジムカーオは、これはダメだとすぐに匙を投げてしまった。

リンゴ「ではもうひとりのレイハントンに忠告しておこう。このじいさんを中心にスコード教を真の世界宗教にしようと考えているようだが、ニュータイプが起こした奇蹟を教義の中心に置く限り、神に迫ろうとする科学者は必ず現れる。そして神のごとく人々を操るニュータイプもまた現れる。人間の残留思念の研究は、人体改造を強いて人の感情を破壊する。地球を救ったこの宗教こそが再び人類に過去の宇宙世紀と同じ轍を踏ませるだろう。だからこそ人間は真のニュータイプに進化するしかなかったのに、サイコミュなどというこざかしい方法で大執行を阻むとはレイハントンは愚かしい王であった。だが、負けは認めよう。君らが生き残ることがあるなら、再び相まみえることもあろう」

そう告げるとリンゴは再び失神して床に伸びてしまった。

アイーダ「わたくしとベルリは必ず正しい道を見つけてみせます!」

アイーダは虚空に向かってそう叫んだ。








ザンクト・ポルトから発した強烈な光が薔薇のキューブに照射された。眩い輝きがベルリ、ラライヤ、ルインの機体を神々しく照らし出した。

3機のガンダムはリミッターを遥かにオーバーした出力で薔薇のキューブを押し続けていた。後方にはムーンレイスの大艦隊がパルスエンジンのノズルを攻撃し続けている。しかし大気圏突入が近く、ディアナ・ソレルは艦隊を引き離す指示を出さなくてはならなかった。

ノレドのG-ルシファー、∀ガンダム、ターンXの3機はすべてのエネルギーを月光蝶の放出に充てていた。3機が放つ光の粒子は薔薇のキューブの巨大な質量を削っていっていた。

ノレドは生産設備のあるキューブ後方をあらかた消滅させてしまっていた。連結部は素材が硬く月光蝶すら効かない。張り付いたナノマシンが機能を停止して砂のように舞うばかりであった。

∀ガンダムとターンXは先端部分の巨大なキューブを半分以上失わせることに成功していた。この2機の参戦は意外だったらしく、ディアナ・ソレルはソレイユのブリッジの窓に顔を当て、∀ガンダムの操縦者を心に捉えようとした。

しかし残された時間は少なくなっていた。タワーまでの距離はわずか。まだ中心部分の球体が残っている。球体部分の下半分はパルスエンジンの本体だった。これを爆発させるとタワーに被害が出るのは確実だった。ディアナは名残惜しみつつも全軍に退避命令と大気圏突入準備を急がせた。白いソレイユと同型で黒い船体のオルカは薔薇のキューブを離れていった。

ベルリ「(必死の形相で)ノレドとラライヤは退避してくれ! あとはぼくが」

ルイン「ノレドとラライヤは下がれ! もう十分だ!」

飛行形態でエネルギーを消費していたG-アルケインはフォトン・バッテリーが尽きかけ、限界が来ていた。ノレドのG-ルシファーも無断出撃でバッテリーを交換しておらずエネルギーの残存表示が赤く点滅している。それでも薔薇のキューブから離れようとしないふたりに、外部からの介入があった。

G-アルケインとG-ルシファーはコントロールを失ったままフワリと浮くように薔薇のキューブから離れていった。ラライヤとノレドは必死にコントロールを取り戻そうともがいたが、2機は完全に機能を停止して地球の重力に引かれていった。

ベルリ「ノレド! ラライヤ!」

ドニエル「ルアン、オリバー、ノレドとラライヤを救出しろ。機体はそのまま大気圏に落として構わん。ふたりは必ず助けるんだ! ステア、角度調整!」

ステア「イエッサー」

重なり合うように落ちていく2機から脱出ポッドが飛び出した。ルアンとオリバーはグリモアで艦を離れてふたつの丸い球体をキャッチしてモビルスーツデッキへと戻った。そしてメガファウナも薔薇のキューブを離れて大気圏突入準備に移行した。

ルイン「まだかなりの質量がある。とにかく最後までこいつが地球に落ちないように頑張るだけだ」

ベルリ「絶対に絶対に落とさせやしません!」

G-セルフとG-シルヴァーは角度を変えるためにすべてのエネルギーを放出した。レイハントン家が用意した2機の最終系ガンダムの後方には虹色の輪が何層にも重なって伸び縮みを繰り返した。かろうじてタワーへの激突は避けられるほど角度が変わったとき、∀ガンダムは白い表面が溶けるように消えていき、巨大なパルスエンジンを繭のようなもので覆い始めた。

するとそれに呼応するかのようにターンXの表面を覆うナノマシンも形を崩し、そのすべてを繭の成形に使い果たして内部フレームだけになってしまった。

ターンXの頭部のコクピットが外れた。

ハリー「ディアナさま!」

∀ガンダムの内部フレームに残ったディアナ・ソレルの残留思念は、振り返ることなく少しだけ横顔を微笑ませると、その思念で両機の縮退炉を爆発させた。

縮退炉の爆発はパルスエンジンの爆発を誘発させた。薔薇のキューブはこれによってクルクルと回りながら重力圏を脱し、地球を遥かに逸れて宇宙の彼方へと消え去っていった。

爆発が起きたとき、2機のガンダムとターンXの頭部は地上へと吹き飛ばされた。ターンXの頭部はギリギリのところでソレイユが回収したものの、ガンダムは間に合わず大気圏へ突入してしまった。

マニィを乗せたラトルパイソンが、ガンダムの落下とすれ違った。そのとき、クン・スーンの赤ん坊とマニィの赤ん坊が同時にキャッと声を出して身体をのけぞらせた。するとガンダムを白く発光する膜のようなものが包んだ。

マニィ「ルイン!」

スーン「誰も死ぬな!」

2機のガンダムは手足が爆発を起こしてもがれてしまった。真っ赤になった頭部も吹き飛んだ。しかし、コクピットの部分だけは白く発光する膜に覆われて爆発を免れた。

2機は徐々に冷却されていった。

ドニエル「ステア! 何とかあれを!」

ステア「任せて!」

メガファウナは胴体部分だけ残ったガンダムの下に入り込み、速度を合わせてモビルスーツデッキに入れようと微調整を繰り返した。

ガンダムの胴体は無事に回収された。巨大なマグネットに張り付いたガンダムの胴体から、ベルリとルインが同時にハッチを開けてお互いに視線を合わせた。

ベルリ「(にっこり笑いながら)マニィに子供が生まれてたんですね。おめでとうございます」

ルイン「(俯きがちに)ああ、ありがとう、ベルリ」

焼けただれたガンダムの消火活動によってモビルスーツデッキはもうもうと水蒸気に包まれて、ベルリとルインの姿を靄の向こうに消していった。




       -ベルリの手紙-

母さんへ

母さんが地球に戻ってたった2日でクラウンが定時運航を開始したと聞いて驚いています。

リリンちゃんを引き取ってくれたと知り、感謝にたえません。ぼくはもう母さんの傍にはいられなくなったけど、リリンちゃんがいれば母さんも退屈せずに済みそうですね。ぼくはあの子にしてはいけないことをしてしまったので、母さんの心遣いにただただ頭を下げるしかありません。

ルイン先輩とマニィ、それにクリムさんは、それぞれクンタラ戦士の若者とゴンドワンの若者と共にクレッセント・シップとフルムーン・シップに搭乗してビーナス・グロゥブへ旅立っていきました。本当はぼくが全権大使にならなくてはいけないのですが、トワサンガの立て直しに時間を取られ、ふたりに甘えた格好になりました。ふたりはビーナス・グロゥブでラ・ハイデン総裁の裁きを受けることになります。しかし、死刑も懲役刑もないビーナス・グロゥブの方がふたりの罪は軽く済みます。それにあちらはやることがたくさんありすぎて人手が足らないようなので、おそらくふたりの能力は必ず役に立つでしょう。

アメリアのアイーダ姉さんとは頻繁に連絡を取っています。地球のすべての若者を一定期間宇宙で労働させることにより勤労意識を植え付けるというぼくの方針は、一部の人から徴兵制のようだと批判を受けていて、姉さんには苦労を掛けています。ズッキーニ大統領に毎日のように攻められて頭に来たのか、次の大統領選挙に出馬すると息巻いています。

しかし、アメリアに移住を果たしたディアナ閣下が、宇宙に住み、義務意識を育てることこそ教育の根幹にすべきだと力説されて、徐々に支援者を増やしているようです。彼女のカリスマ性は素晴らしいものがあります。将来は姉さんのライバルになるかもしれません。

トワサンガはハッパさんの協力もあって少しずつ機能を回復しつつあります。王政から民政への移行について母さんからいただいたアドバイスはとても役に立っています。王政を放棄する場合は、その権力構造を根本的に解体してからでないと、民主主義から独裁者が生まれるというのはその通りです。正統性の根幹を変えるのは大変ですが、トワサンガは地球からの学生を受け入れ教育する場所に生まれ変わるので、学生に政治の一翼を担ってもらう仕組みができないか検討中です。サウスリングの若者たちが様々な面で協力してくれるので助かっています。母さんも仕事をケルベス運航長官補佐に引き継いだら是非1度トワサンガの講師を引き受けてもらいたいものです。

ラライヤはすでに優れた教官で、兵器に利用されないモビルスーツの開発テストと宇宙労働規約の策定を同時にやってもらっています。きっと学生に大人気の先生になるはずです。

さて本題ですが・・・






ドニエル「(メガファウナの砲台に腰かけるベルリとノレドを眺めながら)結局あのふたりは結婚するのか?」

ギセラ「(ドニエルと並んでふたりの背中を眺めつつ)仲がいいのか悪いのかわからないんですよね」

副艦長「(ギセラの隣で)ビーナス・グロゥブからフォトン・バッテリーが配給されるようになったら自分らもメガファウナを捨ててフルムーン・シップ勤務になりますからねぇ。トワサンガと地球を往復する仕事に就かなきゃいけないから、結婚式を挙げるなら早くしてもらいたいんだなぁ」

ドニエル「ベルリの奴、ヤケにノレドにつっけんどんにすると思っていたら、ラブレターもらって照れてただけとか、何考えてんだかな」

副艦長「坊やなんでしょ」

ギセラ「艦長もステアがビーナス・グロゥブに行っちゃって寂しいんでしょ?」

ドニエル「そんなことはないぞ。そんなことはない」

2度と使われないはずの砲台に腰かけ、地球を眺めて話し込むベルリとノレドは、ときに真剣に、ときに笑い合い、いつまでもいつまでもそこに座り続けていた。

メガファウナの中の3人は、待っていても埒が明かないと、解散を決めて持ち場に戻っていった。




-完-




「ガンダム レコンギスタの囹圄」はこれで完結です。最後までお付き合いくださりありがとうございました。

富野由悠季監督の「ガンダム Gのレコンギスタ」劇場版が完成するまで、軽い気分で読んでいただければ幸いです。


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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:72(Gレコ2次創作 第26話・最終回・前半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第26話「千年の夢」最終回・前半



(OP)


ベルリたちが伝えた降伏の意思は受け入れられなかった。

3人の若者は薔薇のキューブの中でにこやかに談笑する人々に囲まれていた。ジムカーオ大佐は盛んに冗談を口にしてエンフォーサーと呼ばれる人々を笑わせた。彼ら執行者は、自分たちが行おうとしているキャピタル・タワーの破壊が成功しようと失敗しようと関係ないのだった。

彼らはただ1000年前に定められた契約通り、アースノイドが未来を生きる資格を有した人間に進化したのかどうか見極めたいだけなのだ。彼らの余裕の裏には、アースノイドに対する侮蔑の感情が確かにある。それを覆すには、正しい方法で大執行を止めてみせるほかない。

その手段とは、人がニュータイプに進化して人と人との断絶を埋めることであった。感覚が共鳴し合い、差異の源を察知して、攻撃を踏みとどまる。追い詰められ命尽きようとしている人間に声を届ける、人がそのように進化することが大執行を止める手立てなのだ。

ベルリ、ノレド、ラライヤの3人はしばらくして席を立ち、それぞれのモビルスーツに乗って薔薇のキューブを脱出した。誰にも止められなかったし、モビルスーツにも細工はされず、それどころか誰も3人に関心を示さなかった。3人は無言のまま戦闘宙域を脱した。

ムーンレイスの激しい抵抗は降伏を通告するために中断されていた。薔薇のキューブはまっすぐに地球へ向かっており、数時間でザンクト・ポルトに達しようとしていた。

ノレド「ラライヤならG-ルシファーの光の粒子が出せるんじゃ・・・」

ラライヤ「敵は無防備ですから、3人で攻撃すればあるいは・・・」

ベルリ「(首を振って)多分ダメだ。攻撃した途端、シルヴァーシップがこちらを攻撃してくる」

ベルリは自分の胸に手を当ててスコードの名を唱えた。手のひらにG-メタルの感触が伝わった。初代レイハントンが子孫に託した遺産。それはG-セルフとG-メタルだ。

ジムカーオはG-シルヴァーを製作し、G-メタルを奪おうとした。それが解除したものは、ムーンレイス、冬の宮殿の奇蹟の映像、シラノ-5の重力発生装置だ。まだ何かあるはずだった。それは一体どこにあるのか。地球の人々を救う手段がまだ何か・・・。あるとすればそれはキャピタル・タワー、ザンクト・ポルトではないか・・・。

ベルリ「スコード教の聖地ザンクト・ポルト・・・。あそこに何かあるのかもしれない」

ノレド「ベルリがそう感じたならそれに従って!」

ベルリ「ノレドも一緒に・・・」

ノレド「いいや、あたしは何かやらなきゃいけないことがあるかもしれない。ベルリの傍にいて、ベルリがやることを横で見てるだけがあたしじゃないはず。ベルリはラライヤと・・・」

3人の帰還はあまりに早かった。その理由を聞いたブリッジクルーは一様に動揺を隠せなかった。

ドニエル「人類が進化したことを示さなきゃキャピタル・タワーを破壊して人類への支援を完全に打ち切るってのか?」

ディアナは難しい顔で考え込んでいた。

ディアナ「たしかに・・・、外宇宙に出てまで戦争を続けていたわたくしたちの祖先は、ほとほと戦争が嫌になり新しい人類の形を模索していました。それに対して地球文明再興派の人たちはいったん原始時代へと戻った末の発展でしたので、戦争の恐ろしさを忘却してしまっていたところがあった」

副艦長「カシーバ・ミコシを破壊して、タワーまで壊され、挙句にフォトン・バッテリーが来なければ確かに人類は原始時代に戻る。そのあとに悠々とスペースノイドはレコンギスタできるわけだ。しかし、そうならないための猶予が1000年間も設けられていた。1000年間彼らは人類を支援しながら、我々の精神的進化を待ち続けてきた。これはもう・・・」

ドニエル「とりあえずベルリとラライヤはザンクト・ポルトにやろう。その代わりノレドはパイロットとして出動してもらう。G-セルフとG-アルケインのフォトン・バッテリー、空気の球、水の球の交換を急げ。食料も少し持っていけ。もう地球までそれほど距離はないが、それだけ時間がないってことでもある。アルケインに掴まっていけば少しは早く着くだろう」

簡単な整備とエネルギーパックの交換に要した30分の時間で、ベルリとラライヤは短い仮眠をとった。少しだけ疲れた顔で姿を現したふたりにハッパが近寄ってきた。

ハッパ「いいか。オレたちはニュータイプじゃないけど、気持ちはお前たちと一緒だからな。みんながついてるって忘れるな」

ベルリ「ありがとうございます、ハッパさん」

そう礼を言ったベルリはコクピットのハッチを閉じてモビルスーツデッキから発進していった。後に続いたラライヤはすぐさま飛行形態に変形して、G-セルフと共に飛び立っていった。ふたりが出て行ったのを物陰に隠れて見ていたノレドは、ハッパの目を盗んでG-ルシファーに乗り込んだ。

ノレド「シルヴァーシップは1台のエンフォーサーが全部コントロールしている。だったらなかに乗り込めばまたあいつを奪って薔薇のキューブを倒せるかもしれない」

G-ルシファーが後を追うように出撃したのを見たハッパは必死にノレドの名を叫んだが、ノレドは通信回線を切って一直線にシルヴァーシップめがけて飛んでいった。







ハリー・オードから提供されたキエル・ハイム著「クンタラの証言 今来と古来」を一読したアイーダは、地球に降ろされたクンタラたちの証言からある事実を発見した。それはニュータイプの能力を得るために彼らとその子孫を計画的に掛け合わせて家畜にしていた種族が存在したという事実だった。

外宇宙からの帰還者のグループの中に、そのような習慣を持つグループが2派あった。そのうちひとつは最も遅く帰還してきた今来で、元来彼らは軍産複合体として中立的な立場を保ちながら戦争にまつわる物資の提供や修繕を行い利益を上げていた集団であった。彼らはある取り決めののちに、ビーナス・グロゥブの集団に加わり、食人習慣を捨てた。

もうひとつのグループは、これも遅く戻ってきた今来で、宇宙世紀では珍しいアンドロイド技術を研究し、なおかつ人間の残留思念を捕捉するニュータイプの研究機関であったという。彼らはニュータイプをモルモットとして扱い、研究材料としたのちに食肉として処理していたという。

どちらも元を辿れば戦争が生み出した集団であった。軍産複合体とニュータイプ研究所、このふたつの集団が食人習慣を最後まで改めなかったグループであった。ニュータイプ研究所を母体としたグループも、ある取り決めののちにトワサンガのグループに吸収されたという。

ある取り決めとは、地球に残った人類が再び宇宙世紀の失敗を繰り返さない進化した人類になり損ねた場合、彼らを抹殺してスペースノイドによる地球支配を確立するという内容であったという。地球に降ろされたクンタラのうち一部の人間がそれを知って伝えており、それを500年前に収集した人物がアメリアにいたのだという。アイーダには、キエル・ハイムという名前に覚えがあった。

アイーダ「これは本物のディアナ・ソレルに違いない。月の女王ディアナ・ソレルに聞いた話は本当だったんだ。彼女たちは入れ替わり、地球育ちのキエル・ハイムは宇宙でレイハントンと戦い、月で育ったディアナ・ソレルは宇宙から降ろされたクンタラたちの証言を拾い集めて後世に残した。それぞれがぞれぞれの立場で最後まで戦い続けたんだ。なんという勇気ある女性たちだろう・・・」

アメリア軍総監アイーダ・スルガンは、破壊を免れたアメリア軍艦隊を再編成して全軍に出撃命令を出し、ザンクト・ポルトを目指していた。大気圏脱出のための改造を施された艦艇は12隻。すべてラトルパイソン級であった。眼下に∀ガンダムとターンXが激しく戦っているのが確認された。

船団に加わっていたオルカから通信が入った。

ハリー「では、我々はあの2機を」

アイーダは黙って頷いた。ハリー・オード率いるオルカ2隻は∀ガンダムとターンXを殲滅するために船団を離れた。アイーダはラトルパイソンの全軍に指示を出した。

アイーダ「キャピタル・タワーが近づいたらバルクホルンとシマダ艦長は地上に降りてケルベス中尉の指揮下に入り、地上からタワー奪還の援護をしてください。残りの者はザンクト・ポルトに侵入して制圧します。白兵戦の準備を怠りなく」

アイーダは10隻の船を率いてまっすぐにザンクト・ポルトを目指した。







しんと静まり返った屋敷の中には誰もいなかった。

子供と一緒に2階で就寝していたマニィは、生まれたばかりの幼い子供を抱えて召使の名を呼んだが返事はなかった。不安になった彼女は、カーテンを払って窓の外を見た。そこにはいるはずの法王庁のモビルスーツの姿はなかった。

ケルベスのレジスタンス軍と交戦するために出撃したのか、それにしては何の物音もしなかったとあるはずのない夜中の記憶を辿っていたとき、突然レックスノーが出現して屋敷を取り囲んだ。続いて乱暴に玄関が開けられ、軍靴の音が誰もいない屋敷に鳴り響いた。

泣き出してしまった娘をギュッと抱きしめ、マニィは部屋の隅へと逃げて身をこわばらせた。壁に掛けられた短剣を手にしたマニィは、唇を噛んで自害の覚悟を決めた。辱めを受けるくらいなら娘と共に死ぬ覚悟だった。大声で泣き叫ぶ娘の声が、侵入者たちをマニィの元へと招き寄せた。

