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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第10話・最終回 感想 [ドラマ]

北米がひとつになった巨大国家のただひとりの大統領候補者が、テレビ番組で「よそ者を殺す」と発言した。しかし誰もその事実に気づかなかった。

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フィルの同僚が同じ番組を観ていたが、彼は気にしていなかった。政治家の発言は聞き流すためのものであって意味はないという。それでもフィルは許せなかった。彼は政治家の発言について執拗に情報を求めた。帰りの電車内で彼はようやくその情報に触れたが、その電車は止まってしまい、外には「よそ者を殺せ」という立て看板が見えた。

思わず非常停止ボタンを押してしまったフィルは列車事故を引き起こした。彼は精神鑑定にかけられ列車の利用を拒否されてしまった。翌日、彼は見知らぬ女性がよそ者だという理由で大勢の人間に追われているのを見て逆上した。

2日続けて警察の厄介になったフィルは危険人物として監視されることになった。何度も同じことを繰り返すとその人物は多くの人々から「よそ者」に見えてくるものだと警告を受けた。会社では健康のモニタリングを受けさせられ、政治の話はするなと命令された。

昼食のとき、フィルは会社から見える位置に「よそ者を殺せ」の看板があるのを見つけた。そのわきには人間が吊るされている。その晩彼はテレビの視聴者参加番組に身分を偽って出演し不快な看板についてたったひとりの大統領候補者に質問しようとした。ところがウソはすぐさまバレてテレビには本名と居住地が映し出された。候補者はあなた自身がよそ者でないなら心配は無用だと答えた。

すっかり危険人物となったフィルは会社で無視されるようになった。帰宅してみると妻が警察に事情聴取を受けていた。裏窓から自宅に侵入したフィルは妻に逃げようと言ったが彼女が話を聞かないのでカッとなって殴ってしまった。

自分がすべてを暴くんだと意気込んで家を飛び出した彼は「よそ者を殺せ」の看板に登っていった。そして彼は看板に吊るされた新しい見せしめとなった。たったひとりの大統領候補者が「よそ者を殺せ」と発言したのはその言葉に反応するよそ者を炙り出すためのキャンペーンの一環で、画一化に馴染まず反対意見を表明する人間を排除するための政策であった。


短編「吊るされたよそ者」の映像化。スリリングで素晴らしい。デブのフィルがいい味出している。

「エレクトリック・ドリームズ」はディックファンにはたまらないドラマだったと思う。アメリカドラマが好きな人には物足らないところがあったのかもしれないが、オレにとっては最高のドラマだった。

どの話も素晴らしいが個人的に好きなのは第1話「真生活」第4話「クレイジー・ダイアモンド」第10話「よそ者を殺せ」などがお気に入り。まぁどれも面白いので好きな作品は人それぞれだろう。

むかし筒井康隆が日本SFの年度別短編傑作選を選んで書籍化していたことがあったが、あれには小説のみならず漫画も選出されていた。日本もああいうものをドラマ化する機会があればいいのにと思わなくはないけども・・・きっと金が掛かるというだけで敬遠されるんだろうなぁ。もうテレビにドラマは期待できない。配信業者に作ってもらうしかないんだよね。残念ですが。

古い作品をよく現代的にしてあって、脚本のレベルの高さを実感しました。



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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第9話 感想 [ドラマ]

駅員のエドはメイコン・ハイツという存在しない駅への切符を求める女性と出会った。

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エドがメイコン・ハイツという駅が地図にないことを説明しようとするとその女性リンダは消えたように姿が見えなくなった。彼女が乗りたがっていた列車は存在するが、駅はない。彼女はメイコン・ハイツに行くために毎日同じ時間の列車に乗るという。

精神病の息子のことで気が滅入っていたエドはある日リンダが乗っていると主張していた同じ時刻の列車に駅員の仕事を放り出して飛び乗ってしまった。リンダがメイコン・ハイツまで28分だと言っていたのを思い出して時計のタイマーをセットしたエドは駅のない場所で乗客が次々に飛び降りるのを目にして驚き、自分も列車から飛び降りて後を追った。