姿を現したのは予想通りケルベスとレジスタンスのメンバーであった。ケルベスはマニィの姿を見つけると右手を腰に置き、静かに話し始めた。

ケルベス「法王庁の人間は昨晩のうちに逃げた。これはオレにお前を殺させる罠だ。だがオレはマニィ・アンバサダを殺すつもりなど毛頭ない。それに、ルインはベルリを殺さないし、ベルリもルインを殺さない。ゴンドワンのクンタラ国建国戦線が全滅した話はまだ聞いていないだろう? 彼らはゴンドワン軍が全員残らず殺したそうだ。君らは最後のひとりになるまで戦うつもりなのか?」

マニィ「そうよ!」

レジスタンスの人間を掻き分けて、ひとりの小柄な女性が前に進み出た。クン・スーンだった。彼女はキア・ムベッキ・ジュニアを胸の前に抱えていた。

スーン「あんたも母ちゃんなんだろ? 人を騙したり、人を殺して何かを手に入れても、騙したり殺したりし合う世の中が残るだけじゃないか。子供にそんなものだけを残すつもりなのか?」

ケルベス「マニィ、この戦いは人が人を殺して誰かが勝ち残る戦いじゃない。オレはルインを助けなきゃいけない。手を貸してくれ」

スーン「あたしたちは殺し合いをするためにレコンギスタしてきたわけじゃないんだ。早く揉め事を終わらせないと、この子たちの未来がなくなっちまう」

コバシ「そうよ、ゴンドワンだのクンタラだのキャピタルだのといってる場合じゃないみたいよ」

クリムトン・テリトリィの空に、2隻のラトルパイソンが降りてきた。法王庁のモビルスーツはすでに逃げたり降伏している。彼らはジムカーオとの通信が途絶えてからやることなすこと失敗続きで、レジスタンスにあっという間に制圧されていたのだ。

ジムカーオの最後の指示こそが、マニィの邸宅を空にすることだった。ケルベスはその誘いには乗らず、マニィを傷つけてルインを追い込むことは阻止した。彼女を恨むキャピタル・テリトリィの旧住民は多かった。だからこそケルベスは真っ先に自分で駆けつけたのだった。

ケルベス「ジット団とマニィは船へ。ガードと候補生は市内でいざこざが起こらないように監視。タワーに爆弾が仕掛けられていないか法王庁の捕虜から聞き出してくれ。∀ガンダムとターンXは絶対にタワーに近づけるな。オレは高高度ナットの制圧に向かう」







何もない宇宙空間で、ルインはひたすら艦隊が近づいてくるのを待っていた。

彼は破壊されたカシーバ・ミコシから食料を調達してG-シルヴァーの中で食べていた。ベルリとの激しい戦闘でエネルギーと水がかなり消費されてしまって心もとなかった。彼は12時間以上をひたすら狭いコクピットの中でジッと動かずに堪えた。

そしてようやくムーンレイスと薔薇のキューブというものが宙域に近づいてきた。

カシーバ・ミコシはトワサンガまで大回りなルートを取るため、戦闘宙域まではかなりの距離があった。彼はひときわ巨大な薔薇のキューブめがけてG-シルヴァーを発進させた。

彼には確かめたいことがあった。それはジムカーオ大佐という人物が本当に自分やクンタラを騙していたのか、それとも何か別の理由が彼にあったのか見極めることであった。

もしカシーバ・ミコシを破壊したのがジムカーオの仕業なあらば、ルインは最初から騙されていたことになり、そうであるならゴンドワンやキャピタル・テリトリィに残してきたクンタラの仲間たちや家族が無事であるはずがなかった。彼はマニィと子供と3人で撮った写真に眼をやり、すべてを確かめるまでは死ねないと心に誓った。

薔薇のキューブとムーンレイスとの戦いは熾烈を極めていた。膨大な戦力で押し寄せる薔薇のキューブをムーンレイス艦隊が押し留めている形になっていた。だがムーンレイス側は押されており、薔薇のキューブの突進を止めることは不可能に思われた。

正面切って戦い合う宙域から外れた位置から、ルインは薔薇のキューブに近づいた。巨大なパルスエンジンが発する光が薔薇のキューブに大きな影を作り出していた。近づくとルインのG-シルヴァーはあまりにちっぽけな存在に過ぎなかった。

ルイン「オレは相手にもしてないってことか」

強く唇を噛み、ビームライフルを構えたときだった。ルインは何かに打たれたような感覚に襲われた。一瞬だけだが、空間がすべて自分のものになったような鋭敏な感覚であった。

ルイン「(周囲を見回し)バララか? どこにいる?」

ルインが不思議な感覚に見舞われた同じ時間、メガファウナで治療を受けていたバララ・ペオールが目を覚ました。ベッドから飛び起きるように上体を起こした彼女は、目の前の壁の1点を見つめて何かを訴えかけるように唇を動かした。飲まされた薬の影響で声が出ないと分かった彼女は、ヨロヨロと起き上がって看護師のキラン・キムを驚かせた。

キラン「あなたはまだ寝てなきゃダメでしょ」

バララは寝かしつけようとするキランの手を振りほどいて、ベッドを抜け出ようとしてよろめいた。キランが大きな声を出し、医師のメディー・ススンが駆けつけてきた。投与された薬の量を考えれば目を覚ませる状況ではない。ふたりはバララの小さな身体を押さえつけてベッドに戻した。

バララはしばらくもがいていたがやがて静かになり、そっと目を閉じた。

ルイン「なんだって? 後方のシルヴァーシップ? そこに何があるんだ? 行けばわかるというのか? お前はそこにいるのか?」

薔薇のキューブの上方に位置していたルインは、ムーンレイスと激しく交戦するシルヴァーシップの1隻に、モビルスーツが入っていくのをモニターで確認した。遠くてよくは見えなかったが、その機体はYG-201が出撃する隙にモビルスーツデッキに素早く潜り込んだのだ。

ルイン「あれなのか、バララ」







両軍のビームが飛び交う激しい戦闘をかいくぐり、ノレドのG-ルシファーは1隻の船が新たにYG-201を出撃させるのを見逃さなかった。

ノレド「あたしだってできる!」

彼女は破れかぶれで突っ込んでいき、モビルスーツデッキが閉じる前に素早くなかへと潜り込んだ。

彼女はエンフォーサーさえいればまだ自分も戦えると信じ、奪いに来たのだった。

すでにすべてのモビルスーツを出撃させてしまったようで、デッキは空になっていた。彼女はハッチを開いて、ブリッジに相当する場所がどこにあるのか探そうとした。

壁の記号が何を表しているのか見上げたとき、大きな衝撃が船を襲い、彼女はバランスを失って宙をクルクルと回った。破壊された破片が彼女の近くを掠めたために、驚いた彼女は思わず身をすくませてしばらく手すりの傍で身をうずくまらせた。

爆発のあったハッチの近くで見覚えのあるモビルスーツがビームライフルの明かりに照らされて断続的に暗闇に浮かび上がった。ノレドはそれがベルリのG-セルフに見えたが、実際は銀色の同型機G-シルヴァーだった。G-シルヴァーはハッチの近くに立って外から押し寄せるモビルスーツと交戦した。

やがてビームライフルを撃ち尽くしたG-シルヴァーは、それを投げ捨てるとデッキの奥へと進みハッチを開けた。コクピットから漏れる明かりがルインとノレド双方を相手に気づかせた。

ルイン「(G-ルシファーとノレドを交互に見比べて)君は・・・マニィの・・・」

ノレド「(勢い込んで)ガード養成学校のルイン先輩でしょ? あたしはセントフラワー学院にいたノレドです。マニィの友達で、同じクンタラです!」

ルイン「(訝しげな顔で)・・・、いや、話を聞かせてもらっていいか」

ノエド「それよりこの船のブリッジを探すのを手伝ってください。そこにいるエンフォーサーをG-ルシファーに乗せることができたら、ジムカーオにだって勝てるかもしれない」

ルイン「またエンフォーサーか・・・、よかろう。中央管制室、もしくは司令室だな」

周囲を見回したルインはこの船が無人艦であるとすぐに見抜いた。ルインとノレドは一緒になって船の中央部分を目指した。

ルイン「人工的にセントラルコントロールする場合、管制室は船の中央に配置される。この棒みたいな船はきっと船体の表面が何らかのレーダーかカメラのようになって情報を収集しているのだと思う。それより君は・・・」

ノレド「ルイン先輩がマスクだってことは知ってます。クンタラの地位向上のために戦っていたこともマニィに聞きました。でもいま起こっていることは、もっと上位の意思とすべての地球人との戦いになっていて、これって平等じゃないんですか?」

ルイン「平等?」

ノレド「一緒に戦うのは平等でしょ?」

目的の部屋を探し当てたルインがハッチを開くと、計器の明かりだけがついた暗い部屋の中央に、人型の何かが座っているのが目に入った。思わず銃を構えたルインの手をノレドは制して下に降ろすように手のひらに力を込めた。ルインは彼女に従って銃を下げたがいつでも構えられるように引き金から指は離さなかった。

ノレド「見つけた! エンフォーサー、大人しくこっちへ来い!」

ノレドはキャプテンシートに座る銀色のアンドロイドに飛び掛かった。アンドロイドが激しく暴れたのでノレドは下敷きになって抑え込まれてしまった。初めて見る機械人形に驚いたルインだったがやがてノレドの苦戦に気がついて自分も銀色の女性型の人形に飛び掛かった。

ルイン「なんだこれは、く・・・、重い!」

ルインは渾身の力を込めてエンフォーサーをノレドから引き剥がした。エンフォーサーはドスッと重い音を立てて床に倒れ込み、次いでキュルキュルと何かおかしな動作音を立てた。ルインはノレドを庇いながら銃を構えてエンフォーサーがゆっくりと上体を起こすのを見つめた。エンフォーサーの銀色の顔の表面が徐々に誰かの顔に変化していくのを彼は恐怖の表情で眺めた。

ルイン「バララ、バララなのか。これは何のまやかしだ?」

ノレド「先輩! これがエンフォーサーなんです。詳しい説明は後でするから手を貸してください」

ノレドはエンフォーサーを立たせようと両脚を踏ん張って力を込めた。それを無言のまま見つめていたルインは、逡巡した後に思い直して銃口をノレドに向けた。

ルイン「説明を先にしてもらおう」

疑り深いルインに腹を立てたノレドは、パイロットスーツ姿のままガニ股で踏ん張った脚で床をガンガンと踏み鳴らして抗議した。

ノレド「人類がみんな死んじゃうかもしれないってときにあんたは何をしてるんだ! 早く起こすのを手伝え!」

ノレドの剣幕に気圧されたルインは、銃をしまって片手をノレドに向けるとこういった。

ルイン「わかった。手伝おう。だが女の子がそんなガニ股で怒鳴っちゃいけない。重力装置を解除すれば簡単に運べるから待ってくれ」

ルインは部屋の中の計器を調べ、やがてひとつのレバーを発見してそれを降ろした。すると重力装置が解除されてノレドとエンフォーサーはともに浮き上がった。

ふたりは顔の部分だけバララ・ペオールに変化したエンフォーサーをG-ルシファーまで運び、エンフォーサーをパイロット席に座らせた。

ノレド「(ルインに向き直り)ベルリとラライヤがザンクト・ポルトに向かっています。あのふたりはトワサンガの生まれで、きっと何か運命的な繋がりがあるんです。あのふたりはG-セルフとG-アルケインできっと破滅を阻止してくれる。あたしたちはクンタラって繋がりしかないけど、G-シルヴァーとG-ルシファーがあって、エンフォーサーも手に入った。これで薔薇のキューブの中に潜入できれば光の粒子で中にあるものを全部破壊できる。あたしたちでも地球が救えるかもしれない」

ルイン「光の粒子・・・」

彼にはノレドの言う光の粒子がなんであるかよくわかった。彼は∀ガンダムが発する光の粒子でゴンドワンを廃墟にしたことがある。もしそれと同じことができるならば・・・。

ルイン「わかった。君に協力しよう。もし生き残ることができれば、オレだって真実を知ることくらいはできるだろう」







ベルリとラライヤがザンクト・ポルトにやってきたとき、その直下で巨大な光球が何度も発生しては消えるさまがモニターに映し出された。上空から見るとまさにそれはキャピタル・タワーの直下で起こっている出来事であった。何者かがタワーを破壊しようと攻撃を仕掛けているのだ。

その手前にはラトルパイソンの艦隊が上がってきていた。アメリア軍もあと数分でザンクト・ポルトに到達するところまで来ている。

宇宙に眼を向ければ、薔薇のキューブの艦隊はあと1時間でザンクト・ポルトを射程圏に捉えるところまで迫っていた。望遠モニターを最大にすれば、ムーンレイスと薔薇のキューブの激しい戦いの様子を捉えることができる距離であった。

ベルリ「もう時間がない。このまま突っ込むぞ!」

ラライヤ「任せてください!」

G-セルフとG-アルケインはビームライフルで固く閉じられた港のハッチを撃ち抜いた。ベルリはそこに人がいないことを祈るような気持ちでいた。ザンクト・ポルトの港には誰もいなかった。2機はさらに内部へと入り込んだ。通路を伝い、居住区の中へと入っていく。

青空が映し出された天井パネルすれすれを飛び、ベルリとラライヤはレイハントン家の紋章の在りかを探した。すると2羽の鳥を形どった建物が確認できた。降りてみるとそこはスコード教の神殿であった。かつて別の場所の教会でノウトゥ・ドレットと会談を持ったことがあったが、そこから離れた場所にあるスコード教の聖地とされている神殿であった。

ベルリとラライヤは機体を降りて神殿の内部へと侵入した。そこには話を聞き出せる人は誰もいなかった。神父も牧師も法王庁の職員も誰もいない。ステンドグラスの光が差し込む複雑な作りの神殿のどこに初代レイハントンが遺した鍵穴があるのかわからなかった。

走り回るうちに、ふたりの顔には焦りの色が滲んできた。

ベルリ「もう時間がない。薔薇のキューブがやって来てしまう!」

ベルリは胸のG-メタルをギュッと握りしめた。ラライヤは自分の中に入ってずっと見守ってくれている少女に願いを込めた。しかし、ふたりを教導してくれる者は現れなかった。

ベルリとラライヤは、ステンドグラスの色とりどりの明かりに照らされながら、拝殿を探した。







ラトルパイソンは最大望遠で薔薇のキューブを捉えた。

兵士A「うわああ、落ちてくる。地球に落ちてくる!」

アイーダ「落ちやしません! 全員落ち着いて。目標変更。全軍このまま直進。ムーンレイスの艦隊と合流して薔薇のキューブを阻止します!」

巨大な質量を持つ薔薇のキューブは1時間もしないうちにザンクト・ポルトを射程に捉える距離まで迫っていた。問題はその速度であった。シルヴァーシップで攻撃を仕掛けるならそろそろ逆噴射をかけて速度を落としていなければならないはずであったが、薔薇のキューブはそのそぶりも見せない。

タワーに直接ぶつけるつもりかもしれない、それはアイーダだけではなく、ブリッジクルーの誰もが思ったことであった。そんなことをすればタワーが破壊されるのはもちろん、薔薇のキューブは地上に落下し、膨大な量の粉塵を巻き上げて地球は太陽光から閉ざされた死の惑星になるだろう。しかも、角度から推測すると落ちるのはアジア。環境回復が最も進んだ地域なのだ。

ジムカーオが本気で地球人を絶滅させようと考えていると知ったアイーダは、思わず胸に手をやった。そして自分がG-メタルを冬の宮殿のリリンに渡したままであることを思い出して絶望しかけた。彼女は静かに目を閉じ、希望の道筋がどこかにないか探そうとした。

祈りに近い彼女の心象に、ふといくつかの映像が浮かんだ。冬の宮殿と、もうひとつ、七色の輝きの中で道に迷う弟の姿がハッキリ見えた気がしたのだ。

アイーダ「グリモアを1機用意してください。全軍の指揮はキャメロン中将にお任せします」

キャメロン「(モニター越しに)姫さま、いま艦隊を離れるのは危険です」

アイーダ「大丈夫です。わたくしはグリモアでザンクト・ポルトに向かいます。人類を救う方法があるかもしれないんです」







リンゴ「無茶ですって、法王さま、絶対に無茶です!」

メガファウナのモビルスーツデッキではゲル法王とデッキクルーが揉み合いを演じていた。ゲル法王は自らモビルスーツに乗ってザンクト・ポルトに行くといってきかなかったのだ。

ハッパ「動かせませんって。外は砲火の嵐ですよ。この船だって生き延びるかどうかわからないのに」

ゲル法王「わたくしには神のご加護があります。役割を果たすまでは絶対に死ぬことなどないのです」

ハッパ「そんなバカなーー」

ゲル法王「では、そちらの方(といってリンゴを手で指す)わたくしをザンクト・ポルトまで送り届けてください。早く行かねば手遅れになってしまう。もしダメなら高速艇をお借りしたい」

ハッパ「リンゴは速攻で撃破されて・・・どうすりゃいいんです、アダム・スミスさん!」

アダム・スミス「んぐぐ・・・(顔を真っ赤にして)、高速艇を用意しろ! リンゴ、お前が責任を持って法王さまをザンクト・ポルトまで送り届けるんだ!」

リンゴ「(飛び上がるほど驚いて)ぼ、ぼくがですか?」

アダム・スミス「このままでは人類は破滅だ! 法王さまに従え!」

ハッパ「(大声で)高速艇だ! もうどうなっても知らーーん!」








薔薇のキューブと呼ばれるラビアンローズ最終型の艦内が激しく揺れた。攻撃を受けているのだ。まさか自分たちの近くまでムーンレイスが近づいてくるとは考えてもいなかった船員たちは動揺してジムカーオ大佐の部屋に殺到した。

ジムカーオは簡素な作りの司令室の中にいた。部屋は暗く、計器類以外の明かりはない。船員たちが恐るおそるジムカーオに近づいていく間にも何度も爆発の衝撃が彼らの足元を揺らした。

今来・女性「あの、大佐。ラビアンローズが攻撃を受けておりますが、いかがいたしたらよろしいでしょうか?」

ジムカーオは神経を集中させてシルヴァーシップ全艦艇の指揮を執っていた。ニュータイプである彼はエンフォーサーを操ることで、大軍をたったひとりで遠隔操作していたのだ。心配になった女性が彼の身体を揺さぶって、ようやく彼の意識は身体に戻ってきた。

ジムカーオが顔を上げたとき、さらに攻撃が加えられたらしく、天井が激しく軋んでパラパラと壁材の破片が落ちてきた。

ジムカーオ「(天井を見上げ)おおー、攻撃されているねー」

今来・女性「いかように致しましょうか?」

ジムカーオ「ラビアンローズにやってきたのなら、相手の中にニュータイプがいるのであろう。武器はいくらでもあるのだから、君たちで対処すればいいのではないかな」

今来・女性「いや、しかし、わたしたちは・・・」

ジムカーオ「ニュータイプを止めることは自分にはできないよ。君らで戦うんだ。君らは散々我々クンタラを食べてきたのだと自慢していたじゃないか。ニュータイプの資質を発現した人間とその子孫を食べ続けてきた優秀な人類なのだろう? だったらその証拠を見せてやればいい」

今来・女性「そうは申しましたが」

ジムカーオ「まさかニュータイプを食べてきたエリートさまが食料に過ぎないクンタラに助けを求めたりはしないだろうね。(ハハと笑いながら)まさかね。そんなはずがないじゃないか。相手はニュータイプだ。君らがそれを凌駕するニュータイプであれば、負けることなどないのだよ。当然勝ってみせてくれるんだよね? 期待しているよ。自分は艦隊指揮で忙しいので、では」

そういうと彼は静かに目を閉じて意識を全エンフォーサーに拡散させた。

ジムカーオ(大執行が一方的な虐殺だと信じ込んでいたらしい。愚かなものだ。ニュータイプは個人の能力の覚醒であって遺伝などしない。ニュータイプのクンタラを食べれば自らもニュータイプになれるなどと原始人の発想ではないか。彼らも他の人類同様、死んでしまえばいいのだ)


(アイキャッチ)


次回vol:73で最終回です。最後までお付き合いくださった方々に深く感謝いたします。



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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:71(Gレコ2次創作 第25話・後半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第25話「ニュータイプの導き」後半



(アイキャッチ)


ムーンレイスのリックとコロンは、カシーバ・ミコシの独房に収容され捕虜交換に使われようとしていた。手持無沙汰のふたりはコールドスリープに入る500年前の四方山話に花を咲かせていたが、突然轟音が鳴り響いて船体が大きく揺れたので口を閉じて天井を見つめた。

リックが窓に駆け寄って外を見たが、目視できる距離には何もなかった。ふたりはしばらくじっと身を潜めていたが、轟音はさらに続いて爆発音が室内にこだました。

リック「攻撃を受けているな」

コロン「助けが来たにちげーねーや」

逃げる場所のない宇宙空間故にふたりは縛られるところまではされておらず、ロックの掛かった部屋に閉じ込められているだけだ。部屋には破壊活動に使えるようなものは何もない。

船の爆発がさらに続いた。彼らはこの船がヘルメス財団所有のフォトン・バッテリー運搬船だということは作戦前に聞かされていた。攻撃は貨物室のハッチに集中していた。分厚いハッチが金属の軋む音と共に剥がれていき、内部が丸見えになってしまった。

そこかしこから地鳴りのような音が鳴り響き、救援が来たと楽観していたリックとコロンの顔に焦りが滲んできた。リックは何度もドアを開けようとしたもののビクともせず、諦めかけたそのときだった。突然船は停電に見舞われた。リックは勢い込んで扉を引っ張ると、電子ロックが解除されたらしく、簡単に開けることができた。

リック「早く、緊急用のノーマルスーツに着替えるんだ」

ふたりは部屋に備えてあったノーマルスーツに袖を通し、自分たちに時代とは規格の違うヘルメットをあーでもないこーでもないと喚きながらなんとか装着して爆発のあった貨物室へと移動していった。

コロン「人がたくさん死んでるぜ。どうしたこった?」

リック「なんでこいつらノーマルスーツを着てねーんだろ?」

彼らが目にした死体は、法王庁の職員のものだった。地球生まれでザンクト・ポルトにすら滅多に上がったことのない彼らは、今回の騒動で宇宙での行動について何の訓練も受けないままトワサンガまで駆り出されていたのだ。いままで彼らは誰かに守ってもらっていたが、今回は護衛がいなかった。

そこにメガファウナの砲撃によって突然格納庫に大穴が開けられた。空気が流出してしまったことが原因で、室内にいた法王庁の職員はすべて窒息死したのだ。彼らはエアロックの概念すらあやふやな知識しかなく、またカシーバ・ミコシは砲撃されることを前提に設計されていなかったのである。

格納庫に開けられた穴は大きく、船内の空気はあっという間に宇宙空間へと流出してしまった。電気系統がショートしたときにはそれを修理する人間はすでに死んでいたのだ。

唯一生き残っていたのは、運搬船運航に実績のあるブリッジクルーだけであった。ところが彼らのいるブリッジは、いままさにルインに救援を求める通信を発しようとした矢先に何者かによって妨害され、通信が遮断されたのちに爆発が起きて全員死亡してしまった。

リック「なんだか知らんが死んでくれたなら結構さ。スモーを奪い返して逃げ出そうぜ」

リックとコロンのスモーは格納庫の中央部に固定されて無事だった。ふたりはコクピットの中で息絶えていた法王庁の職員を放り出してカシーバ・ミコシを脱出した。

ところが位置を確認したところ、月へも地球へも遠すぎるとわかった。近くにいるのは、3機のモビルスーツと1機のモビルアーマーだけであった。それらは互いに高速移動を繰り返し、エネルギーが尽きるまで戦い続けるかのように憎しみ合っていた。その中心にいるのが、カブトガニのような形をした気味の悪いMAだった。

リック「一方はメガファウナのG-セルフとG-アルケインだ。あれが仲間だが・・・、あいつらこんなところで戦い続けたらバッテリー切れで全員死んじまうだろうに。状況が見えていないのか?」

コロン「あー、なんかオレ吐きそう。あのMAはおかしいぜ」

リック「あのMAのコクピットをこじ開けてパイロットを引きずり出してやるか。来い、コロン!」







ベルリ「ダメだ。ルイン先輩に近づくこともできない」

同じ機体で戦うことで、ベルリはルインの実力を改めて思い知っていた。同学年だが年上のルインは学年主席のエリートで、なんでもベルリより上手くやれる人で尊敬の対象だった。

ラライヤ「(ゼイゼイと肩で息をしながら)わたしも全然歯が立たない」

ふたりが突破口を見つけられず焦ってきたとき、突然どこからともなく2機のスモーが現れてザム・クラブに取りついた。スモーに機体を取り押さえられたザム・クラブはそれを振り払おうと突然動き出した。卵型のファンネルが放出されたが、スモーが装甲の部分に手を掛けているので撃つことができないようだった。

ザム・クラブが動いた瞬間だった。ベルリの視界にコクピットに座るルインの姿が鮮明に映った。ルインもベルリの視線に気づいて戸惑いの表情を魅せた。G-セルフとG-シルヴァーは互いにコクピットを確認できるほど近くにはいない。距離は10㎞は離れている。しかし、ふたりは手を伸ばせば届くような距離にいるかのような錯覚に陥っていた。

ベルリ「(必死に呼びかける)ルイン先輩! もうやめてください!」

ルイン「(キョロキョロしながら)ベルリなのか? なんだこれは。お前は何をやったんだ?」

ベルリ「ジムカーオ大佐はニュータイプとエンフォーサーというのを使って何か実験をやっているんです。バララさんは早く医者に見せないと壊れちゃうんですよ!」

ラライヤ「本当のことです。詳しくはメガファウナで説明します。バララさんと一緒に来てください」

バララ・ペオールの名前を出されてルインは動揺した。しかし頭を強く振ると決然とふたりの申し出を拒否した。

ルイン「ダメだ。オレはジムカーオ大佐からお前を殺せと指示を受けている。お前がトワサンガの王でありながらその役割を拒否して法王庁に逆らっているのだから、お前を排除しなければ宇宙に秩序は戻らない。お前は死ぬしかないんだ、ベルリ!」

そう叫んだルインはビームサーベルを引き抜くとザム・クラブに取りついたスモーに斬りかかった。

コクピットを開けることができなかった2機はやむなく後ろへさがった。すると間近に見えていたベルリの姿は消え、戦場が広く見渡せるいつもの自分に戻った。そしてザム・クラブのバララの思考がなだれ込んできてルインはカッと身体が熱くなるのを感じた。

ルイン「オレはいまバララとかつてないほど一体感を感じている。負ける気がしないんだよ、ベルリ!」

ルインのG-シルヴァーは怨念のドス黒いオーラに包まれたままベルリのG-セルフに迫って来た。その力は圧倒的でベルリは剣先を打ち交わすのに精いっぱいだった。バララ・ペオールのザム・クラブも機動性を生かした動きでラライヤとリックとコロンを攻め立てた。

互いにビームを撃ち合うなか、ザム・クラブのファンネルが、どちらへ動くか躊躇したコロンのスモーを四方から貫いた。コロンの機体は大爆発を起こして炎が巻き起こり破壊された部品が飛び散った。

リック「コロン!」

四散したコロンのモビルスーツの部品がリックのモビルスーツの装甲に当たってカチカチと音を立てた。激怒したリックはハンドビームガンを乱射しながらザム・クラブに向かっていった。リックの友を失った怒りはザム・クラブが発散する負のオーラとまったく同じものだった。

ラライヤ「いけない!」

ラライヤはG-アルケインを素早く変形させるとリックとバララの間に割って入ろうとした。リックのスモーの指先がビームを放とうとしたとき、宙域にいるパイロットたちの間で再び強い感応現象が起こった。その刹那だった。ルインの視界からG-セルフが消えた。

ベルリのG-セルフが青いオーラに包まれそのまま目の前から消え、次の瞬間にはリックのスモーに体当たりをしたのだ。もしリックが引き金を引いていたら、間に入ったラライヤの機体を直撃して破壊していたところであった。リックはコクピットの中で激しく揺さぶられながらも、ラライヤを殺さずにすんだことに感謝した。彼もまた精神感応を起こし、自分がラライヤを殺しかけたことを理解したのだ。

ラライヤ「バララさんの中の人がみんなを悪い方向に引っ張っています。彼女をエンフォーサーユニットから引き剥がさないとみんなが不幸になります!」

リック「(汗を拭いながら)承知した。オレが何とかしてみる。あんたはファンネルを壊してくれ!」

リックのスモーがバララのザム・クラブを追い掛け回し、その装甲に手を掛けた。ラライヤは正確な射撃でファンネルを撃ち落としていく。ルインはバララを助けようとするが行く手をベルリに阻まれた。

ルイン「(ギリギリと歯ぎしりしながら)貴様は・・・!」

ベルリ「(必死の表情で)この状況が作られたものだと理解してないのは先輩だけだッ!」

ルイン「貴様に先輩呼ばわりされるたびにこちらは屈辱を感じるのだとなぜわからんのかッ!」

まったく同じ設計図から生み出されたG-セルフとG-シルヴァーは、いまは正反対のオーラを機体にまとわりつかせて剣を振るい合った。ところが互いの記憶の中にあるキャピタル・ガード養成学校時代の思い出は同じものだったのである。ふたりは同じ時間を生き、一緒に笑い合った仲だった。

これが人間性なのかとベルリは恐怖した。ともに生活し、ウォークラインを行った自分たち。ある時期からふたりの記憶の多くの部分は重なっている。これほど近い仲だったふたりの間にすら断絶しかない。人と人はこれほどまでに遠くにいる。言葉も思い出も、ふたりの間を繋いではくれない。

この断絶を乗り越えない限り、ジムカーオ大佐には勝てない。

G-セルフにメガファウナから連絡が入った。モニターにドニエルの顔が映し出された。

ドニエル「ベルリ、すぐにこちらへ戻ってくれ。薔薇のキューブが地球に向かって突進している。対応を協議中なんだ。最悪、お前とノレドを結婚させてジムカーオと和議するかもしれん」

ベルリ「ノレドは道具じゃない!」

ラライヤ「ベルリ!」

ベルリ「クソこの分からず屋がーーーッ!」

G-セルフの機体を覆っていた蒼いオーラが一段と光り輝き、G-シルヴァーを弾き飛ばした。暴れ回るザム・クラブに取りついていたスモーは装甲の隙間にビームを撃ち込むことに成功した。ザム・クラブから炎が上がる。その隙をついて、G-アルケインのビームワイヤーが装甲に巻き付き、切断した。

ザム・クラブは切断面が爆発を起こした。炎が他の部分の爆発を誘発する前に、脱出ポットが放出された。リックのスモーがそれを受け止めた。

ラライヤ「掴まってください!」

飛行形態へ変形したG-アルケインに、スモーとG-セルフが手を掛けた。

ルイン「貴様ら、バララをどうするつもりだ!」

ベルリ「彼女はジムカーオ大佐におもちゃにされたんです。メガファウナで治療します」

そう告げるとG-アルケインに捕まったG-セルフとスモーはその場を飛び去った。後を追おうとしたルインだったが、追いつけないと悟っていったんカシーバ・ミコシの中へと引き下がった。

コクピットを降りた彼は、法衣を身に纏った多くの乗員が死んでいるのを目のあたりにした。ザンクト・ポルトから上がってきたスコード教会の幹部や法王庁の役人など、誰ひとり生き残っていなかった。彼らはノーマルスーツさえ着ることなく、窒息死したのだ。

ルインは宙に漂うばかりの遺体を掻き分けるようにブリッジへ上がろうとした。ところがその階段は途中で千切れ途切れていた。エレベーターがあった場所も完全に吹き飛んでなくなっていた。ブリッジに上がったはずの彼は、星の瞬きを目にした。もうそこには誰の姿もない。

カシーバ・ミコシは完全に航行不能に陥っていた。







脱出ポッドのまま回収されたバララ・ペオールは、リックに付き添われメガファウナの軍医メディー・ススンのところへ運ばれ、鎮痛剤と睡眠薬を投与されて眠りについた。彼女の脳はオーバードライブの状態にあった。

メガファウナに戻ったベルリはラライヤと共にすぐさまブリッジへと上がった。

ベルリ「(大声で)ぼくとノレドを結婚させるってどういうことですか!」

怒鳴り声を聞いたノレドが身をすくませた。ベルリは彼女の姿に気づくと、気まずそうに視線を逸らした。彼は床を蹴ってドニエル艦長の横に立った。モニターにはディアナ・ソレルの顔が映し出されていた。ブリッジクルーは誰も沈鬱な表情で俯いていた。

ディアナ「まんまとしてやられました。戦力が同等だと思い込まされていたのもジムカーオの罠でした。戦力が同等ならば月面基地のあるわたしたちの方が有利だと油断させるのが敵の狙いだったのです。薔薇のキューブが動き出してしまうと、わたしたちはそれを止める手段をまったくもっていませんでした。彼らは圧倒的で、こちらを壊滅させようとすれば出来ると思います」

ドニエル「だがまだ負けたと決まったわけじゃねえ。いまディアナさんとも話していたんだが、向こうはベルリとノレドがトワサンガの王と王妃になればとりあえずは地球を攻める理由がなくなるはずなんだ。そこで危険な作戦だが、ふたりに・・・」

ベルリ「ぼくは反対です」

ベルリがあまりにハッキリとそういったのを聞いて、ノレドは眩暈がしたのかふらついたところをラライヤに支えられた。ラライヤはキッとベルリを睨んだが、ベルリはそれを無視した。

ベルリ「反対ですよ。危険すぎるでしょう? ぼくはともかく、ノレドは関係ないお嬢さんです。宇宙の平和だか何だか知らないけど、そんなものに責任を負う立場じゃないはずです」

副艦長「もし嫌なら、ディアナさんがその役を負ってもいいとおっしゃっているんだ。ただディアナさんを相手に差し出すとなると、ムーンレイスの人々がだな(咳払いをする)」

ベルリ「結局ジムカーオ大佐の目的は何なんですか? ぼくと話したときも、とにかくトワサンガに入れ、自分が王の何たるかを教育するからこっちへ来いの一点張りでしたよ。宇宙の王になりたいのならあいつを王にしたらいい。それなのに人だけ殺して、あとは何にもしないなんて」

副艦長「相手が望むものが何なのかを探って欲しいということもあるのだ。いままでの戦いで、連中は自分たちに悪評がつくのを極端に恐れている。おそらくはビーナス・グロゥブでフォトン・バッテリーを生産していることと関係があるのだろう。彼らは進んだ科学力と生産力を持っているが、ムーンレイスのように発電技術は持っていない。ユニバーサル・スタンダードとフォトン・バッテリーを受け入れているんだ。薔薇のキューブだけが古いものだと我々は推測している」

ベルリ「かといってノレドを巻き込むのは・・・」

ラライヤ「わたしもついていきます!」

ギセラ「あなたこそ関係ないお嬢さんでしょうに」

ラライヤ「いえ、ノレドの親衛隊長になれと要求してきたのはジムカーオ大佐なんです。いま思えば、ニュータイプの資質を調べたかったのでしょう。とにかく、彼が言い出したことなのだから、わたしがついていっても反対はできないはずです」

ドニエル「オレだってベルリやノレドにこんなことはさせたくないんだ。戦争は軍人の仕事だからな。ところが相手が普通の戦争をやらないから、どうすりゃ勝ちになるのかまるでわからねぇ。少なくとも時間稼ぎをしたい」

話を聞いていたディアナがモニター越しに話に加わった。

ディアナ「宇宙世紀時代に、スペースノイドは地球に対してコロニー落としということをやったんです。薔薇のキューブをもし地球に落とされたら、それこそ宇宙世紀の二の舞になる」

話が行き詰まるのを感じたノレドが不意に大きな声で会話に入ってきた。

ノレド「あたしはいいよ。心配なんかしてくれなくても全然大丈夫だって。ベルリもラライヤもついているならなおさら。それにあたしがもしニュータイプだったら、エンフォーサーがなくてもG-ルシファーはあの光の粒子を放出できるかもしれないってハッパさんが言ってた。(ひきつった顔で笑いながら)とにかくさ、ラ・ハイデン総裁にクレッセント・シップとフルムーン・シップを無事に返さなきゃいけないんだ。そうでしょ? そしてヘルメスの薔薇の設計図を回収して、全部元通りにして、フォトン・バッテリーを配給してもらわなきゃいけない。そんな簡単にあたしたちを殺せないって」

ドニエル「(小さな声で)だからよ、ベルリ。時間を稼いでくれるだけでいいんだ。仮に薔薇のキューブをキャピタル・タワーにぶつけられでもしろよ、大変なことになるってわかるだろう? とにかくあのデカブツを止めてもらわなきゃ困るんだ」

他に方法がないということはベルリにもわかっていた。彼はしぶしぶ小さく頷いた。

ディアナ「あなたを潜入させるもうひとつの意味についてもお話しますが、ジムカーオという人物はあなたのG-メタルというものを欲しがっていたのでしょう? わたくしたちはそれが何かを起動させるために必要だと考えていた。しかしもしかしたら、G-メタルが何かを止める機能を持っているのかもしれない。だから、目的遂行の邪魔になると入手しようとした可能性もあるのです。もしレイハントンが薔薇のキューブに何かを仕掛けたのならば、あなたが内部に潜入するしかそれを見つけることはできないのです。あなたにしかできないし、やっていただかなくてはなりません」

ベルリ「わかりました」

メガファウナのブリッジクルーたちは、あまりに重い責任を背負わされた3人の若者を無言のまま見送った。

レバーに掴まって自室に戻るとき、ベルリは不意に振り向いてノレドの顔を見た。

ベルリ「こんなことに巻き込んで本当にごめん。それから、もしみんな無事で戻れたら、ノレドに話したいことがあるんだ」

ノレド「うん。わかった」

ふたりは視線も合わさず、自分の部屋に入っていった。疲れ知らずのラライヤはモビルスーツデッキへと降りて行った。







爆破されて吹き飛んだカシーバ・ミコシのブリッジを調べていたルイン・リーは、そこがミサイルやメガ粒子砲で吹き飛ばされたわけではないと結論付けた。

ルイン「カシーバ・ミコシに自爆装置など付けるわけがないから、これは誰かが爆弾を仕掛けて、メガファウナの攻撃に合わせて爆発させたとしか思えない。法王庁の人間が仲間をこんな形で殺すわけがないし、ザンクト・ポルトから遠隔操作で起爆させる技術などないはずだ。やったとすれば・・・」

それはジムカーオしかいなかった。

ルインはクリムの話を思い出していた。ルインは彼と機体交換した際に、彼がジムカーオに裏切られて失脚したこと、そのためにパートナーであったミック・ジャックを失ったと言っていた。お前も必ずそうなるからと警告を受けていたのに、ルインは直接話しているうちにベルリを殺すことに同意してしまった。ジムカーオは言葉巧みに自分を操ったのだろうかと彼は疑った。

一方で彼がクンタラの支援を続けてくれたのは本当のことであった。ルインはマニィとともに地球を歩いて回り、クンタラの約束の地カーバがどこにあるか探していた。しかし、地球は生産力に合わせて人口が拡大していくので、どこにもクンタラだけを受け入れるような広い土地は余っていなかった。

絶望しかかったとき目の前に現れたのがジムカーオであった。彼は自分自身ももとはといえばクンタラの出身で、いまでこそスコード教に改宗してはいるが、クンタラ差別を受けたことは生涯忘れはしないと彼に話した。そして彼はルインとカリル・カシスに大きな役目を与えた。

クンタラ国を作るためには人口を急激に減らす必要がある。そう説明されたとき、ルインはそんなことできるはずがないと思った。その考えを見透かすように、ジムカーオは具体的な作戦を授け、事実その通りに事態は推移したのである。

宇宙にポツンと取り残された彼は、人口を急激に減らす作戦の中に、自分や地球のクンタラたちも含まれていたのではないかとの疑問を持った。もしそうだとするなら、ゴンドワンに残してきた仲間たちの身に危害が及んでいるかもしれない。

ルインにとってもっと最悪なのは、クリムトン・テリトリィの邸宅に残してきたマニィとコニーに危害が加えられることであった。考えたくもないことであるが、マニィを守ってくれているはずの法王庁がこういう形で殺されて、本当にマニィが守られているのかはなはだ疑問であった。

なぜ自分はジムカーオの言葉に騙されたのか。自分だけではなく、クリムさえも彼に騙されている。ジムカーオの作戦はことごとく的中しており、それは怖ろしくなるほどであった。