彼らの後をついていくとそこには地図にない町があった。メイコン・ハイツは人々が幸せに暮らすエドにとっては好ましい町だった。リンダはベンチの隣に腰かけて「あなたにはこの町が必要だ」といって去っていった。エドが自宅に戻ってみると精神病の息子は生まれてないことになっていた。

翌日、エドは存在しないはずの息子の姿を駅で見つけた。彼はメイコン・ハイツに向かう列車に乗ったかの思えたが姿は見失った。気になった彼はメイコン・ハイツについて調べ、それが計画されかかったものの頓挫した町の名前だと分かった。メイコン・ハイツの計画が挫折したいきさつを新聞記事にまとめた記者を訪ねたエドはこの不思議な街について質問した。

リンダは、メイコン・ハイツという夢の町を計画した建築家の娘だった。建築家は町の計画を実現しかけたが不正経理を疑われて落札した権利を手放し、自殺してしまっていた。世界が違うものに変わってしまっていると気づいたエドは仕事を放り出して列車に飛び乗った。メイコン・ハイツは素晴らしい町だったが、何もかも前と一緒で、リンダには会えなかった。

自宅に戻ったエドは妻が別の人生について想いを馳せていることに驚いた。夜になって物音に気づいた彼は屋根裏部屋へ上がっていった。そこには古ぼけたビデオテープが置いてあり、息子との楽しい思い出が録画されていた。急に後悔を感じ始めたエドはもう一度メイコン・ハイツへ出かけてリンダを探したが町は何かが変わってしまっていた。

エドの元通りにして欲しいという願いを聞いたリンダは彼の息子がこの先の人生で関わる人間すべてを不幸にしていくと告げた。それでも息子を取り戻したいエドはすべてを受け入れると宣言した。


短編「地図にない町」の映像化。

随分思い切った改変で、家族の話になってた。でもこれは改変しすぎて凡庸になってないかな? ディックらしさを殺している気がする。

ドラマとしては面白いだろうが・・・。



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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第8話 感想 [ドラマ]

格安恒星ツアーを請け負うアストラル・ドリームス社に地球へ行きたいという老婆が訪ねて来た。

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彼女はイルマ・ゴードンと名乗った。342歳になり聴覚を失った彼女は従者にロボットを連れていて、地球へ行きたいとツアーを申し込んできた。予約の受付時間はとっくに過ぎていたが、彼女は2000ポジティブという大金を支払うと申し出た。

アストラル・ドリームス社の9番艦を預かるノートンとアンドリュースがふたりで分け合っても1000ポジティブ、5年分の給料と同額だった。しかもノートンは首都惑星への転勤を却下され恋人に振られそうになっている。金が必要だった。

地球はすでに消滅していた。そこでふたりは条件がよく似た星を見つけ出しそこを地球と偽ってイルマを案内することにした。ノートンは接客係を担った。イルマと会話する機会も多かったが、彼は女史と会話すると奇妙な感覚に襲われることがあった。

ロボットはノートンらがウソをついていると知った。しかし彼はイルマが余命3か月であることを考えウソをつくことにした。ノートンはイルマの祖父にそっくりで、イルマが彼を気に入っていたためだ。ノートンとイルマは補助用のスーツを着て偽の地球へ降り立った。補助用の宇宙服は酸素がわずかしかなく、それはすぐに尽きた。

ノートンとイルマは夢の中の地球で、祖父と祖母たちと同じように裸で泳ぐ夢を見た。


短編「ありえざる星」の映像化。この短編のことは知らないが、おそらくかなり改変してあるはず。元ネタがわからないとどこがディックっぽいのか判然としないほど改変してある。

観客は観たいと欲するものを観るのであって決して真実をありのまま観察できるわけではない。とくに余命いくばくもない老人が見たい夢を見たからといって誰に咎められるものではない、くらいのテーマだと思うが、ディックの短編はちょっと違った書き方になっているはず。