ルイン「ベルリがニュータイプやらエンフォーサーやらと話していたが、それは一体どういうものなのだろうか?」

G-シルヴァーに戻った彼は、レーダーにメガファウナを含む大艦隊と謎の巨大物体とそれを囲むUnknown の艦隊が徐々に近づいてきているのを確認した。彼は宇宙でこのような大規模戦闘が繰り広げられているとは聞いていない。知っているのは、アメリアがムーンレイスという人種と同盟を組んだということだけであった。

ルイン「ということは、巨大物体の方にジムカーオ大佐はおられるわけだな」







白旗を掲げたG-セルフ、G-アルケイン、G-ルシファーの3機が薔薇のキューブの誘導に従って内部に潜入した。パイロットはそれぞれベルリ、ラライヤ、ノレドである。

光誘導によって着艦させられたのは正規のハッチで、モビルスーツデッキのような作りであった。機体を降りた3人は、にこやかな笑みを浮かべる女性の案内で通路を歩いていった。薔薇のキューブの中には重力が発生していた。

すれ違う人々は彼らに無関心で、その中には銀色の女性型アンドロイドであるエンフォーサーも含まれていた。エンフォーサーは彼らにとっては普通に労働力として機能していた。

案内されたのはオフィスの中にある簡易的な応接室のような場所であった。オフィスでは様々な人種が忙しそうに働いていた。男女の比率も半々で、悪の組織のアジトといった雰囲気ではなかった。3人には紅茶が振舞われた。部屋に現れたジムカーオはコーヒーを要求した。

姿を現したジムカーオは、開口一番こういった。

ジムカーオ「降伏するとは思いませんでしたよ。発案はディアナ閣下かな?」

彼は3人が座らされたソファの前に腰かけ、緊張した面持ちの若者たちに微笑みかけた。

ジムカーオ「拍子抜けしたでしょう? きっと悪の帝王のような人間に頭を下げる屈辱をお考えだったのでは? 残念ながら自分はそういうタイプではありませんで、例えばベルリくんのG-セルフと戦うためにいかにも悪そうな面構えのモビルアーマーを用意して自分で操縦して戦うなどということはしないのです。そもそも戦いに勝って戦争が終結しても、それは戦争の終わりにはならないでしょう? 正義が悪に勝つことは、カタルシスは生まれますが、それはしょせんドラマの話で、現実は戦って終われば次の戦いがあるものなのです。勝利と平和は違います」

ベルリ「ぼくらはこの薔薇のキューブを止めていただくためにやって来たのであって、そんな話をするために来たんじゃありません」

ノレド「あたしたち、結婚します! トワサンガの王様と王妃になります! ヘルメスの薔薇の設計図はアメリアのアイーダさんがきっと何とかします。だから、もうこれ以上人を殺さないでください!」

話を聞いたジムカーオは困った顔を他の職員に向けた。

ジムカーオ「もう遅いんですよ。そのシナリオは自分が当初に考えてあなた方に提示したものですね。あなた方が薔薇のキューブと呼んだこのラビアンローズが姿を現す前まではかろうじて有効だったシナリオです。ですからベルリくんにはそう警告しました。それをあなたは無視した」

ラライヤ「ジムカーオ大佐、あなたの目的は何ですか!」

ジムカーオ「自分は様々な立場の利害調整を行っているだけの、ただの官僚です。その立場の中にはビーナス・グロゥブのものもあれば、トワサンガのものもあれば、レイハントンのものもある。そしてあなた方が知らない1000年前の条約を遂行する立場もある。もうニュータイプとエンフォーサーの役割についてはおおよそ想像がついたはずです。その通り、あなた方はいますぐニュータイプに進化してエンフォーサーユニットを止めなければならない。それがない限り、あなた方がシルヴァーシップと呼ぶ大執行のための艦隊がキャピタル・タワーを破壊して文明をもう1度原始時代に戻します」

ベルリ「そんなことは絶対にさせません!」

ジムカーオ「(肩をすくめて)させるもさせないも、そもそもそう決めたのはあなたのご先祖、初代レイハントン王ですから。ベルリくんだけでなく、ノレドさんもラライヤさんも、元はといえば外宇宙から戻ってきた人間の子孫です。外宇宙からの帰還は数度に渡り、様々な地域から帰ってきました。数百年間離れて暮らしていた我々は、互いに干渉はせず、500年間は地球文明の再興を待つことにして様子を見ていました。ところがムーンレイスの集団が地球と接触したところ、地球人は愚かにもまた文明をやり直せると過信していた。本当はそこで地球人はすべて滅亡させるはずだった。ところがレイハントンが地球人を善導するからもう500年間くれという。そこでもう500年間待った。その間に作られたのが、キャピタル・タワーによるフォトン・バッテリー供給システム、技術のユニバーサル・スタンダード化、言語・文字の統一、スコード教の制定です。その間に地球人は真に平和的人間に生まれ変わったことを証明しなければならなかった。クンパ大佐が行ったヘルメスの薔薇の設計図の公開は、人類を試す手段のひとつだったのです。あなた方はそれを拒否しなければいけなかった。でもそうはなりませんでしたね。自分がやったのは、状況の創出です。これも地球人は拒否しなければならなかった。大陸間戦争は再開してはいけなかったし、クンタラ国などという夢も見るべきではなかった。これにも失敗した。最悪すべての状況に終止符を打つための努力をしなければいけなかった。しかしあなた方は戦力による対抗を選んだ。勝てば終わると思った。そうではないですか? だからラビアンローズが自立して動き出した。レイハントンのすべての試みが失敗したとき、キャピタル・タワーは破壊され、人類は地下資源のないあのみすぼらしい星で死に絶える。そのあとは、生き残ったスペースノイドが地球にレコンギスタするのです。囹圄という言葉を知っていますか? 牢屋のことです。地球は外宇宙から帰還した者たちのための囹圄だったのです。戦いによる決着を模索すれば、ロクな文明のなかった地球人は外宇宙からの帰還者に勝てるはずがなかった。しかし帰還者たちは戦争による解決を望まず、ひたすら地球人を支援しながら1000年待ったのです。そして時は尽きました。あなた方は、このラビアンローズを止めて、キャピタル・タワーの破壊を阻止しなければならない。人類は宇宙世紀を繰り返さない新しい人類になったことを証明しなければならない。どんな手段を使っても結構ですよ。ぜひやってみてください。なんならこのジムカーオをここで殺してくださっても結構。それが解決になるとあなた方が考えているのならば」


(ED)


この続きはvol:72で。次回もよろしく。



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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:70(Gレコ2次創作 第25話・前半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第25話「ニュータイプの導き」前半



(OP)


クリム・ニックを慕ってゴンドワンから流れてきた若者の多くは、北方地区出身で全球凍結を恐れ流民となった家庭の子供たちであった。彼らの中にはクンタラ国建国戦線に家を追われたものも多数いた。彼らは北方地区がクンタラの支配地域になっていることを知っていた。

彼らの話は口コミで拡がり、クリムトン・テリトリィにやってきたゴンドワンの若者たちはクンタラを激しく憎むようになっていた。

そこに法王庁よりゴンドワン政府がクンタラ支配地域において核爆発をさせたことを非難する声明が出された。

彼らが歓声を上げて喜んだのも無理はなかった。彼らは自分たちの国の放射能汚染を悲しむよりも、侵略してきたクンタラたちが死んだことを喜ぶようになっていたのである。

いまや法王庁は旧キャピタル・テリトリィの住人であるレジスタンスも、アメリア政府も、ゴンドワン政府も支持していなかった。法王庁が唯一認めているのはクンタラ国建国戦線だけになっていた。

そんな状況を、ケルベス・ヨーは怪しんでいた。人類に根強く残るクンタラ差別を法王庁が利用して、争いごとを引き起こそうとしていると考えたのだ。

このまま人類の多数が法王庁とクンタラに対して憎しみを募らせ、戦う姿勢を示した場合どうなるのか。ジムカーオ大佐は相手を戦いに引きずり込んで最終的に勝利する独特の戦い方をする不気味な人間であった。彼は人類にもう1度クンタラ差別を根付かせようとしている・・・。

ケルベスの心配は、キャピタル・タワーを自分たちが破壊したように工作されてしまうことだった。キャピタル・ガードの教官だった彼が教え子たちを率いてタワーを破壊したなどと宣伝されては浮かぶ瀬もない。かといってこのまま何もしなければ、最後にはエネルギーが尽きて敗北してしまう。

エネルギーは戦っても戦わなくても消費されていくのである。

法王庁の人間はタワーに立て籠ったまま姿を現さなかった。ケルベスは総攻撃を慎み、じりじりと支配地域を取り戻していった。都合上ミラーシェードと名乗っているクリム・ニックは、単身街へ侵入してゴンドワンの若者たちに正体を明かし、レジスタンス側に寝返らせる作戦を実行中であった。

問題なのはもう一方のクンタラの若者たちをどう説得するかであった。彼らはいま勝利に酔いしれている。クリムトン・テリトリィはルインが戻り次第クンタラ国になるのだと信じて疑わなかった。

そのルインは宇宙へと連れ出され、おそらくは戻ってこないだろう。テリトリィ内にはルインの妻であるマニィとその娘が大邸宅で暮らしている。彼女はクンタラの英雄の妻だ。

ケルベス「現在の状況はゲル法王が戦争を止めない地球人に失望してトワサンガへ亡命したというストーリーの上に成り立っている」

彼の目の前にはレジスタンスの代表とキャピタル・ガードの教え子たちが立っていた。

ケルベス「法王庁が多くの談話を発表しているのは、ゲル法王猊下の代理として談話を発表しているわけだ。そして最初にアメリアが非難された。同盟を組むムーンレイスも非難された。そしてゴンドワンが非難された。次はどう考えても我々キャピタル・テリトリィの人間なのだ」

トリーティ「つまり、我々が総攻撃を仕掛けると彼らはタワーを破壊してそれをガードの攻撃によるものと発表するわけですね。汚いにもほどがある」

レジスタンスA「法王庁はクンタラと組んで地球を支配させるのでしょうか?」

ケルベス「いや、おそらく法王庁はルインにベルリを殺させるように仕向けていると思う。ベルリはトワサンガの王子だ。ベルリがルインに殺されれば、ルインはトワサンガの秩序回復を妨げた重罪人の烙印を押される。そしてクンタラとの歴史的和解は破棄される。そして姉のアイーダさんも非難される。彼女はすでにトワサンガ住人を殺したことにされているから、ベルリを殺した黒幕はアイーダさんと宣伝される可能性すらある。この一連の騒動がトワサンガの王位をめぐる争いだと人々に信じ込ませれば、アイーダさんは殺され、法王と法王庁は地球人への支援を打ち切ると発表してトワサンガの支配者となる。もちろん真実を知るゲル法王も殺される。この筋書きならば、フォトン・バッテリーが配給されず、地球はやがて原始時代に戻るのだから、トワサンガと地球が彼ら法王庁のものになるわけだ」

トリーティ「ぼくにはそんなまどろっこしいことをやる意味がわかりませんが」

ケルベス「ビーナス・グロゥブへの言い訳なんだ。もしビーナス・グロゥブがフォトン・バッテリーの配給を再開しなければ、トワサンガを抑えてもいずれは干上がる。連中がムーンレイスの月面基地を攻撃してこないのも、ビーナス・グロゥブを騙せなかった場合の保険として、ムーンレイスの発電技術を残したいからだろう」

ワシントンへ移ったアイーダから詳しい連絡が入ったのは昼過ぎであった。∀ガンダムはハリー・オードのオルカ2隻が交戦して南下を抑えてくれている。

トリーティ「だからこそ基本に返って、ぼくらはタワーを守る仕事に専念すると」

ケルベス「そうだ。本当に悪いが、∀ガンダムがこちらに近づいてきたらターンXと交戦になってタワーは必ず被害を受ける。お前しか頼める人間はいないんだ、トリーティ」

トリーティ「死ぬ覚悟はできています」

彼はここ数日間、ターンXの操縦について訓練を受けていた。そしていよいよ出撃することになったのだ。敵は徐々にアメリアに迫りつつある∀ガンダムと10機のYG-201であった。

ケルベス「YG-201に対抗するのはポンコツのカットシー5機だけだ。レックスノーは地上の防衛に専念させる。少ない戦力ですまんが、何とか抑えきってくれ。その間にオレは必ずキャピタル・タワーを取り戻す。ゴンドワンもクンタラも味方につけてな!」

トリーティを含む若者たちだけで構成された部隊は、ムーンレイスの救援と補給を任務にすぐさま出発していった。

ケルベス「さて、こうなるとあの晩のクンタラの若者たちを殺した事件が悔やまれる。あれでクンタラたちはこちらに警戒心を持ってしまった。さて、どうしたらいいものか・・・」







薔薇のキューブが動き出したとの知らせが入ったムーンレイスの月面基地は慌ただしく動き始めた。

敵の狙いが絞り込めないアメリア・ムーンレイス連合軍は、シラノ-5をいったん放棄して月面基地の防衛を固めながら各戦闘艇の準備を急ぐことになった。

外宇宙からの帰還船でもある薔薇のキューブは、その出力のごく一部を使ってゆっくりと地球に向かって移動していた。その周囲にはシルヴァーシップが2重の円陣を張って防衛している。この陣形が容易に突破できないのはすでに1度戦ってわかっていた。

最大限の警戒態勢の中、薔薇のキューブは悠然と月を離れて地球を目指した。それを見たディアナは全軍の4分の3を追撃戦に投入する決断をした。調査によってサウスリングの住民以外のトワサンガの生き残りはいないとわかっている。残る4分の1は月面基地に残されるムーンレイスの民間人を守る役目を負った。

その中にはタワーの運航長官であるウィルミット・ゼナムやリリン、サウスリングの住民たち、ジャン・ビョン・ハザムなどがいた。しかし軍人ではないゲル法王はメガファウナに乗り込み、地球に戻るといってきかなかった。法王に乗り込まれたメガファウナは大騒ぎになって出港が遅れてしまった。

副艦長「法王猊下、そうはおっしゃいましてもスコード教教会そのものがあなたの敵に回っているのですよ。法王庁もそうです。こういっちゃ悪いが、あなたひとりで何ができるというのです?」

ゲル法王「わたくしができることは数多くあります。そのひとつがアメリアのアイーダ総監への誹謗中傷の疑惑を晴らし、赦しを与えることです。それでもこの船に乗せてはもらえませんか?」

そう言われてしまうと断ることもできず、ゲル法王はメガファウナで1番まともな客室を与えられることになった。

ノレド、ラライヤ、ハッパの3人はG-アルケイン、G-ルシファーと共にメガファウナに乗り込んだ。ノレドと顔を合わせたベルリは嫌そうな顔をした。

ベルリ「なんで月に残らないんだ? ノレドは非戦闘員じゃないか」

きつい言葉を浴びせられたノレドは自信なさげに俯いてベルリのそばを離れてしまった。一緒にいたラライヤがすれ違いざまにベルリに対してキッと睨みつける。

ベルリ「なんだい、あいつ。人が心配してやっているのに」

第1種戦闘配備の指示が艦内に鳴り響くとメガファウナの船内も慌ただしくなった。月の裏側の基地に入港していたメガファウナは30隻のオルカと共に漆黒の宇宙へと出撃した。

月の表側の基地からはディアナ・ソレルの旗艦ソレイユを中心とした大艦隊が月の引力圏を脱して薔薇のキューブとシルヴァーシップの艦隊を待ち受け、アメリア・ムーンレイス連合艦隊はジムカーオ大佐率いるエンフォーサーの集団を挟撃する形になろうとしていた。

一見戦力は均衡しているように見えるが、メガファウナのブリッジに上がったハッパの報告はドニエル艦長以下ブリッジクルーを驚愕させるに十分だった。

ハッパ「間違いないですね。薔薇のキューブはそれ自体が膨大な生産設備で、船が撃沈されるごとにすぐさま新しい船を生産して補給するんですよ。だからいくら戦っても相手の数は減らない」

ドニエル「こっちは減る一方だってのに? たまんねぇ話だな」

副艦長「だとしたらなぜこちらと同数だけ揃えるんだ? どんどん増やせばいいじゃないか?」

ギセラ「(指先で頭を抑え)だから目的が違うんですよ。もしくは勝つことの基準が違う」

ドニエル「本当にややこしい連中だな。それでハッパはどう考えているんだ?」

ハッパ「鍵はニュータイプとエンフォーサーだと思います。シルヴァーシップはエンフォーサーの集中管制で無人機、しかもおそらくは思念で連動しているのでミノフスキー粒子は関係なく相互に連絡が取り合える。YG-201にはエンフォーサーは乗っていませんが、遠隔操作でしょう。同時にエンフォーサーは思念の入れ物でもある。極端な話、メガファウナのクルー全員がニュータイプになってエンフォーサーの中に入ってシルヴァーシップをコントロールできれば攻撃能力を持たない薔薇のキューブは簡単に乗っ取れる」

ドニエル「つまり・・・ギセラ!」

ギセラ「ジムカーオ大佐にとって重要なのは、わたしたち人類がニュータイプになれるかどうかを見極めるってこと? 領土とか政治的野心がまったくない人だってこと?」

ハッパ「ラライヤにも結局何もしてないんですよ。彼女に誰かの思念が入っているとわかったら、すぐに興味をなくした。ちなみにラライヤに入っているのは彼女によく似た美人さんです」

副艦長「(頭を掻きながら)宇宙世紀復活派というのは?」

ハッパ「宇宙世紀って元々は人類の宇宙進出に際して地球にあったそれまでのいざこざを忘れて新しくやり直そうって意味でしょう? 月に初めて人類が降り立った日が宇宙世紀元年なのかどうかはわかりませんが。そして100年以内にニュータイプが生まれた。宇宙世紀復活派というのは、その時代に戻ろうという意味で、戦争を継続しようという意味じゃないのかもしれない」

副艦長「(口をすぼめて難しい顔をしながら)軍産複合体というのは?」

ギセラ「(ポンと手を叩き)それがビーナス・グロゥブのヘルメス財団や法王庁じゃないの? だからレイハントンは彼らと敵対していた。リギルド・センチュリー1000年の年にヘルメスの薔薇の設計図がばら撒かれてビーナス・グロゥブのヘルメス財団が動き出した。だからレイハントンは何らかの対抗手段を講じようとした。それに危機感を持ったビーナス・グロゥブのヘルメス財団が裏で手を引いてレイハントン家を打倒した。(ドニエルを指さしながら)でもそこには競争の概念が欠如していたのでクンパ大佐はふたりの子供を逃がした」

ドニエル「(イライラしながら)だから勝つにはどうしたらいいんだよ!」

ハッパ「(胸を張って)ニュータイプに進化すればいいんですよ」

ドニエル「(がっくりと肩を落とし)オレにそんなことできると思うか?」

副艦長「(ハタと気づき)もしギセラとハッパの話が本当なら、ビーナス・グロゥブの軍産複合体はノレドが一掃しちまったってことじゃないか。それで人間タイプのエンフォーサーが反乱を起こしたからキルメジット・ハイデン新総裁は連中がトワサンガに逃げないようにクレッセント・シップとフルムーン・シップをこっちに預けた。そうなる。ノレドはこれ、大手柄どころじゃないぞ」

ギセラ「人間タイプのエンフォーサーは2万人くらいいたんでしょ? そいつらはニュータイプなの? トワサンガの薔薇のキューブにもそれくらいいた?」

ハッパ「数えてはいませんが、数はそれくらいでしょうね。ラライヤが捕まっていたときに覚醒したらしくて、そのときの感触だと彼らはニュータイプとは違うってことです」

ドニエル「ニュータイプになってエンフォーサーを止めるって手立て以外に戦う方法はないのかよ。そもそも連中は地球へ行って何をしようってんだ!(モニターに眼をやり)なんだって? 薔薇のキューブからなんか出たって? 例のカブトガニか?」

望遠モニターで捉えられた映像には、薔薇のキューブから飛び立っていくザム・クラブが映し出された。それに重なるようにディアナの映像が映し出された。

ディアナ「地球よりカシーバ・ミコシがこちらに向かってきているようです。スコード教の船ですが、ハリーの報告で武器を密輸していることが確認されています。攻撃してよろしい?」