ノートンが徐々にイルマの夢に浸食されて現実を捨てて彼女とともに死ぬのだが、ディックらしさはその辺にあるのかも。



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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第7話 感想 [ドラマ]

父とのキャンプでチャーリーは隕石群が落ちてくるのを見た。

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キャンプから戻ったある日のこと、父がガレージで何者かに襲われているのを見た。気づいたときその何者かはチャーリーの父親と入れ替わっていた。

入れ替わりは次々に起こった。近所の父親はみんな入れ替わってしまった。チャーリーはガレージで父親の皮を見つける。しかしそれはゴミの日に捨てられてしまって証拠にはならなかった。

父親に入れ替わりに気づいたと悟られたチャーリーは友人兄弟に頼って宇宙人が繭の中で育てていた入れ替わりの素材になる人間たちを燃やし尽くした。


フィリップ・K・ディックの短編「父親もどき」の映像化。

このドラマでは宇宙人による侵略とハッキリ描かれていたが、原作はもっと曖昧で子供の視点がどこまで信じられるのかぼやかしたままになってる魅力がある。児童文学に類する類の小説で、子供のころに獲得する三人称的な視点に対する不安、もしかしたらみんな偽物ではないか、自分はみんなに騙されているのではないか、あらかじめすべてが仕組まれているのではないかという不安を元にした作品だ。

自分が世界の全てで他者がその登場人物である幼少時には世界は恐怖の対象ではない。少年になって自分こそが世界の一部で登場人物なのだと認識が拡がったとき、世界はいいようのない理解しがたいものになる。認識の拡大が招くいっときの妄想がこの物語のアイデアになっている。

ドラマの方は子供の不安定な視座を再現できておらず、大人から見た少年視点で描かれている。その視点は安定しており、普遍的な少年期の不安は払拭されている。

ドラマとしての完成度は高いが、少年期の不安というテーマには迫れていない。



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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第6話 感想 [ドラマ]

地方で暮らしている人々にとって都会は高度なセキュリティーに守られた安全な場所だった。

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だがそれはデックスという追跡装置によって担保された安全だった。デックスがないとどんな場所でも不便極まりない。学校でも同じだった。デックスを持っていないとテロリスト呼ばわりされた。

田舎から出てきたフォスターは1年限りの滞在許可を得て都会へ出てきた。彼女の母親はデックスが嫌いで所有を許可しなかった。あまりに不便だったのでフォスターは母親の口座から購入資金を盗んで自分のデックスを購入した。協力を申し出てきたカーベはフォスターの身体を求めてきたが彼女は慣れてなかったので断った。

デックスの使い方に慣れない彼女はカスタマーサポートに連絡した。カスタマーのヒューマンサポートの男性は優しくて冗談がわかる人物だった。フォスターは彼のことが気に入った。

学校へ行ってみると肉体関係を断ったことが問題になっていた。デックス購入を手伝ってもらったときに母親の口座からお金を盗むのも知られているので肉体関係を持たなければ身の破滅だと忠告された。それに従おうとするとカーベには拒否された。

皆に嫌われていると感じたフォスターはヒューマンサポートと話をして心を落ち着かせた。ヒューマンサポート・イーサンはカーベを調べてみると約束した。夜になってイーサンから連絡があった。カーベは非行歴などはなかったが数日前から1日15分デックスを外す時間があり、同じことが同時に他の地域でも起こっていた。イーサンは協力を求めてきた。

カーベの後をつけてみると、初日に彼女を助けたデックスを着けていない東洋人の少女が扉の奥から出てきた。イーサンは彼女の後をつけてくれと頼んだが、フォスターは自分のデックスが他のものと違ってイヤージェルで会話をするタイプであることに不審を持ち始めていた。彼女の父親も同じように自分で自分の話しかけるようなことをしていたのを思い出したからだった。

東洋系の女は特に不審なところがあるように思えなかったがイーサンは警戒していた。フォスターは飲み物を吐けと言われその通りにした。イーサンは女の父親はテロリストだと告げ、彼女の母親もそのテロリストと繋がるために都会へ来たといった。そこへフォスターの母親がやってきた。

母親は学校から様子がおかしいと連絡を受けてやってきた。しかしイーサンは誰も信じるなと告げている。フォスターはどちらを信じていいかわからなくなったが、最後は母親に従ってデックスを捨てた。ただしイヤージェルはそのままにしておいた。

翌日、学校でテロリストの襲撃が起こった。デックスを捨ててしまっていた彼女はみんなと一緒に逃げることが出来なかったがイーサンの声が届いて部屋の外へ出てしまった。イーサンは言葉巧みにフォスターにテロの実行犯になるよう流した。主犯を捕まえるために必要だというのがその理由だった。彼女はイヤージェル相手ではなく本物の人間と話したいと欲したがその相手はいなかった。彼女はイーサンに従うことにした。母親はその夜に謝罪してきたが、もう遅かった。

彼女はイーサンの指示通りテロリストを装い、監視社会と戦っていた自分の母親をテロリストに仕立て上げて逮捕させた。彼女は本当の母親よりカスタマーサポートの声を信じた。

イーサンは、デックスを開発する会社の一社員であった。


フィリップ・K・ディックの短編「フォスター、お前はもう死んでるぞ」の映像化。実際に自分の周囲にいて自分を愛してくれている人間より電話の向こうにいる人間を信じてしまう愚かしさを皮肉った作品。それをネットに置き換えてある。作品発表当時デックスは頭の中に直接響いてくる電話のようなものだったが、それを上手にネットに置き換えてあった。

作品テーマは監視社会の批判であるが、アイデアの元になっているのは旦那のアドバイスを無視してカスタマーサポートと話し込んでる嫁の姿から着想を得ている。ディックは存命中にあまり売れなくて多作を余儀なくされたので短編はちょっとした出来事を元にしていることが多い。これもそのひとつ。

第4話以降パワーダウンするなんて話は真っ赤なウソで、6話までは素晴らしい出来のドラマだ。脚本の上手さもそうだが、毎回役者が達者でビビる。上手い人ばっかり使ってる。演技派女優がこんなにいることに驚く。



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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第5話 感想 [ドラマ]

人の心を読む超能力者は社会で異端者であったが、それに利用する価値を見出す者と反発する者を生み出していた。警察はもちろん前者であった。

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テレパシーを持つ超能力者たちはティープと呼ばれていた。権力者はティープの能力を恐れながらも自分たちの立場を有利にするために利用したがっていた。一方で権力を持たない市民たちはただひたすら彼らを怖れ憎しみを抱くか畏れ敬っていた。警察は法改正を行ってティープの捜査利用を開始した。

ティープの女性オナーは警察から協力を頼まれた。オナーはノーマルの警官であるロス捜査官と相棒になって過激派組織の取り締まりを行うことになった。ある日、過激派のデモに奇妙なマスクをした男が現れ、不審に思った相棒がこの男を逮捕した。彼の尋問はテレパシーのあるオナーが行い、アジトのことや仲間のことを心を読んで知った。

ガサ入れしてみるとオナーの透視は正しいと分かった。しかし彼らが隠していたのはあの奇妙なマスクだった。フードメーカーなる人物は過激派たちに謎のマスクを配っているようだった。そのマスク状のフードは、被っているとティープに心を読まれないのだった。

社会から嫌われているティープはまとまってゲットーで暮らしていた。彼女は相棒のことを気に入っていたが、それがアダとなってティープからは裏切り者、スパイと罵られていた。彼女はティープたちの感情を読んでいたが、相棒には黙っていた。

オナーはロスといると周囲の雑音を遮断できると感じていた。彼女は相棒の心は読まないという規定に従って彼の心を頑なに読もうとはしなかったが、心穏やかになれる彼にそれは必要ないと感じていた。

フードメーカーは各地にフードをバラまき続けていた。ロスとオナーは製造元の調査を始めた。捜査の過程で彼らは資源調査局のフランクリン局長がいかがわしい場所でティープ相手に遊んでいるのを見つけた。彼は手錠を掛けられたが、フードに使用されているリネンの大量発注者の名前を教える代わりに逮捕を免れた。