ドニエルは返答に困って副長に助けを求めた。彼はギセラに助けを求めるが無視された。ドニエルは顔を真っ赤にして悩みぬいた末にこう叫んだ。

ドニエル「(ディアナに向かって)待ってくれ。おそらくムーンレイスが攻撃するとややこしくなるはずだ。いったんこちらに任せてくれないか。よし、メガファウナ最大戦速! 薔薇のキューブを追い越してカシーバ・ミコシと接触する! オルカはディアナ艦隊と合流!」







カシーバ・ミコシの客室でゆったりと時間を過ごしていたルイン・リーは、突然鳴り響いた警報に驚いて飛び上がった。

ルイン「何事か!」

法王庁職員「前方より巨大MA接近。何者かわかりません」

ルイン「よし、オレが確かめる。G-シルヴァーの準備を急げ!」

ルインはクリム・ニックから引き継いだG-シルヴァーに大きな自信を持っていた。いままで乗り継いできたどのモビルスーツよりも高機能で運動性能が高いのは間違いない。ルインはベルリと同等の性能の機体に乗れば、自分は絶対に勝つはずだと自分に言い聞かせた。

カシーバ・ミコシから出撃したルインは、前方から高速で接近してくるカブトガニのようなMAと撃ち合いになった。MAはファンネルを放出した。小さな卵のようなファンネルは小刻みに動きながらG-シルヴァーを包囲して一斉に射撃をした。ルインはそれを避けることができなかった。

一瞬で20以上の直撃を喰らったルインは、てっきり自分はここで死ぬのだと思った。ところがファンネルのビームは威力が弱く、機体に大きな損傷はなかった。敵のMAは卵のようなファンネルを再び腹の中にしまい込んで動かなくなった。

ルイン「こいつ、遊んでいるのか?」

MAのコクピットが開いた。そこにいたのはバララ・ペオールであった。ルインは唖然と彼女を眺め、ゆっくりと機体を接触させた。

ルイン「バララ・・・、生きていたのか?」

バララはそれに応えなかった。彼女は再びコクピットを閉じ、G-シルヴァーを装甲の繋ぎ目に手をかけさせたまま一気に加速をかけた。ルインはMAに手をかけて接触回線を開いたままバララに呼びかけ続けた。その目の前に、赤い戦艦が近づいてきたのをメインカメラが捉えた。

ルイン「メガファウナ? そうか、バララ。ベルリのところに連れて来てくれたのか。ようし、オレはあいつを倒して宇宙に秩序を取り戻す。もうお前は戦わなくていいんだ、バララ」

メガファウナから、一筋の光が射出された。ルインにはその光の正体はすぐに分かった。出撃してきたのはG-セルフに間違いなかった。ルインはザム・クラブから手を放し、ベルリのG-セルフと正対したまま突っ込んでいった。

そのころメガファウナの中では慌ただしくラライヤが出撃しようとしていた。彼女はG-アルケインのコクピットに収まり、ハッパの指示を受けていた。

ハッパ「カブトガニにエンフォーサーが乗っていた場合はベルリが取り込まれてしまわないように気をつけて。バララ・ペオールだった場合は、彼女は君がされたような実験をされた可能性がある。強制的にニュータイプの思念を入れられてしまったんだ。できれば彼女を助けて、メディー先生に診てもらおう。誰の残留思念なのかが気になる」

ラライヤ「了解です。(ハッチを閉じる)ラライヤ、行きます!」

そのころ、ドニエルの独断でカシーバ・ミコシの去就を預かることになったメガファウナのブリッジは、どう事態を収拾するか侃々諤々の議論になっていた。

ギセラ「(顔を真っ赤にして)カシーバ・ミコシと言ったって法王庁が武器商人みたいなことをしているのに守ってやる必要はないでしょうが!」

ドニエル「(焦りの表情で)んなこと言ったって、武器を運んでいたって証拠はないんだからまたジムカーオに利用されちまうじゃないか! アメリアの戦艦がカシーバ・ミコシを破壊したなんて宣伝されたら姫さまの立場はどうなっちまうんだよ! 乗り込んで白兵戦だ!」

副艦長「ハリー隊長が攻撃したときは、左にモビルスーツ、右にシルヴァーシップが隠れていたっていうじゃないですか。シルヴァーシップはそのあとクリム艦隊と接触してシラノ-5に入っている。モビルスーツをタワーで降ろしているとすると中は空のはず。白兵戦でもいけないことはないか」

ドニエル「(ホッとした表情で)ほらみろ」

ギセラ「ザンクト・ポルトはジムカーオの軍隊に占領されていたんですよ。なかが戦闘員だらけだったらどうするんですか!」

副艦長「その可能性もあり得る」

ドニエル「うぬぬぬ!(顔を真っ赤にして)よーし、わかった。副長、お前ちょっとゲル法王猊下のところへ行って、カシーバ・ミコシの格納庫だけ吹き飛ばしていいか訊いてこい。カシーバ・ミコシはデカいがほとんどは格納庫だ。とりあえず左右の大きな部分だけ攻撃する。これでいいか?」

ギセラ「承知!」

ドニエル「ステア、カブトガニから離れてカシーバ・ミコシに近づけ。主砲スタンバイ。(モニターにゲル法王と副長の姿が映り、指でOKサインを出す)主砲、撃てー!」







G-セルフとG-シルヴァーは互いを牽制し合いながら距離を取ってビームライフルを撃ち合っていた。バララのザム・クラブはファンネルを放出してベルリを攻撃したが、ベルリはG-シルヴァーの砲撃をかわしながら同時にファンネルのビームも避けて2機のファンネルを撃ち落とした。

それを見たルインは自分に出来なかったことをいともたやすくやってしまうベルリに激怒すると、ムキになってビームライフルを乱射した。

ルイン「バララは下がれ! 邪魔をするな! あいつはオレが仕留める!」

そこに遅れてラライヤのG-アルケインが戦闘に加わった。ラライヤはムーンレイスから提供されたハンドビームガンでさらに5機のファンネルを撃ち落とした。するとザム・クラブはファンネルを放棄してG-アルケインに突撃してきた。ラライヤは回転してそれを避けると、ザム・クラブの腹に1発を命中させた。火花が一瞬大きな炎になったがそれはすぐに鎮火した。

ラライヤが戦場に参戦してきて、ベルリは自分の知覚がクリアになる感覚に襲われた。感覚の靄が晴れ渡るような感じがした。そして彼は、G-シルヴァーのパイロットがルインであることと、ザム・クラブのコクピットにバララが座っているのを見た。ベルリは自分の眼に見えているものに驚いた。

ベルリ「ラライヤ!」

ラライヤ「相手はルインさんです。こっちはバララ・ペオール。見えていますか?」

ベルリ「(怒って叫ぶ)ルイン先輩なら目を覚ましてくださいよーー!」

ベルリの叫びを、一瞬だがルインも察知した。しかし同時にメガファウナから発射されたメガ粒子砲が彼らの頭上を通り越してカシーバ・ミコシを直撃するのを目の当たりにして彼は再び怒り狂った。

ルイン「オレたちクンタラがスコード教のご神体を守ってやっているのに、お前たちは攻撃するのか! クンタラに穢された御神体なら壊していいとでも考えたのかッ!」

ルインの怒りはベルリとラライヤにも伝わった。ふたりは口々にそれは違うと否定した。だがその声はルインに届かない。ミノフスキー粒子はふたりの声を拡散させて遮断した。ベルリとラライヤに見えているものがルインには見えなかった。G-セルフのコクピットの中でいくら叫んでも、悲しみの声はルインには聞こえないのだった。人はなんて孤独なのか、ラライヤは愕然とした。

G-シルヴァーはザム・クラブに守られながらカシーバ・ミコシまで撤退した。そこにメガファウナの第2波が放たれ、格納庫のハッチが大爆発を起こして船体側面がめくれ上がった。

ルインはカシーバ・ミコシのブリッジに手を置いて接触回線を開いた。

ルイン「敵はこいつを破壊するつもりだ。戦艦や武器などは積んでいるのか?」

法王庁職員「(震えながら)まさか・・・、カシーバ・ミコシは御神体です。武器などは・・・」

ルイン「なに? 何も積んでいないのか? では脱出艇でいますぐ逃れるんだ。殺されてしまうぞ」

法王庁職員「いえ、それがジムカーオ大佐がゴンドワンのクンタラ国建国戦線に提供する兵器を優先するからと、脱出艇をすべて撤去してしまいまして・・・。ないのです。1艇も、ないのです!」

ルイン「まさか丸腰で運用していたのか? あの聡明なジムカーオ閣下が? あの方はそこまで人類を信用して下さっていたというのに、(メガファウナを振り返る)お前たちアメリア人はッ!」








ベルリとラライヤは揃ってメガファウナに引き返してブリッジに手を置き、接触回線を開いた。

ベルリ「(憤怒の表情で)カシーバ・ミコシは丸腰なんですよ! なぜ攻撃したんですか!」

ラライヤ「(慌てふためき)ベルリ、落ち着いて!」

ベルリ「(怒りは収まらず)スコード教の御神体なんですよ! なんてことをしてくれたんですか!」

ドニエル「(冷静に言い返す)ゲル法王猊下の許可はいただいている。武器を積載していないか左右の側面を壊しただけだ。慌てるな、ベルリ!」

ラライヤ「そうですよ! ベルリさん、落ち着いて。この空間は何かがおかしいんです。エンフォーサーとは違うものが渦巻いている気がします。あのバララさんだって・・・」

ベルリ「バララ・ペオール!」

ベルリが怒りにまかせてG-セルフのメインモニターをザム・クラブに振り向けたとき、また感覚が明瞭になるかのような現象が起こった。ベルリはふと冷静になって、破壊された側面が燃え上がるカシーバ・ミコシを見た。そこには黒く渦巻く何者かの思念があった。

思念の中心にはザム・クラブのコクピットがある。しかしバララ・ペオールがその憎悪の思念を発しているわけではなかった。その身体の内にいる何者かの思念に、バララ・ペオールは絡め捕られているのだ。彼女はユグドラシルに搭乗してからずっとおかしかった。

ベルリ「あれか・・・、あいつがみんなをおかしくしているのか・・・」

ラライヤ「ユグドラシルにエンフォーサーユニットがついていたとしたら、何者かの悪い残留思念があの人の肉体を乗っ取った可能性もあります」

ベルリは機体を加速させてザム・クラブとG-シルヴァーに迫った。ラライヤもその後を追った。

ふたりが離れたメガファウナのコクピットに、ディアナ・ソレルからの通信が入った。

ディアナ「薔薇のキューブが加速しました。食い止めようとしていますがシルヴァーシップを突き崩せません。戻ってきてもらえますか?」

ドニエル「もう少し待ってくれ。こちらが片付いたらすぐに救援に向かう」

ディアナ「よろしく」

ドニエル「ギセラ! カシーバ・ミコシの格納庫に何かあるか?」

ギセラ「いえ、何も。あ、いま停電しました」

ドニエル「丸腰なんだな。よし、それならもう十分だろう。ディアナ艦隊の救援に戻るぞ」

メガファウナが180度回頭するさまを確認することもせず、ベルリとラライヤは接触回線を開いてザム・クラブの様子を探っていた。G-セルフとG-アルケインは手を繋いだままジッと敵を観察した。

ザム・クラブが発するどす黒い憎悪には、空間を歪めるほどの威力があった。その残留思念は強大で、周囲を圧する力があった。

ベルリ「あいつを何とかしなきゃいけない」

ラライヤ「ええ」







だがふたりはその様子を遠くで見つめている視線には気がついていなかった。

薔薇のキューブの中で多くの職員たちと食事を摂っていたジムカーオは、ふいに呆れたように両手を広げてスプーンを放り出した。

ジムカーオ「あの男もニュータイプじゃないのか? やはり地球育ちではダメなんだろうな。ルインですらこれほどまでに鈍感なのに、レイハントンはよくもまぁ500年も猶予を取って待たせてくれたものだ。ヘルメス財団1000年の夢が聞いて呆れる。人間は原始時代からまるで進歩などしていないではないか。やはりオールドタイプは絶滅させるしかない。地球文明再興派の子孫など最初から皆殺しにして地球を奪っていけばよかったのだ。大執行を一方的な虐殺にしないためにわざわざニュータイプを探してやったのに、見つかるのは強化人間の残留思念と悪意ある人間の残留思念ばかりだ」

今来・女性「虐殺の汚名を着るとフォトン・バッテリーの配給は望み薄になりますね」

ジムカーオ「ビーナス・グロゥブのラビアンローズは内部が破壊されてしまったそうだから、こっちまで攻めてくることはないだろうが、なぁに、文句を言ってきたらレコンギスタ派でも焚きつけてラ・ハイデンを失脚させてやるさ。向こうの連中は金星暮らしに心底懲りごりしているんだ。地球人を皆殺しにし、レイハントン一味を排除して、レコンギスタさせたのちにムーンレイスの技術で文明を再興させれば文句は言わないだろう。ディアナ・ソレルとは話したが、あれは賢いから戦争が終われば条約は締結できる。心配はいらんよ」

今来・男性「結局我々は500年間待たされただけですか。そんなに我々のアンドロイド技術を怖れたんでしょうかね?」

今来・女性「モビルスーツで戦争なんかやっているから強化人間という発想になる。真のニュータイプ研究を突き詰めて完成させた我々の敵じゃなかったんですよ。ただわたしたちは遅れて戻ってきただけ。ニュータイプを長年食べてきたわたしたちが1番進歩しているに決まってるじゃないですか」







メガファウナに残ったノレドは、G-セルフとG-アルケインが、つまりベルリとラライヤが手を繋いでいる様子を小さなモニターで眺め、見送っていた。

彼女はパイロットスーツを着てモビルスーツデッキにいた。彼女のそばにはコクピットを再び封印されたG-ルシファーがある。

ノレド「なんであたしはニュータイプじゃないんだよぉ。なんでラライヤとベルリなんだ? なんであたしじゃダメなんだよぉ。誰かあたしの死に場所を教えておくれよ・・・」

メガファウナはカシーバ・ミコシとふたりの仲間を残したままどんどん遠ざかっていった。


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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:69(Gレコ2次創作 第24話・後半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第24話「砂塵に帰す」後半



(アイキャッチ)


ターンXがNYの街への攻撃を開始して半日が過ぎていた。

逃げ惑うアメリアの市民は軍と民間が協力して供出した様々なバスやトラックに分乗して東海岸から各地へと散っていった。テールランプの赤い灯火がハイウェイに列をなしていた。

太陽が西の空に落ち、闇が広がっても市街を照らす街灯はひとつも灯らなかった。フォトン・バッテリーによる電力供給が止められたこともあるが、そもそも街灯がひとつも残っていなかった。

旧時代に国連本部があったという理由だけで宇宙世紀を生き延びた歴史ある都市は、いまは灰燼に帰そうとしていた。暴走した∀ガンダムによって巨大な都市の3分の1は消失し、舞い上がった砂塵が夜空にあるはずの星の瞬きを隠し不気味な漆黒を作り出していた。

風に煽られた砂塵はアメリア軍国防省の建物に容赦なく降り注ぎ、パチパチと鳴る音が止むことがない。広場に降り立ったグリモアが上空から近寄ろうとする∀ガンダムに対して必死の応戦をしていた。しかしグリモアがどれほどサブマシンガンで応戦しようとも、退けられるのは一時的に過ぎなかった。

数百年前に作られたとされるこの古代兵器と比べると、フォトン・バッテリー仕様の兵器はまるでおもちゃのように軽々しく、脆弱であった。アメリア軍は∀ガンダムと交戦しながら、自分たちの自信の源であったイノベーションの行きつく先に絶望していた。技術革新は人間を豊かにすると信じていたのに、得られるものは虚無のごとき自己否定だったのである。

その白い禍々しい機体は、まるで地球そのものと戦っているがごとく大地に対して正対し、両手両脚を大きく開いた姿勢で攻撃されれば上空に退き、しばらくするともうもうと立ち込める煙と砂塵の合間を縫って舞い降りては闇の中でさえ輝く虹色の粒子を撒き散らしてまた上空へと消えていった。

アイーダ「首都機能はワシントンに移します。あちらは大戦時に放棄したままですが、それでもこちらよりはマシでしょう」

大統領であるズッキーニがいち早く首都を脱出してしまったために、現場の指揮はすべてアイーダの肩にのしかかっていた。国防省の周囲には多数のグリモア隊が集まって必死の防戦を行っていたが、∀ガンダムにはまるで歯が立たない状況が続いていた。

軍の輸送機で政治家を逃がそうとしたところ、あっさりと∀ガンダムに撃墜させられてしまったために、市民の避難はトラックとバスをかき集めて行われていた。全米各地の軍もNYに集結しつつあった。必至の状況を裁こうとするアイーダの頭の中には、月の裏側の広大な空間で大艦隊戦を指揮するディアナ・ソレルの姿が思い描かれていた。

アイーダ(彼女に出来て、わたしに出来ないはずがない!)

いまや誰もかれもがアイーダを頼り、その指示を仰いでいたが、彼女は泣きごとひとつ言わずすべての事柄に指示を出し続けた。

レイビオは彼女のプライベートルームの隠し部屋から高性能の通信機を運び出していた。それはグシオンがアグテックのタブーを犯して作らせたもので、衛星を利用した遠距離無線通信機であった。メガファウナがベルリを救出するためにゴンドワンに潜入したときも、キャピタルに潜入したときも、これを使って連絡を取っていたのだ。

アイーダ「それだけは絶対に壊させないでください。いまはそれだけが命綱です」

そんな彼女の下に、待望の知らせが届いた。

セルビィ「連絡がふたつ。ひとつはハリー・オードさまより。ふたつめは海兵隊よりシルヴァーシップ潜入部隊の準備ができたと」

アイーダ「ハリーには∀ガンダムを破壊するよう伝えてください。シルヴァーシップ潜入部隊はわたくしが指揮を執ります。連絡が終わったらあなたもここから逃げてください。あの光の粒子は人間を殺しませんが、大量の砂に押しつぶされて死んだ人間がたくさんいます。地下もダメです。首都を移すワシントンへ!」

セルビィ「(髪を振り乱しながら)姫さまは?」

アイーダ「議会が始まればあなたが必要です。とにかくワシントンへ急いで!」

そういってもまだオロオロとその場を離れがたくしているセルビィの背中を押し、アイーダは台車に乗せた衛星遠距離通信機を押すレイビオと共に建物の外へと飛び出した。

アイーダを援護するためにグリモアが一斉射撃をした。サブマシンガンの轟音が辺りに響き渡る。秘書と共に軍のトラックに通信機を乗せたアイーダは、男性秘書にこれを自分の旗艦であるラトルパイソンに積み込むようにと指示を出し、そのあとは南西の方角を指さしワシントンへ向かえと怒鳴った。

サブマシンガンの轟音は止むことなく、火薬が破裂する閃光がアイーダとシルヴァーシップ潜入部隊の姿を断続的に闇夜に照らし出した。彼らは強襲用のホバーに乗り込んで砂に覆われた街へと出た。その上空で轟音が鳴り響き、2機の巨大なモビルスーツの影を映し出した。

ハリー・オードの金色のスモーは街を破壊し尽くそうとする∀ガンダムに体当たりをしてその上体を起こさせ、ビームガンを連射した。機体表面を弾かれた∀ガンダムは月光蝶の射出を中止してスモーに狙いを定めた。

2機は牽制し合いながら上空へと舞い上がった。滞空した砂塵が切れるとその巨躯は月光に照らされキラキラと光るふたつの影となった。海上には巨大なふたつの丸い影がある。クレッセント・シップとフルムーン・シップであった。その2機にはすでに多くの戦艦が護衛としてついていた。

ハリー「ホワイトドールを海面上へ押し出す。オルカは絶対にこいつを逃がすな!」

さらに投入されたスモーが編隊を組んでビームガンの閃光を∀ガンダムに浴びせ続けていく。地上からのグリモアの攻撃に加えて新たにやってきたディアナ親衛隊との交戦で、∀ガンダムは防戦一方となって都市部への攻撃を中断せねばならなくなった。

静寂を眼下に置きながら、スモーの編隊と∀ガンダムが戦い続ける。アメリアとムーンレイスの連合軍は共に戦うことで信頼を深め、徐々に連携が取れるようになっていた。

砂塵が舞う静寂の中を、アイーダと軍の海兵隊選抜20名が乗り込んだホバークラフトが進んでいた。夕刻まであった街並みはもうそこにはない。砂と剥き出しになった硬い大地が残るのみであった。