ロスとオナーは理念の大量発注者が政府であることを突き止めた。政府はティープを利用しながら防御方法も研究していた。研究者の中にサディアス・カッターという博士がいた。彼は13年前に精神を病んで退職していた。本当の理由は彼の心を読んでいないのでわからなかった。

釈放されたフランクリンはティープのゲットーに舞い戻り、お気に入りのメアリーを車に招き寄せた。しかしメアリーは彼に服従するかのように見せて仲間とともに彼を襲った。ゲットーではそこかしこで暴動が起こった。ティープたちは抑圧に耐えかねて反乱を起こそうとしていた。メアリーはオナーにも参加を呼び掛けていたがオナーはそれに答えず「行く場所がない」とロスに答えた。

ロスはオナーを自宅に招き入れ、表裏のなかった父親を尊敬していたことなど話した。ティープと寝た警官はクビになる決まりだったがふたりには関係がなかった。

ロスを信頼するオナーは彼への協力を続けることにした。彼女は書籍にリネンが使用されていることを手掛かりにして倒産した製本所を割り出した。ロスはオナーを残し自分ひとりで捜査に出たがオナーは彼のあとをつけていった。

製本所はフードの制作場所であった。それを行っているのはサディアス・カッターだった。彼のデスクにはロスの写真があった。カッターはロスの秘密を知っていた。オナーの姿を見つけたカッターは彼女にロスの心を読んでみろと勧めた。オナーは初めて彼の心を読もうとしたが出てくるのは少年時代に父親と釣りをした場面ばかりでその先が読めなかった。ロスは心をブロックできるのだった。

オナーは裏切られたと思い、仲間を呼び寄せた。ティープたちは製本所に殺到してサディアス・カッターに精神攻撃を仕掛けた。カッターの精神は幼児にまで逆行して崩壊した。オナーはロスを逃げられないように閉じ込めた。ティープたちは製本所に火を点けた。オナーが鍵を開けなければロスは焼き殺されてしまう。ロスは心を開いてオナーに読ませた。

オナーが聞いたのは手酷い裏切りの言葉だった。ロスはティープを化け物だと思っていた。しかし言葉の上では彼は焼き死ぬ寸前までオナーに耳障りの言いウソを言い続け、オナーもそれを聞き続けた。


短編「フード・メイカー」の映像化。ディックとは思えないほど綺麗な映像にしてあった。

ディックは理由は分からないが男が女を手酷く裏切り、最後に復讐される話が多い。特にこのシリーズの映像化はそういうものを選んであるようだ。彼自身は何度も結婚と離婚を繰り返している(5回)からモテないわけじゃなさそうだ。結婚しても結婚してもみんな家を出ていくからそのことを書いたのかも。いや、知らんけど。本人に訊いてくれ(故人)。

第5話「フードメーカー」も信頼が崩壊する話で、その崩壊過程が面白い作品だ。姿の見えない謎の男が最後に全部ばらして台無しにしてしまうところもディックっぽい。ディックとしては真実と虚実の境界線が面白いのだと思う。彼の麻薬依存なども、麻薬で気持ち良くなることより、クスリが虚実を作り出し、真実との境界線を作り出すところに興味があったのだろう。その境界線が大きく振れてどっちつかずになる感じが彼が求めていたものではないだろうか。

その面白さが、シリアスなものでコミカルなものでどちらでもよくて、シリアスとコミカルの境界があいまいになったものならもっと好んでいたはずだ。

文学者として非常に優れた人物だと思う。人間性は最悪といっていいが。



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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第4話 感想 [ドラマ]

資源もなく領土も海の浸食によって次第に失われつつある世界で、夫は船で旅をする夢を見ていた。

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しかし妻は現実的で夫のそのような妄想に付き合ってはいられなかった。ふたりの住む海岸沿いの邸宅はいまにも崩れそうで、もってあと1年、それを過ぎたら他の海岸線の家々と同じように海に沈むしかなかった。

夫は船でエル・ドラドを目指すことを諦めてはいなかった。彼は1年経ったら仕事も何もかも捨てて妻とともに海へ出て理想の大陸を目指すつもりで準備に余念がなかった。妻はそんな夫を歯がゆく思っていた。夢のことばかり話し、一向に新しい家を探そうとしない。いい加減ウンザリしていた。海の向こうには何もないと分かっていた。

そんなふたりの家にある異変が起こり始めていた。買ったばかりの生鮮食料品が次々に腐っていくのだ。玉子もジャガイモもすぐに傷んでしまい食べられなくなった。傷んだ商品はリサイクル業者に引き取られていった。いまでは有機物はどれも貴重だったからだ。

植物を育てることを趣味にしている妻はある日捨てなければいけないジャガイモを取っておいた。するとジャガイモは芽を出していた。夫はそれをどこか別の場所に植えようと妻とともに出掛けたが、海岸線の土地はどこも土の下に鉄板が敷いてあって植物を植えられなかった。そんな世界に夫は耐えられなくなっていた。

夫の仕事は豚と人間の細胞を繋ぎ合わせて新しい臓器を作り出すことだった。豚と人間の相の子は個体数を増やし、人間と共存しいて暮らしていた。ついには人間と豚の細胞からQCという量子意識を生み出す細胞を作り出してアンドロイドに植え付けることに成功していた。運命的に知り合った保険外交員の女性もQCによって意識を持ったアンドロイドだった。ふたりは女が馴染みのバーで何度か話をする仲になった。

ある日、保険外交員の女はQCをブラックマーケットで売りさばくことを提案する。大金が何かを変えてくれることを期待した夫はこの誘いに乗って、自分の指紋と鍵の代わりになる歌を教え、彼女に託した。夫の指紋がついた手袋を使って女は夫の職場に忍び込み、仲間とともにQCを強奪した。

女は奪った10個のうち1個を自分用にとっておき、残りを売り捌こうとした。しかしその試みは失敗して彼女は自分用のQCすらも失ってしまった。彼女の中のQCは死にかけており、新しいものが必要だったのだ。一方で夫は途中で悪事を働くことに気が咎め、警報を鳴らしたことで社内で英雄扱いされていた。

女は夫婦の家に押し掛けて妻の信頼を得て病気を装い居座った。そこでもう一度夫の協力を仰いだ。もう関わるつもりはなかったが、自分の夢を唯一理解してくれる彼女の「生きたい」という願いに抗しきれず、彼は研究所に忍び込んでQCの注入器を奪い、彼女からQCを奪った連中と接触して彼女に注入した。

奪われたものを取り返して女と夫は大海原へ旅立つつもりだった。しかし、夫の会社の社長こそがブラックマーケットを牛耳る男だと分かり、夫は何もかも諦めて女からQCを抜き取ることに同意した。女は寸でのところで社長の頭を撃ち抜くことに成功し、男に裏切り者と罵ってその場から逃げ去った。

女が向かった先は妻のところだった。ふたりの女は意気投合しており、夫の不実を互いに共有するとふたりで逃亡することを決意する。

夫が帰宅してみると海岸沿いの家は崩れかかっていた。彼はかねてから用意してあった船を出してこの世界から逃げ出そうとした。ところがその船にはふたりの女が先に乗り込んでおり、どちらも裏切った夫を海に叩き落して船を奪って逃げてしまった。


原作はフィリップ・K・ディックの短編「CM地獄」。CMと訳しているけど訪問販売のことだ。

ディックお得意のレズビアンもの。彼の性癖なのかよくわからないが、レズビアンネタはよくある。この作品の場合、アンドロイドとかQC(量子意識)とかはあまり関係なく、しつこく訪問販売にやってくるちょっと色気のある年増女が妻と寝んごろになって夫を捨てたら面白かろうというのがアイデアの源であって、SFっぽい部分は装飾に過ぎない。最後に夫が妻も愛人も仕事も家も船も航海に出るという夢さえも奪われてしまうところが笑える部分。ディックには共和党員が夢見るような女はついぞ書くことが出来なかった。