彼らが目指すのは、アメリア軍の軍港であった。ここも関連施設はすべて砂の山となっていたが、ある建物だけがそのまま残っていた。その中に、シルヴァーシップは係留されていた。

ホバーを降りた20名は工兵が砂を描き分けて作り上げた通路を通って、建物へと近づいた。地下へと降りる階段に辿り着いたとき、アイーダが制止して作戦の確認を行った。

アイーダ「シルヴァーシップと呼ばれる薔薇のキューブの戦艦は、ある方から無人艦艇だと聞いております。しかし確認されているわけではないので十分気をつけること。戦艦の中心部に中央司令室があって、そこにアンドロイドと呼ばれる女性型の人造人間が1体います。10名でそれを破壊すること。指揮はわたくしが執ります。街を破壊しているあの白いモビルスーツは、このアンドロイドというものが操作している可能性があります。必ず機能が停止するまで破壊してください。残りの10名はこの船に時限爆弾をセットしていってください。完全に破壊してくださって構いません。機爆破30分後にセット。全員時間通りに脱出すること。よろしいですね?」

シルヴァーシップに潜入したアメリア軍は指示通り二手に分かれ、アイーダが率いる10名はライトを装着した銃を構えて中央司令室を目指した。もう1隊は爆弾をセットしていく。確実にこの船を破壊するのが目的だったので、船首から船尾まで500以上の爆薬を仕掛けなければならない。

中央司令室を目指したアイーダは、不気味に静まり返る真っ暗なモビルスーツデッキから入った。そこにはYG-201というG-セルフの量産機が10機静かに立ち竦んでいた。このモビルスーツにも爆薬が仕掛けられた。アイーダたちは帰り道に迷わないように小さな丸いライトを仕掛けながら進んでいく。

通路に書かれた文字はアイーダたちが使っているユニバーサル・スタンダードの文字ではなかった。宇宙世紀時代は世界各地で文字も言葉も違っていたという。これを統一することがユニバーサル・スタンダードの意味であり、宗教を統一することがスコード教の意味であった。

ユニバーサル・スタンダードを使っていないということは、規格統一の話し合いに参加していないという意味であった。クンタラが独自の宗教を持つのも同様だ。クンタラはスコード教を成立させる話し合いに参加させてもらえなかったのだ。アイーダはこのふたつの共通性に気がついた。

ユニバーサル・スタンダードはムーンレイスが指向していた世界統一の方向性であった。アイーダは月面基地でディアナからその話を聞いてたる。ベルリが追い詰められたときにスコードの名を叫ぶように、ハリーはユニバースと叫んでいたそうだ。人類統一の夢がそこには託されている。

ムーンレイスの目指したものが、規格と宗教の統一に繋がっている。

おそらくそれを成し遂げたのは500年前にディアナ・ソレルを攻撃した初代レイハントンであろう。彼はムーンレイスの夢を奪って、ムーンレイスを月に封じ込めた。ムーンレイスはユニバーサル・スタンダードのプロトタイプの方向性を持っていたが、話し合いの主導権を取れなかったのだ。それはレイハントンの野望によって奪われたのだろうか。アイーダにはそうは思えなかったのだ。

彼らは縮退炉の技術を捨てるつもりはなかったのだ。スコード教に参加しなかったのも、それがアグテックのタブーを正当化するための装置であったからだ。外宇宙から最も早く地球圏へ戻ってきたムーンレイスには、宇宙世紀の技術体系が最も色濃く残っていたのだ。

アイーダ(元も早く地球へ戻ってきた古来が話し合いから弾かれたとするならば、最も遅く戻ってきた今来も話し合いに参加させてもらえなかったのではないか? もしそれが薔薇のキューブで暮らすエンフォーサーなのだとしたら、彼らはなぜシラノ-5やロザリオ・テンの中に隠れて何百年も大人しくしていたのだろうか? 何らかの取り決めがなければそんなことには耐えられないはずだ)

列の中央で守られながら考え事をしていた彼女は、隊列が止まったことに気づかず前にいた兵士にぶつかってしまった。前列に人が移動し、銃を構えた。

兵士たちの銃に取り付けられたライトが、銀色に輝く男の顔や胸を捉えていた。

それは女性ではなかった。姿かたちは男性そのもので、痩躯のアジア系の特徴を保っていた。

エンフォーサー「あなたがもうひとりのレイハントンですかな。自分はジムカーオ。随分と困ったことをしてくれるものです」

アイーダは兵士たちの前に進み出て、まだ撃つなと命令した。

アイーダ「あなたがキャピタル・ガード調査部のジムカーオ大佐なのですか?」

エンフォーサー「いかにも。といってももちろんこれはただの思念の入れ物の機械ですが。それよりあなた方は何をもって法王庁に逆らっているのですか? このままではフォトン・バッテリーも尽きるのではありませんか?」

アイーダ「あなたこそなぜ世界を宇宙世紀に戻そうというのですか? 目的はなんです?」

エンフォーサー「もちろん世界を元通りにすることです。そのためには人類が戦争を止め、ばら撒かれたままのヘルメスの薔薇の設計図を回収しなければなりません。そうでしょ?」

アイーダ「そうですけど、あなたは戦争を焚きつけているし、ヘルメスの薔薇の設計図は拡散してしまってすぐにどうこうできるものではないのです」

エンフォーサー「戦争を止めるというのはね、どんなに焚きつけられ、煽られても戦争を起こさないことであって、一時的に休戦することは戦争を止めることにはならないのですよ。自分は多くの人間に関与しましたが、誰もがみんな戦い、壊し、裏切ることを選んだ。目先の勝利を求めたわけです。だからこうなった。アメリアと休戦協定を結んだゴンドワンは、間もなく核施設を攻撃して、地域一帯を放射能汚染で穢してしまうでしょう。∀ガンダムの利用も、ターンXの利用も同じです。あなた方は破壊のためにしか利用しなかった。違いますか?」

アイーダ「違わないかもしれませんが、人間はそんな一足飛びには変われません。何をするにも時間は掛かりますが、だからといってあなたのように時間を宇宙世紀に戻すことは言語道断です!」

エンフォーサー「宇宙世紀といっても長いのですよ。それに、戦争というものを反省して人間の新しい時代を作り出そうという考えは、もう1000年も前に始まっているのです。それには大きく分けてふたつの考え方があります。ひとつは言語と宗教を統一して争いごとの種を摘み、アグテックのタブーを用いてイノベーションを抑制しつつ発展しようという考え方です。あなた方アメリアが革新を担い、キャピタルが保守を担いました。保守と革新が互いを牽制し合いながら、戦争なき発展を目指そうとしたのです。これは民政を前提にした発展方法です。もうひとつの方法は王政による統治方法です。優れた人間が、劣った人間を善導しながら社会を発展させていく方法もまた、平和への道であるのです。お判りですよね?」

アイーダ「わかります。わかりますけど・・・」

彼女はいまにも銃口を開きそうな兵士たちを必死に抑え込んだ。

エンフォーサー「対話を拒否するのならいますぐにでも撃ってもらって構わないのですが」

アイーダ「いえ、納得する話があるまでは撃たせません」

エンフォーサー「人類が民政と王政のいずれを選択するかは、1000年の猶予をもって決することになり、リギルド・センチュリーが始まったのです。この場合、王というのはあなた方レイハントンのことではありませんよ。覚醒したスペースノイドによる旧人類の支配体制が王政になります。つまり、ニュータイプこそが王であり、人類を善導する指導者になるのです」

アイーダ「ニュータイプ・・・」

エンフォーサー「優れたニュータイプは超越者です。人と人との断絶を超え、時間を超えます。あなたはミック・ジャックという方の残留思念と遭遇したはずです。あの方は力が弱かったが、強い力を持つ人もいるのです。そうした方々の支配の下で人類は平和を享受できると」

アイーダ「納得できませんね」

エンフォーサー「それはあなた方アメリア人が革新的役割を負ったからそう感じるのですね。では実際、民政的方針で世界に平和は訪れましたか? クンパ大佐がヘルメスの薔薇の設計図を流出させただけであなた方は何をしでかしましたか? 1000年の猶予はもう過ぎたのです。そもそも猶予は500年のはずだった。それをレイハントンが自らをニュータイプだと詐称してまでさらに500年延ばした。もうこれ以上は待てないのです。民政が失敗したなら、リギルド・センチュリーはこれでおしまいになります」

アイーダ「いや、待ってください。そもそもそんな取り決めが1000年も前になされた訳は?」

エンフォーサー「ずっと戦っていたのですよ。ジオンがサイド3の独立を宣言してから、途方もない時間、外宇宙にまで進出して、ずっと戦い続けてきたのです。そのふたつの両派が争い、殺し合ってきたのです。あなた方はわたしたちを宇宙世紀存続派であると見做しましたね? それは間違っていません。なぜなら、王政、つまりニュータイプが支配する新世界に、タブーは必要ないからです。宇宙世紀の技術を使っても、戦争は起きないのです。こんなことは最初から分かっていたことなのに、我々が遅れて地球圏に戻ってきたことをいいことに、レイハントンはさらに500年の猶予を勝手に作った。それでも人類の破滅を避けるために、500年の猶予を我々は受け入れた。その間にビーナス・グロゥブではムタチオンが酷くなってスペースノイドは過酷すぎる運命に晒されたのです。その間、アースノイドは何をやっていたというのか。・・・さて、もういいかな?」

ふいにジムカーオの姿をしたエンフォーサーは話を止めた。すると皮膚をナノマシンで覆ったアンドロイドは女性型へと戻った。

アイーダ「いますぐあれを破壊してください」

彼女の合図で一斉に銃弾が放たれ、エンフォーサーは火花に包まれてその場に崩れ落ちた。

アイーダ「撤退します。時間稼ぎをさせられただけでした」

シルヴァーシップの突撃部隊が船内を離れてすぐ、仕掛けた時限爆弾が起爆し、シルヴァーシップは炎に包まれた。ホバーに乗り移った隊員らは急ぎ国防省へと戻った。







∀ガンダムのコクピット内で失神していたロルッカ・ビスケスは、目が覚めると咄嗟にコントロールレバーを引いた。するとまるで反応しなかったはずの∀ガンダムに操縦できるようになっていた。眼下では激しい炎が巻き起こっていた。そして自分は海の上にいた。

ロルッカ「冗談じゃない。こんな危なっかしい機体に乗っていられるか!」

彼はコアファイターを分離して逃げようとした。コアファイターは無事に分離された。しめたと喜び勇んだ彼は、ゴンドワンのある北東に機首を向けた。その直後、彼の乗るコアファイターは見慣れないモビルスーツの銃撃を受けて炎に包まれた。

ロルッカ「なんでオレを撃つんだ? オレは何も悪くないじゃないか。ただ武器を売っていただけだ。みんなが欲しがるから売ったんじゃないか! こんなのおかしいだろ? なぜ・・・」

ロルッカを乗せた∀ガンダムのコアファイターは空中で爆発して四散した。

それを見ていたハリー・オードは、コアファイターが分離されてなお∀ガンダムが動き続けることに驚いていた。

ハリー「全機、あのホワイトドールは以前戦ったものとはまったく違う。何らかの改造が成されているはずだ。まったく別の機体として・・・」

彼の左後方に陣取っていた銀色のスモーが突然炎を上げて墜落した。

ハリー「どこから攻めてくる? 下かッ!」

シルヴァーシップの大爆発の炎の中から、YG-201が飛び出てきてスモーを攻撃し始めた。ディアナ親衛隊のスモーは∀ガンダムと10機のYG-201に挟撃される形となった。

ハリー「いかん、ここは撤退する。各機、散開ッ!」

バラバラに攻撃をかわしながら逃げ惑うスモーをよそに、∀ガンダムと10機のYG-201は一塊となってディアナ親衛隊と対峙したが、すぐに方向を変えて南へ向かって飛び去っていった。

親衛隊A「追いかけますか?」

ハリー「いや、アイーダに報告することもある。ここは撤退だ。(通信を切り替え)アイーダ総監、聞こえるか。ホワイトドール・・・∀ガンダムが南へ向かった。YG-201というのも一緒だ。南には何があるのか?」

アイーダ「ハリー・オード? 南には・・・キャピタル・タワーがあります!」







ゴンドワン正規軍の爆撃機は、キャピタル・テリトリィを絨毯爆撃したものと同じ機体であった。

落陽前に出撃した彼らはそのまま北方を目指して飛んだ。眼下に見下ろすかつて首都だった場所には明かりひとつなく、墨で塗りつぶしたかのように真っ暗になっている。その様子を目にしたゴンドワンの兵士から、躊躇いというものが消えてなくなっていった。

彼らは闇の中を飛行し、クンタラ支配地域に向けて飛行中であった。そこはかつて自分たちの国であった。そこにクンタラが流入してきて彼らの土地を奪い去っていた。

すでに街が放棄されて住民が流民になっていたことは彼らには関係がなかった。土地が奪われた事実だけが重要だったのだ。兵士たちにとってクンタラ国建国戦線は、ゴンドワンがアメリアとの戦争に全精力を上げているときに狡猾に土地を奪った赦されざる者たちであった。

アメリアとの休戦協定もしくは和平協定がほぼ確定となったとき、ゴンドワン政府が真っ先に考えたことは奪われた土地の奪還であった。これは当然のことだったかもしれない。

戦場となったゴンドワンの首都と違い、クンタラ国建国戦線が支配する地域には煌々と明かりが灯っていた。それは宇宙世紀時代の原子炉を再利用したエネルギーだと彼らは聞いている。だが、原子炉の知識は彼らにはまったくない。アグテックのタブーに触れるものだとの認識しかなかったのである。

それもまた、熱心なスコード教徒の多い彼らには赦せないことであった。

遥か下方から対空射撃が行われ、闇夜にオレンジ色の光の粒が綺麗に浮かび上がった。だがそれらは爆撃機の高度までは届かなかった。目的地に達した彼らは、爆弾を次々に投下していった。巨大な炎が周囲を明るく照らした。爆弾が破裂するたびに街の借りが消えていった。

そして、投下した爆弾がかつて体育館だった場所に落ちると、しばらく間があってからとてつもなく大きな光球がその場所にいくつもできた。爆撃機は光球をともなった爆発が巻き起こした爆風によってコントロールを失いそうになったほどだった。

宇宙世紀時代の古びた原子炉が、連鎖的に爆発して周囲一帯の建物を吹き飛ばし、飛び散った炎が山々に火をつけていった。原子炉の恩恵によって真昼のように明るかった街は、核爆発の炎によってさらに激しく、昼間のように輝いた。

爆撃機は炎が燃え広がるのを確認すると、大きく右に旋回して南部地域へと引き返していった。

爆撃機の両翼と尾翼に灯るライトを、ミラジ・バルバロスはずっと見ていた気がした。だがそれが本当の記憶なのかどうか確認するすべは彼にはなかった。焼けただれて骸骨に溶けた肉が張り付いているだけの彼は、動かない瞳を空に向けるしかなかったのだ。

ロルッカ・ビスケスがアメリア近くの海上で撃墜されて死んだ時間と大差なく、ミラジ・バルバロスは核爆発に巻き込まれて死んだ。

レイハントン家を裏切り、武器商人となって利益を上げてきた彼らは、自分たちが仕えてきた王家がどんなものか知ることなく死んでいった。

クンタラ国建国戦線の中心都市は、一夜にして消滅した。

生き残った者は南を目指して夜を徹し徒歩で移動していた。そんな彼らの目の前に迫って来たのは、ゴンドワンの地上軍であった。アメリアのノルマンディ上陸を警戒して南部に張り付いていた陸軍が、必死の行軍で北方地帯目指して駆け上がってきていたのだ。

明け方近く、核爆発の災害を逃れてきたクンタラたちに、最初の砲撃が加えられた。

安住の地カーバを目指し、夢に溢れてやってきた保守派のクンタラたちは、自分たちが砂塵に帰したゴンドワンの首都に辿り着く前に、一方的に虐殺されていった。

その行為を懺悔するゴンドワン兵は皆無であった。


(ED)

誤字・変換ミスが多くてすみませんねー。


この続きはvol:70で。次回もよろしく。



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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:68(Gレコ2次創作 第24話・前半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第24話「砂塵に帰す」前半



(OP)


クリムから接収した∀ガンダムは、その機構解析のために封印されたまま横たわっていた。

解析作業はジット団委ねられ、キャピタル地域での戦闘に参加した彼らの帰国を待って行われることになっていた。シートを被せられた機体に興味を示す者はなかった。

そこにやって来たのはNYでキャバレーを経営するカリル・カシスと逮捕されたはずのロルッカ・ビスケスであった。

カリル「この借りは必ず返してもらいますからね」

周囲を見回したカリルはロルッカを∀ガンダムが横たわるジット団の工場へと案内した。工場といってももとは海沿いの廃倉庫だった場所を使っているだけであったが。

ロルッカは真っ赤な顔で憤慨していた。

ロルッカ「信じられん。姫さまがオレを逮捕させたというのか? ずっとレイハントン家に仕えてきて、レイハントンさまがノウトゥ・ドレットに殺された後もレジスタンスとして頑張って、ずっと坊ちゃまと姫さまを探し続けてきたこのオレを、逮捕させた・・・」

カリル「何があったのかはあたしゃ知らないけどさ、そりゃ武器の密売をやってりゃ危ない橋を渡ってるとわかりそうなもんだけどねぇ。とにかくルインに頼まれてなけりゃあたしだってこんな危険な真似はしないんだ。それからあんたが貯め込んでた金はきれいさっぱり使っちまったからね。怒るなよ。あんたを釈放させるのにどれだけ賄賂が必要だったと思ってるんだい。いいからそれに乗ってゴンドワンでもどこでも行っちまいな」

ロルッカ「これはルインが乗っていたモビルスーツじゃないか。なんでこんなものがここに・・・」

カリル「(周囲を気にしながら)さぁね。とにかく死にたくないならさっさと逃げるんだね。もうあたしは帰らせてもらうよ。こんなところ誰かに見られちゃあたしまで破滅しちまう」

何か言いたげなロルッカをそのまま残して、カリル・カシスは立ち去った。不満顔のロルッカだったが、レイハントン家に見捨てられたショックは大きく、最後には力なく∀ガンダムのシートを外してコクピットに乗り込んだ。

∀ガンダムはジムカーオ大佐の指示の下で発掘され、いったんキャピタルの南にある国境沿いの軍事基地跡地に運ばれた。騙されてホズ12番艦に乗せられたジット団のメンバーが、コクピットだけをユニバーサル・スタンダードに換装させている。認証も新規登録するだけにセットされていた。

ロルッカはコクピットに座って計器類を確かめた。

ロルッカ「これなら動かせそうではあるが・・・。こんな宇宙世紀時代のポンコツでゴンドワンまで逃げて、またあのチンピラみたいなクンタラの連中と顔を合わすなんてオレにはできない。どうする? やはり姫さまを頼って許してもらうか? いや待て。オレは法王庁の仕事を請け負っただけだ。武器の横流しをしていたわけじゃない。全世界に売り歩けと命令されたんだ。そもそも不当逮捕なのだ。謝る必要などないはずだ。だが、裁判は怖い。地球人に裁かれるなんてまっぴらだ」

彼はコクピットに座ったまま大きく溜息をついた。しばらく彼は考え、やがて決心した。

ロルッカ「とりあえずミラジと合流するか。これは何かの行き違いなのだ。ミラジに取りなしてもらうように頼むしかない。姫さまだってきっとわかってくれる。これは間違いなんだ」

彼は機体を立ち上がらせた。目立つことをしたくなかった彼はそのまま歩かせて海へ出て、大西洋を渡るつもりでいた。コンソールにはゴンドワンまでの飛行ルートが表示され、自動操縦にセットすることもできそうだった。

ロルッカ「これならなんとか」

彼が安心したときだった。∀ガンダムは突如自動操縦に切り替わり、倉庫の天井を突き破って一気に200mほど上昇した。シートベルトをしていなかったロルッカは天井でしこたま頭を打って力なく崩れ落ちた。∀ガンダムはさらに高度を上げた。

そして下に広がる街を見下ろし、何かの解析を始めたのだった。その行為はノレドがG-ルシファーでビーナス・グロゥブの薔薇のキューブの内部を破壊したときと同じであった。

驚いたロルッカは必死にコントロールを取り戻そうとしたが無理であった。コアファイターだけでも切り離そうとしたがこれもできなかった。どこをどう触ってもまるでいうことを聞かず、まるで機体そのものに意思でもあるかのようだった。

彼は痛む頭を押さえながら、シートベルトだけをして、こんなときに地球は便利だとノーマルスーツの必要がないことを感謝した。∀ガンダムはさらに上昇して1番高いビルを見下ろすほどに達すると、ぐるっと回って周囲にあるものを解析していった。

∀ガンダムは、破壊すべき文明の痕跡を探していたのだ。

陽光を浴びて白く禍々しく輝く機体は、やがて計算が終わると大きく両腕を天に掲げ、その姿勢のまま地面に対して水平になると、光の粒子のようなものを撒き散らし始めた。驚くことに、それに触れたものは一瞬で消え去った。そして後には砂塵だけが舞ったのである。

ロルッカ「こ、これは・・・。これはダメだ。誰がこんなことを考えた? ああ、街が消えていく・・・。だ、誰かこれを止めてくれぇ」







ゴンドワンの特使はアメリア大統領ズッキーニ・ニッキーニには会おうともせず、直接アイーダの元を訪ねてきた。アメリア軍総監執務室に通された特使は、すぐさま戦争の終結とクンタラ国建国戦線を共同で駆逐できないかと相談を持ち掛けてきた。

アメリアとゴンドワンはクリムトン・テリトリィという名称を認めないことで一致。ただし法王庁への対応では意見が分かれた。クンタラ建国戦線に備蓄分のフォトン・バッテリーを強奪された彼らは法王庁にすがればバッテリーの供給が許されるかのような甘い考えを持っていた。

アイーダはトワサンガで起こったことを手短に説明したのだが、そもそもトワサンガについて大した知識のない彼らには事情が複雑すぎて理解が及ばないだけでなく、法王庁の発表がアメリアの立場を弱めていると勘違いしており、彼らはいまこそアメリアに恩を売るときだとすら考えてやって来ていた。

アイーダ「法王庁にとりなすとのことですが、ご説明したように法王庁そのものと戦っているのです。キャピタルの住民は法王庁から自分たちの土地を取り戻さねばならないわけです」

特使「いえ、待ってください。法王庁と戦うとおっしゃるが、それではフォトン・バッテリーは永久に供給されないのでは?」

アイーダ「みなさまもご覧になったように、ビーナス・グロゥブのクレッセント・シップとフルムーン・シップは彼の地の総裁より直接預かるよう我々が承っており、トワサンガについても、発表は伏せておりましたが、王家の正統な血筋はベルリ・ゼナムという若者にあるのです。わたくしもそうです。トワサンガとビーナス・グロゥブの考え方は一致しておりますが、それを邪魔している者がおり、現在それらと宇宙で交戦中なのです」

特使「法王庁の発表を認めながら、非はないとおっしゃるのですか? 呆れた人だ」

アイーダは何かを言いかけたが、それは口にせず特使をホテルに送り返した。結局会談は何も決まらないまま終わった。

レイビオ「ゴンドワンの特使と組んでクンタラ国建国戦線と戦うのは国内のクンタラへの立場上慎まれた方が良いので、交渉決裂はやむを得ないかと」

アイーダ「(背もたれに深く沈み)そうですね。それにしてもたかがテロ組織に国の半分以上を取られるというのは一体どんな魔法を使ったというのでしょう? ゴンドワンの国内情勢についてもっと聞き出せればよかったのですが・・・」

レイビオ「こちらの調べで、ゴンドワンにおけるクンタラ指導者はルイン・リーという人物だと判明しております。もとキャピタル・アーミー所属、別名マスク。現在は法王庁からキャピタル・テリトリィの領主に任命されています」

アイーダ「マスクのことならよく知っています。薔薇のキューブのジムカーオという人物は、法王庁とクンタラを上手く使って現在の状況を作り出したようです。それにクリムですね。野心のある者が騙され、彼に利用されている。そして悪いのは全部わたしと弟になすりつけている。狡猾な男です」

レイビオ「(用紙を手渡し)ゴンドワンとキャピタルのフォトン・バッテリーが尽きかけているのは確かなようです。ゴンドワンにはもう侵略してくる余力はないでしょう。姫さまのお話では、支援しているキャピタルのレジスタンスもすべてこちら側とか。それが本当なら、アメリアは安泰です。ただし、議会は困難ですぞ」

セルビィ「議会対策についていくつか方向性をまとめてありますが、クリム・ニックの生存をどう使って・・・」

そこまで話したところで、ドアをノックする音が響いて会話は中断された。

アイーダ「お入りなさい。何事ですか?」

飛び込んできた男の報告を聞いたアイーダは、慌てて執務室の窓を開けた。すると青空を背にした1機のモビルスーツが上空に浮かんでいるのが見えた。

そのモビルスーツは七色に輝く何かを撒き散らした。するとその下にあった建物が跡形もなく消え去ったように見えた。まるで夢でも見ているかのようだった。とても美しい光景であるのに、それは紛れもなく破壊行為なのだった。

アイーダの目の前で街がどんどん消えていった。ビル群は跡形もなく消え去り、道路には砂塵が舞い降りた。緑の区画はそのままで、人工物だけが消え去っていく。

白昼に輝く虹の粒子が、街を砂漠に変えようとしていた。

アイーダ「すぐに全軍の召集! 警報を鳴らして! 警察を動員して市民を地下に避難させてください!」








ゴンドワン正規軍はアメリアとの大陸間戦争を諦め、残存兵力すべてをクンタラ狩りに投入する決定をした。

彼らが愛してやまなかった首都はすでになく、そこには砂に覆われた荒涼とした光景だけが残っていた。しかし公園や小さな森などはそのまま残っており、雨が降り積もった砂を川へ流せば復興できそうだとの情報がもたらされている。ゴンドワン政府はこれにすがった。

フォトン・バッテリーの備蓄はクンタラ国建国戦線に奪われほとんど残っていなかったものの、イザネル大陸政府との間にソーラーパネル供給と引き換えにフォトン・バッテリーを譲り受ける契約が成立して当座はしのげる見込みがついていた。季節が夏であることも幸いした。

今回の作戦は、イザネル大陸から提供されたエネルギーの3分の1を消費する大規模な戦闘が予定されており、人口規模でゴンドワン市民と匹敵するほど膨れ上がったクンタラたちを殲滅することが目的であった。元来クンタラ差別が根強い地域だけに、兵士たちはいきり立っていた。

作戦指揮官はクンタラ国建国戦線にモビルスーツが不足していることをすでに確認しており、最初の攻撃は大規模な空爆を予定していた。問題は北方地域の広範囲に拡がった占領区域のどこを攻撃するかであった。人口の多い地域を狙うとの意見に対し、ひとつの有力な案が提示されていた。

司令官「では連中はこの小さな町を最初に占領したというのだな。周辺の森の木はほとんど切り倒されているのに彼らは難なく冬を越して南進してきたと」

諜報員「当時まだフォトン・バッテリーは奪われておらず、彼らも流民が放棄した街をただ占拠しただけだったようです。ところが木もないのに彼らは冬を越した。そこで調べてみたところ、キャピタル・ガードに提供していたホズ12番艦がこちらに戻って、クンタラに使われている。しかもキャピタルから多くの大型船舶がやって来て、彼らの支配地域に巨大な何かを運んでいるのです。専門家の分析では原子炉ではないかと」

司令官「原子炉などアグテックのタブーに触れるではないか。そんなものを連中が組み立てたとでもいうのか?」

諜報員「おそらく発掘品でしょう。宇宙世紀初期からトリウム原子炉を始め様々な原子炉がMSに搭載されていたので、それを掘り起こして運んだのです。幸いゴンドワンにはあまり埋まっておりませんが、キャピタルやアメリアにはかなり多くありますから。そこを叩けば、周辺地域のクンタラたちはもう冬を越せません。防衛戦を張って、北方に封じ込めるのです」

司令官「だが原子炉を叩くのは・・・」

諜報員「無論ご決断は閣下にお任せいたしますが、入植してきたクンタラの数は膨大で、彼らひとりひとりを叩いている余裕はないかと思われます。大量破壊兵器がない現状・・・」








たった1機のモビルスーツにまるで歯が立たないことにアメリア軍は焦りの色を濃くしていた。

NY上空に突如出現した白いモビルスーツを撃墜するため、国境守備隊から正規軍まで動員されながら、ことごとく蹴散らされるばかりか兵器が一瞬で砂に変えられる恐怖は指揮系統を散々に乱して余りあった。空に輝く太陽は、もうもうと立ち込める砂塵に黄色く歪んでいた。

アメリア軍総監アイーダ・スルガンは、近接戦闘を諦めてロングレンジからの砲撃と戦闘機によるミサイル攻撃に作戦を切り替え、戦艦出撃の準備を急ぐように指示していた。

しかし、どれほど火力を集中させようとも、∀ガンダムはびくともしなかったのである。

攻撃を続ける意味は、砲火に晒されている間は虹色の粒を放出しないためであった。少しでも攻撃の手を緩めると、∀ガンダムはすぐさま態勢を整えて都市を破壊し尽くすように虹色の粒を撒き散らすのだった。アイーダはムーンレイスの基地で耳にしたG-ルシファーの機能を思い出していた。

アイーダ(ノレドさんがビーナス・グロゥブの薔薇のキューブを攻撃したときは、エンフォーサーユニットというものが暴走したからだと言っていた。しかしあれはクリムが普通に操縦していた機体だ。宇宙世紀時代のものかもしれないけど、エンフォーサーユニットとは違うもののはずだが・・・)

アイーダはアメリア軍総監執務室を離れてはいなかった。彼女は屋上へ出て、ミサイルやグリモアの射撃を受けるたびに燃え上がり、もうもうと煙を上げる∀ガンダムを眺めていた。昼過ぎから始まった戦闘は長引き、太陽は西の空に落ちようとしていた。

男性秘書「姫さま! 早く避難を!」

建物のすぐ近くでミサイルが誤爆した。爆風がアイーダの髪を大きく乱した。

女性秘書「姫さま!」

アイーダ「(サッと踵を返し)クリムから接収したシルヴァーシップを調査します。20名ほどの特殊部隊を組織するよう命じてください。それからすぐエル・カインド艦長にクレッセント・シップとフルムーン・シップを大西洋上へ避難させるようにと。至急です」







ジャングルの中の作戦本部に鎮座するケルベスの下に、助っ人としてジット団とミラーシェードという人物がやってきた。ミラーシェードは、変装したクリム・ニックであった。ケルベスにはすぐに分かった。問題は彼に恨みを持つレジスタンスのメンバーに見つかった場合であった。

ケルベスは夕闇のジャングルの中にクリムを誘い、ふたりきりで話をした。トワサンガで薔薇のキューブを見ることになったケルベスには、クリムに対する悪感情はなくなっている。彼もまたジムカーオ大佐に利用されただけの哀れな人間だと知っているからだ。しかも、ミック・ジャックも失っている。

ケルベス「そこでだ、天才を見込んで頼みがある」

クリム「なんだ?」

ケルベス「君がゴンドワンから連れてきた若者たちだが、あの子らはまだ君を信奉しているのだろう? もしそうなら、彼らを説得してこっちの味方につけてもらいたい。クリムもあの子らも、もうゴンドワンには戻れない。だとしたら、宇宙移民を考えてはくれまいか?」

クリム「ああ、その話か」

ケルベス「そうだ。これはベルリの発案なのだが、スペースノイドとアースノイドの決定的な違いは労働に関する価値観の問題だ。壁1枚隔てた向こう側が真空の宇宙に住むスペースノイドは、労働について非常に厳しい価値観をもって生きている。だからこそ、だらけた地球人が我慢できない。逆にアースノイドはスペースノイドの厳しい労働倫理をいつまで経っても理解しない。ここにスペースノイドとアースノイドの決定的な違いがある。そこで、ベルリは人々に一定期間宇宙で暮らすことを義務付けられないか検討しているんだ。宇宙まで行けなくても、キャピタル・タワーで訓練するだけでも全然違う。これは君が考えた地球人の幸福とは違うかもしれないが、ひとつの幸福の形になり得るものなんだ。オレは今回の問題に巻き込まれたゴンドワンの若者と、クンタラの若者をなんとかこのプログラムに参加させたいと願っている。手伝ってはくれまいか」

クリム「その話はアイーダから聞かされている。だが、ケルベス中尉殿はオレが単独行動を取ることになっても平気なのか? オレをまだ信じるのか?」

ケルベス「信じるさ。人間だからな。オレがキャピタル・ガードの教官になったのは、初めて宇宙空間に出たときの感動と緊張を子供たちに教えてやりたかったからなんだ。クラウンの守備隊というのは、アースノイドとして唯一宇宙を体験できる職業だった。宇宙に出て、地球にいたときのようにふざけては生きられないということを知ったとき、オレの中で何かが変わった。大人になった気がしたんだ。だから、ベルリの話を聞いたとき、それは人間が変われるチャンスを得る話だと思った。いままではそれをキャピタルの人間が独占していたが、誰もが体験できるならば、本当に大陸間戦争なんて起きただろうかと。宇宙世紀という時代を我々は悪しき黒歴史として教え込まれるが、新しい時代を宇宙世紀と名づけた人間たちはオレが宇宙に出たときの感動と同じものを感じて、それで宇宙世紀と名づけたんじゃないのか? 宇宙世紀は、希望の名前だったはずだ。だが、アースノイドとスペースノイドは立場が固定されて意識の違いが埋められぬまま戦争を繰り返し、やがて生じた大きな利権が戦争の継続を人類に押し付けてきた。宇宙世紀は人の数が多すぎた。エネルギーが、資源が、過剰になっていた。しかし、いまの時代はどうだろう? 宇宙世紀を本当に繰り返せるのだろうか? いまの地球の人口で、資源の量で、それは可能だろうか? 誰もが必ず宇宙で労働の義務を果たす世界は、何かが変わるとは思わないか? 人が初めて宇宙に飛び出したときの感動を、オレは教師として子供たちに伝える仕事を続けていく。君はゴンドワンのやさぐれた若者たちを、宇宙に導いて欲しいんだ」

クリムは神妙な顔でケルベスの話を聞き、瞬き始めた夜空の星を見上げた。

クリム「ずいぶん感傷的な幸福論だが、そうか、子供たちを宇宙で働かせる時代を作ろうというのか。リギルドセンチュリーにそれはふさわしいことなのかもしれない。そうだな、モビルスーツで遊んでいる場合じゃなかったのかもしれん・・・」

ケルベス「そこでだ。まずはキャピタル・タワーを奪還しないことには始まらん。テリトリィ内にいるゴンドワンの若者たちについては君に任せる。オレたちはクンタラの連中をどうにかするつもりだ。法王庁にはまだ何もしないでくれ。あいつらは攻撃を利用する連中だからな」

クリム「了解した。では先にヘカテーで街へ潜入させてもらう」







暗室のように真っ暗な部屋で、ジムカーオは目覚めた。ビーナス・グロゥブで生まれ、長く地球圏で暮らしてきた彼はにとって漆黒は懐かしい故郷であった。しかし、暗闇の中に引きこもってばかりもいられない。身支度を整えた彼は部屋を後にした。

トワサンガから解放された薔薇のキューブには、2万人の乗員が暮らしていた。地球圏へ最も遅く戻ってきた「今来」である彼らは、ムーンレイスの次に早く戻ってきた「古来」であるレイハントン家と激しく対立した人々の末裔であった。

ジムカーオ「人と人の間にある断絶を乗り越えること、生と死の間の断絶を乗り越えること、これらにおいて我々より進んだ人類などいるはずがないのだ。最も長く外宇宙で暮らした我々が辿り着いた世界以上に完成されたものなどあるはずがない」

彼の拡張された感覚器官はエンフォーサーと繋がり、同時にシルヴァーシップと繋がっていた。シルヴァーシップの全機能が彼の感覚であった。そしてすべての艦艇、その操縦者であるエンフォーサーの間に垣根はなく、感覚で繋がっていた。

シルヴァーシップやエンフォーサーは、彼の眼であり耳であり手足だった。

ジムカーオ「ではそろそろ行くとするか。我々執行者を止められる奇蹟があるというのなら、ぜひ見せていただきたいものだよ、レイハントンの坊や」

彼は手を振り、全軍の地球への前進を命じた。

シルヴァーシップと薔薇のキューブは、静かに青い地球目指して動き始めた。


(アイキャッチ)


この続きはvol:69で。次回もよろしく。



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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:67(Gレコ2次創作 第23話・後半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第23話「王政の理屈」後半



(アイキャッチ)


ゲル法王を前にして少しだけ緊張したハッパは、エンフォーサーについて話し始めた。

ハッパ「エンフォーサーというのは自立運動式の連動型人工知能で動くアンドロイドのことですが、その実態は拡張型サイコミュなんです。サイコミュはニュータイプ現象を増幅する装置ですが、エンフォーサーのものは人間の感覚器官の強化とは違った方向性のもので、残留思念を捕まえて増幅するものなんです。いわば人間の霊魂を取り込んで増幅させて実体化できる装置とでも言ったらいいでしょうか。つまり人間の意思情報が思念体として存在していることを前提としています」

話にラライヤも加わった。

ラライヤ「トワサンガの住人ならばさわりくらいは知っているはずですけど、ニュータイプは稀に起こる人間の感覚機能の拡張現象です。でもハッパさん、思念体、残留思念となるともはやオカルトの話になってしまう。人間の思念なんて死んだら消えるものじゃないですか?」

ハッパ「だから不思議なんだ。エンフォーサーはサイコミュだからニュータイプのアンドロイドじゃない。いわば空っぽ。何かがその中に入ることを前提にしている。ベルリが取り込まれそうになったのはそのためだ。そんなものがたくさんある。ぼくとノレドはG-ルシファーで薔薇のキューブに潜入してきたけど、シルヴァーシップはおそらくエンフォーサーで動かしている。連動型人工知能だからエンフォーサーが1台いれば船は動かせるし、エンフォーサー同士で連動させれば艦隊行動さえさせられるはずなんだ。エンフォーサーはニュータイプみたいなものだから、ミノフスキー粒子も関係ない」

ノレド「そこでメガファウナからこれを持ってきたんだよ」

ノレドは大きめのバッグのチャックを開けた。なかから取り出したのは、彼女がビーナス・グロゥブから持ち帰ったエンフォーサーの頭部だけであった。それを見たウィルミットは気味悪がってのけぞった。銀色の女性型の頭部には頸椎のところに通電させるための変圧器が簡易的につけられていた。

ハッパは鞄の中から取り出した他の部品を組み合わせ始めた。

ハッパ「手足があると何があるかわからないから、頭だけ完全に動くようにして、その下はサイコミュの最低限のパーツだけを組むことにします」

ラライヤ「(ハッパに部品を手渡しながら)わたし、ジムカーオに実験台にさせられそうになって、そのときに身体の中に誰かの残留思念が入っていると言われたんです。もしそうなら、その人物がこのエンフォーサーの中に入るかもしれない。もしそうならなくても、冬の宮殿にはたくさんの残留思念がいそうでしょ? だからここで実験しようって」

ウィルミットはオロオロしながらエンフォーサーの頭部とゲル法王の顔を交互に見比べた。

ウィルミット「みなさん忘れているかもしれませんが、それはアグテックのタブーもいいところで」

ゲル法王「いえ、神学者としてはとても興味深い実験です。人の残留思念などというものがあって、それが場に引き寄せられるというなら、その証拠をこの目で見たいという気持ちはあります」

ノレド「あたし(ハッパの作業を手伝いながら)G-ルシファーでビーナス・グロゥブの薔薇のキューブを攻撃しちゃったとき、もしかしたらラライヤの中にいた人が戦争はいけないって気持ちでエンフォーサーに入って攻撃したかもって思ってるんだけど・・・」

ハッパ「(組み立て作業を続けながら)もしそうなら、ラライヤの身体の中にいるニュータイプの残留思念は生前よほど強い能力を持っていたんだろう。残留思念なんてものがあるのかどうかはともかく、仕組みを見る限りそんなに長くは留めておけないはずだし、あっちこっち出たり入ったりできるならほとんどそれは幽霊みたいなものだ。G-ルシファーとG-セルフは座席がサイコミュシステムだから・・・。いや、待てよ。ラライヤの中に入ったり、サイコミュの中に入ったりしててもおかしくはないか・・・」

ラライヤ「実験していたとき、何かが中に入ってきた感じがあって、すごい覚醒感があったんです」

ノレド「確かにラライヤの様子はおかしかったよね?(ハッパに同意を求める)」

ハッパ「その人物がもしこのエンフォーサーの中に入ってくれたら、貴重な情報を聞き出せるかもしれないし、みなさんの研究の役にも立つかもしれない。じゃ、電気を通しますよ。ラライヤは中の人にこちらに入ってくれるようにお願いして。それから何かが身体から出る感覚があったらあとで教えてよ。いいかい、行くよ!」

ハッパはケーブルから引いた電極を変圧器に差し込んだ。

ラライヤ「(両手を前に突き出して力を入れる)ふん!」

電気が通ったことで、エンフォーサーの頭部は再起動状態となり、機能の回復にはしばらく時間が掛かった。何か思念を押し出すように両手を構えたラライヤは、そのままじっと動かずエンフォーサーに変化が起きるのを待った。1分ほど経つと、徐々にエンフォーサーが動き始めた。

ウィルミット「え?」

女性型ということ以外特徴のなかったエンフォーサーの顔つきが少しずつ変化を始めた。銀色の皮膚に見える表面がゆっくりと動き、何かの形になろうとする。

ハッパ「ナノマシンだ! うおおおおおおお!」

眼鏡をかけ直したハッパは小さな眼を限界まで拡げてその変化を目に焼き付けようとした。そのときだった。リリンが大きな声で突然泣き始めた。

リリン「パパ!」

エンフォーサーは男性の顔に変化した。その場にいる者の中でその人物を知っているのはリリンだけであった。エンフォーサーはリリンの父親の顔に変化したのである。

ゲル法王「(興奮した口調で)守護霊です。お父さまがリリンさんの守護霊になっていたんです」

ノレド「(唖然とした表情で)守護・・・霊」

リリンの父親の残留思念はかなり弱く、リリンに何かを語りかけようとしながらも、自分の顔の形を保つことさえおぼつかなく、その声は誰にも聞こえなかった。ただリリンだけがエンフォーサーの顔に抱き着きわんわんと泣き叫んでいる。

そんなリリンの姿を眩いばかりの強い光が照らした。ノレドやハッパ、ゲル法王とウィルミットも、光が差す方向に眼をやって仰天した。両手を突き出していたラライヤがその手を大きく包み込むように天に掲げ、身体から強い光を放っていたのである。

ラライヤの身体にはもうひとりの少女の姿が重なっていた。その少女はラライヤによく似た緑色の瞳を持つ美しい少女で、ラライヤの肉体を操っているように見えた。ラライヤとその少女が放つ光によって、冬の宮殿全体が神々しい光に包まれた。

彼女の目の前に、微かではあるがリリンの父親が立っていた。

リリンの父「娘がムタチオンに犯されないうちに地球へ連れて行きたくて、自分はガヴァン隊長と行動を共にしました。しかし力及ばず願いを叶えることはできませんでした。どうかみなさま、娘を地球に住まわせてあげてください。リリン、ふがいない父さんでごめんね。愛しているよ、ずっとずっと」

リリン「パパ! パパ!」

リリンの父親の姿は不意に消えてしまった。当たりに焦げ臭いにおいが充満して、ラライヤが放っていた光も消え、彼女はその場に崩れ落ちた。

ハッパ「いかん、サイコミュが焼けてしまった。(エンフォーサーの頭部の中を覗き込み)ああ、もうこれはダメだ。回路が全部ダメになった」

ゲル法王はウィルミットの袖を引いて何事か耳打ちをした。それを聞いて頷いたウィルミットがラライヤに駆け寄り、気を失った彼女の体をゆすった。

ノレドは泣き止まないリリンを強く抱きしめて自分も涙をボロボロとこぼした。

ノレド「リリンちゃん、あたしの家に連れて行きたいけど、あたしの両親も戦争で家が壊されて、いまどこにいるかわからないんだよ。なんでクリムはキャピタル・テリトリィを爆撃なんかしたんだ? なんでベルリはリリンちゃんのパパを殺さなきゃいけなかったんだ? なんでみんなこんなことしてるんだよ! 誰か教えてくれよ!」

そう叫んで、ノレドはリリンと共に大粒の涙をこぼし続けた。

その傍らに立ったゲル法王は、ラライヤがそうしていたように両手を広げて天にかざし、誓うようにこう言った。

ゲル法王「天の奇蹟は確かにあった。スコード教の原点なるものは、確かに存在している! 天にいらっしゃるラ・グー総裁! わたくしはいまあなたがおっしゃった宗教改革の意味を理解しました。わたくしは一命を賭して必ずやあなたの期待に応えてみせましょう!」





ルイン「ベルリを殺して何もかもを終わらせたい」

ザンクト・ポルトからカシーバ・ミコシに乗り込んだルイン・リーは、整列した元マスク部隊の面々に向けてそう訓示した。彼らは宇宙での戦闘経験を買われてジムカーオ直属となり、キャピタル・アーミーの解散に合わせて今回のクーデター計画の実行を担ってきた者たちであった。

正体を知られたルインはジムカーオと接触した際にこの計画を知らされ、自分はゴンドワン政府の瓦解を目指しながらいつか彼らと合流する日を待ち望んでいたのだ。

クンパ大佐の下で思うような結果が得られず、苦労を掛けたマスク部隊の面々の晴れやかな顔がルインには眩しく映った。

彼らはザンクト・ポルト最後の晩を飲み明かして過ごし、いまシラノ-5に向けて旅立とうとしている。

マスク部隊A「マニィさんとの間に女のお子さんがお生まれになったとか。おめでとうございます」

ルイン「ありがとう。いや、照れるな」

マスク部隊A「ルインさんもいまやキャピタル・テリトリィの領主。スコード教との歴史的和解が成立したのちにはシラノ-5の統治権も賜るとか。人類の敵レイハントンのベルリを叩いたのちは歴史上もっとも大きな権力を持つことになるのでは?」

ルイン「(シャンパンのグラスをテーブルの上に置き)いえ、ジムカーオ大佐のおっしゃっているのは、トワサンガと地球、とくにキャピタル・テリトリィまでが一体になっているとアピールしなければ、ビーナス・グロゥブからフォトン・バッテリーの供給再開の約束を取り付けられないということだと思うんです。いまは地球各地もバラバラ、トワサンガは王政も民政も機能していない、これではどう説明してもビーナス・グロゥブは説得できないと」

話し相手の男はニコニコ笑いながらもルインにそっと耳打ちした。

マスク部隊A「年はわたしの方が上だが、階級は君の方が上なんだから、敬語はいかんよ」

ルイン「自分はまだ領主だのには慣れておりませんので。しかし気をつけることにします」

クンタラたちはようやく巡ってきた我が世の春に浮かれ騒いでいた。地球の3大大国だったアメリア、ゴンドワン、キャピタル・テリトリィのうち、彼らは2つまで手に入れたのだ。もうひとつのアメリアは手に入れるまでもなくクンタラを差別しない実力主義の国である。彼らが喜び勇むのも無理はなかった。

ルインはもう少し年の若い話しやすそうな兵士を見つけて話しかけた。

ルイン「それで宇宙での首尾はどうだったのだ? 何もかも上手くいったのか?」

マスク部隊B「自分らはジムカーオ大佐の指示通りに動いただけです。トワサンガで苦労したのはガヴァン隊を追い出したときだけですか。あのときはすでに大佐が現地の人間を使って偽情報で誘導していたので、法王庁と自分らで叩き出すだけになっていました。ジムカーオ大佐というのは凄い人ですよ」

ルイン「確かに彼の計画は鮮やかというか、鮮やかすぎるというか・・・」

心配なのはその点だけであった。計画のすべてを立案し実行させたジムカーオ大佐は、たとえヘルメス財団の後押しと手引きがあったとしても侮れる相手ではなかった。それほど有能な人間が、自分を上に立たせずルインを押し立てて事を運ぼうと画策しているところがきな臭い点であった。

ルイン(クンパ大佐と同じビーナス・グロゥブの人間で、クンパ大佐と同じようにキャピタル・ガードの調査部に所属し、クンパ大佐とは違うことをやっている。これがどうも腑に落ちないのだ。クンパ大佐の目的を後で聞いたところでは、レコンギスタを演出することで人間同士を戦わせてスペースノイドの遺伝子を強化するというものだった。いわば戦わせること自体が目的だったのだ。しかし、ジムカーオ大佐は何かの決着に導こうとしているように見える。彼は結果が得られれば戦わす必要はないと思っている。だがその結果が一向に見えない)

ささやかなパーティーは解散し、カシーバ・ミコシはトワサンガに向けて動き出した。ルインの前には拘束具に全身を包まれたムーンレイスの捕虜2名が連れてこられた。

マスク部隊C「彼らが捕虜のムーンレイスです。名前はこちらがリック、こちらがコロン。ともにパイロットで、ディアナ親衛隊所属とのことです」

ルイン「拘束を一部解いてやれ。話が聞きたい」

兵士はリックとコロンの口を塞いでいた拘束を解いた。リックとコロンはカシーバ・ミコシに閉じ込められて連行されて以来、マスク部隊の尋問にも大人しく答えていたが、尋問する側にムーンレイスの知識がなく、話を聞いてもよくわからないことから独房に入れられたままになっていたのだ。

ルイン「わたしはキャピタル・テリトリィの領主ルイン・リーという者です。あなた方は古代種族のムーンレイスとのことですが、ムーンレイスのことを少し話していただきたいのです」

リック「あんたがここの責任者か? 1番偉いと思っていいのかな?」

ルイン「(苦笑しながら)立場上はそうなっています。しかし指揮を執っているのはジムカーオ大佐という人物ですが」

リック「だったら警告しておいてやるけど、レイハントンというのは怖ろしい人間で、生半可なことで勝てる相手じゃないからな。覚悟しておくことだ」

ルイン「(首を捻り)そのレイハントンというのは、ベルリ・ゼナムという少年のことか?」

リック「ベルリというのはあのホワイトドールの坊やだろう? 彼じゃない。彼の先祖のレイハントンだ。あいつは最も早く月に戻ってきた我々ムーンレイスから何もかも奪った男だ。クンタラなら今来、古来という言葉を知っているだろう? 最も早く月に戻ってきた我々が1番の古来、古株だ。ところがレイハントンは我々を月の内部に封じ込めてその文化を奪い、背乗りして自分が1番早く戻ってきたかのような顔をして外宇宙から戻ってきた人間たちの王に収まったのさ。本当ならば我々のディアナさまがそうなるはずだったのにな」

ルイン「わたしは地球で生まれ育った人間で、事情がよく呑み込めないのだが、それはいつのことなのだ?」

リック「たしか500年前とか言っていたな。そうだよな、コロン」

コロン「オレたちは500年間コールドスリープの中さ。お前にはわからないだろう? 500年前にレイハントンと戦った人間が目の前にいるんだぜ」

ルイン「500年前・・・、リギルド・センチュリー500年ごろのことか・・・」

リック「自分はアムロ・レイの生まれ変わりだとかぬかしてな、進化したニュータイプだから王になるのは自分しかいないのだと思い込んで、なんだか知らないが歴史の改編を始めたのさ。もっともオレたちは戦争で押されまくって、詳しいことは知らないけどな。アムロ・レイって誰だよって話で」

ルイン「アムロ・レイ・・・」

コロン「確かにヤツは怖ろしく強かったけどな。ベルリって坊やが同じくらい強いのかどうかはオレたちにはわからねぇが」

ルイン「しかしあなた方はそのレイハントン家と関係の深いアメリアと同盟を結んで法王庁にたてついたと聞いておりますが、これについて釈明はあるのですか?」

コロン「もともとオレたちはアメリアの人間なんだぜ。それでちゃんと条約でアメリアのサンベルト地帯に移住する約束になっていた。いろいろあってそれは叶わなかったが」

リック「レイハントン家の遺産を実質手に入れたのはジムカーオだぜ」

ルイン「(怪訝そうな口調で)そうなんですか?」

ルック「月の裏のコロニーはあいつが支配して、ベルリって坊やは入れてもらえなかったんだ。それでオレたちはコロニーをベルリの坊やに返すために戦ったのさ。あのベルリって坊やは、初代のようないけ好かない男じゃなかったしな」

コロン「月の裏の宙域だって元々はムーンレイスのものだ」

ルインは2人の話にウソはないと見抜いて、話題を変えた。

ルイン「わたしはシラノ-5に入り次第、何らかの交換条件を提示してあなた方を開放するつもりでおります。ところであなた方・・・ムーンレイスというのは、最終的にどうしたいと望んでいますか?」

リック「オレたちはディアナさまに従うだけだが、おそらくはアメリアに帰ることになるだろうな。もうそういう約束になっているかもしれない」

ルイン「まぁ、無駄な殺生をするつもりはありません」





キャピタル・テリトリィ周辺地区にはすべてのレジスタンス戦力が結集していた。彼らは全軍の指揮をケルベス・ヨーに委ねることを決め、勝手に兵を動かすことは固く禁じられた。

一方で法王庁はレジスタンス側が若者を無差別に殺し、女性に乱暴を働いたことを繰り返し非難していた。これについてはアメリア政府からもかなりきつい文言で警告が届いていた。もし今後同じことが起きた場合、レジスタンスへの支援を打ち切るとアイーダは告げてきたのだ。

世界の眼はレジスタンスへの非難に満ちていた。レジスタンスに参加していた人々は自分たちの正義を信じて疑わなかったために、彼らは酷く困惑した。ただ、どこの国家もフォトン・バッテリーが枯渇しつつあり、政治的なことより日常の心配の方が大きくなっていた。

アイーダが発表した「連帯のための新秩序」もクリムが発表した「闘争のための新世界秩序」も、事態の早期解決を約束した政治公約であったために、どの国も親身になってエネルギーの節約に取り組まなかったのは世界にとって誤算だった。

さらにクリムトン・テリトリィへの資金とエネルギーの供出が各国とも重しとなり、どこも経済が混乱し、治安も悪化してきていた。フォトン・バッテリーを供給してくれるのは法王庁とヘルメス財団であったために、どの国も法王庁に取り入ろうとする動きが活発化していた。

アメリアでは修正グシオンプランを支持する機運が高まり、エネルギーの自給なくして地球の真の独立はないと訴える勢力が議会を支配しつつあった。

そんななか、いまだに戦争を続けていたのがゴンドワンであった。

北方地区から中央地帯をクンタラ国建国戦線に実効支配されたゴンドワンは、南部に逃れた政府軍が反撃に出て、砂塵に帰したかつての首都跡地でクンタラ国建国戦線と激しく交戦していた。

政府軍にはエネルギーも戦力もほとんど残っておらず、戦いはクンタラ国建国戦線の有利のまま進んでいた。もし南部の政府軍が壊滅し、臨時政府が倒れることがあれば、ゴンドワンはクンタラのものになるというので、いまやアメリアに亡命したクンタラたちも戦いに加わり、ゴンドワン政府は風前の灯火となっていたのである。

しかし、彼らにも誤算はあった。ロルッカに手配を頼んでいたモビルスーツが届かなかったのである。それまでトワサンガ製のみならずゴンドワン製すら手配してくれていたロルッカからの荷物が届かなくなり、せっかくのフォトン・バッテリーが生かせない状態になりつつあった。

ミラジ「それをわたしに求められても困るんです」

ルインがいなくなったあと、彼の片腕として働いていたミラジは兵士たちから頼られることが多くなった。ロルッカへの手配も彼が行っていたために、モビルスーツが届かなくなった責任も彼に向けられる有様であった。

元々クンタラですらないミラジは、やはりルインについていくかアメリアへ渡っておけば良かったと激しく後悔していた。

クンタラ兵士A「ロルッカさんからの荷物もミラジさんが止めているって噂があるんですよね」

ミラジ「まさか。あいつはアメリアでオフィスを構えて派手にやっていたから、アイーダさんがクレッセント・シップとフルムーン・シップを引き連れて戻ってきたときに何かヘマをしでかしたんでしょう。とにかく誤解はよして欲しい。わたしは老人なんですよ」

クンタラ兵士B「もともと正規軍に対してモビルスーツが不足していたのに、予備のパーツも届かないんじゃいつまで優勢が保てるかわからない。何か打開策を考えていただかないと」

ゴンドワンに集まってきているクンタラたちはテロ活動も辞さない気の荒い若者が多く、トワサンガ育ちのミラジには手が余るものがあった。こんな連中を束ねていたのかと改めてルイン・リーという人間を評価した気にもなるというものであった。

ミラジ「YG-201については技術者と小さな工場でもあれば予備パーツを作らせることはできる。しかし、ゴンドワン製のルーン・カラシュについては本当にわからないもので・・・」

ミラジはなぜ自分がこんな若造に舐められなきゃいけないのかとウンザリしていた。ルインは年長であるミラジに感謝し、敬う気持ちがあったが、他の兵士たちにはそれがなかった。

しかも、それどころではないのである。

ミラジ「あなた方は押している押していると勇んでいらっしゃるが、追い詰められたゴンドワンはアメリアとも手を組むとルインさんもおっしゃっていたでしょう? どうして目の前の戦いばかりに夢中になって誰も大局を見ようとしないのか」

クンタラ兵士C「アメリアがゴンドワンと組んで戦力を割けば、ルインの兄貴がキャピタルから背後を襲う手はずになっている。それにアメリアもゴンドワンもいざとなれば戦争は止めて市民の日常生活にエネルギーを回さなきゃいけなくなる。こっちには原子炉もあれば核融合炉もあるのに、何の心配もいらない。欲しいのはゴンドワンから奪ったフォトン・バッテリーを使うためのモビルスーツなんだ」

男は机をドンと叩いて老人のミラジを恫喝した。ミラジが驚いて身をすくませると兵士たちはいっせいにどっと笑い声をあげた。

クンタラ兵士C「わかったかな、爺さん。なんとしてもロルッカさんと連絡を取ってモビルスーツを手に入れてくれ。市民の生活をすべて原子力で賄ってるオレたちにはフォトン・バッテリーは有り余ってるんだからよ」

ミラジがいくら悔しがったところで、若い彼らに腕力で適うはずもなく、引き下がるほかなかった。ミラジは溜息をつきながら表に出て、気分転換に通りを歩くことにした。

ミラジ(クンタラを差別する気持ちなど微塵もなかったはずなのに、何だろうかこの怒りは。結局クンタラを嫌っていたロルッカは金が入り出した途端にここへは立ち寄らなくなった。アメリアで例え捕まっても法的な裁きを受けるだけだが、ここでは私刑以外ありえない。なんということだ・・・)

彼らの拠点は当初奪った地域より150㎞ほど南へ移動していた。

これはルインとマニィが図書館で宇宙世紀時代の地下送電網の存在を見つけたから出来たことであった。原子力エネルギーは安定した電力を生み出し、送電網がある限り電力を供給してくれる。なぜそういう仕事をみんなしなくなったのか。なぜ戦うことばかりに夢中になるのか。

ミラジ「結局、エネルギーがある限り人はそれを浪費したがる。ヘルメス財団がやろうとしたことは何も間違っちゃいない。体育館に並べた原子炉など、1回の空爆で全部吹っ飛んでしまうというのに、なぜ安穏と日常生活を送れるのか。どうせアグテックのタブーの勉強もしなかったのだろう。学問は底辺を救済するものなのに、なぜ底辺はそれを放棄して猿のようにはしゃぎたがるのか。地球の大地はこんなに痩せてみすぼらしいのに、どうして地球に住むと人は堕落して働かなくなるのか。宇宙であんな態度の人間が1人でもいればそれは必ずミスを引き起こし、重大事故につながる。地球の人間はいくら堕落しても事故などたかが知れていると言わんばかりだ。壁の向こうに真空がある恐怖を知ろうともしない。そして余力のすべてを戦いに振り向ける。アースノイドなど、全員死んでしまえばいいのだ!」

そんなミラジの怨嗟が現実になろうとしていた。

アメリアがクリムから接収していた∀ガンダムと呼ばれる機体が、突如自動操縦に切り替わり、格納庫の天井を突き破って上空へ飛び去ったのである。

∀ガンダムはNY上空から人間が作り上げた文明を見下ろし、解析していた。

(ED)

この続きはvol:68で。次回もよろしく。



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