実はアマゾンのレビューをチラッと読んでみたのだが、第4話以降パワーダウンして面白くなくなると評する人が多かった。それでまぁつまらないなら切ればいいしと期待せずに視聴したのだが第4話も変わらず面白かったので安心した。

第4話は役者の演技の素晴らしさに加えて、映像のカラリングが彩度高めで不思議な世界に上手くマッチしていた。何もかもが腐り、新しいものは人工物しか生まれないどん詰まりの世界から逃げたかっただけのそんなに悪くもない男が、夢を分かってくれない妻と夢を分かってくれる情婦との間で宙ぶらりんになって全部奪われる物語は好き嫌いあろうが、これがディックである。


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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第3話 感想 [ドラマ]

地球の資源が枯渇し、大気さえも減少する一方となった未来の地球。生き残った人類はレクサー4という惑星に宇宙船を派遣して、水資源を盗んでいた。

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レクサー4には先住民族がいた。彼らは地球人の略奪行為に武力を持って対抗していたが、地球人はお構いなく彼らから水を奪い取っていた。地球の状態は略奪なしには成り立たないほど深刻だった。

そうした行為に反対を唱える女性代議士がいた。彼女はレクサー4の先住民族に配慮すべきと訴えていたが、悪いことに軍人である彼女の夫ヘリック大佐はまったく逆の考えを持っていた。軍人である夫は地球の英雄であったが、高圧的な人物で、妻である彼女の話など聴かずに大声で遮るばかりだった。

地球の状況は日増しに悪くなるばかりで、またすぐにレクサー4からの水資源の略奪が必要となった。妻は今度こそそれを止めようとしたがやはり怒鳴りつけられ計画は実行に移されることになった。夫はレクサー4に派遣されることを喜び、妻には無関心だった。

ところがその派遣隊が先住民の襲撃を受けた。彼らはあらゆる面が地球人とは異なっており、まばゆい光のような生物だったが知的生命体であることは疑いようがなかった。戦闘は激しく、水を満載した宇宙船の確保が優先されて夫たちは敵もろともミサイルで吹き飛ばされた。

その宇宙船が自動操縦で大気圏に突入したとの連絡があった。宇宙船の中には人間がふたり生き残っていた。それはヘリック大佐と彼が助けたマシューズだった。彼らは宇宙船内部にレクサー人は乗り込まなかったと証言したが、ビデオで確認したところ2体の光輝くレクサー人が乗り込んできていた。

ヘリック大佐はまるで人が変わったようだった。彼は妻に優しく、愛すべき夫に生まれ変わったかのようだった。妻はレクサー人に乗っ取られた可能性を疑うように忠告されたが夫は以前よりはるかに優しく好ましかったので疑う気にはなれなかった。

突然軍の部隊が自宅に乗り込んできた。彼らは大佐を逮捕して連行した。説明ではもうひとり生還したマシューズが寝言で「仲間を救出する」という意味のレクサー語を喋ったと確認されたのだ。生還したふたりはレクサー人に憑依されていたのだ。彼らはメタモーフと呼ばれ、まったく新しい事例であった。取り調べでヘリック大佐は自分をレクサー人だとは決して認めなかった。

裁判となってヘリック大佐はレクサー人として処罰されそうになった。レクサー人は血も涙もない冷血な生物で、人間に必ず害を及ぼす。このような危険な生物をメタモーフだからといって裁かないわけにはいかない。しかし軍の思惑を無視し、妻は夫は確かに変わったかもしれないがレクサー人ではないと証言した。

次の証言者である妻の同僚は、妻が職場で夫が優しくなったと喋ったことを告げた。これをもってヘリック大佐がメタモーフである証拠であると述べた。同時に妻がウソをついていると告発した。

ついでヘリック大佐が証言を求めた。彼は自分はメタモーフではないと前置きし、しかしながら妻まで反逆罪に問われるのなら妻の身の安全を保障する約束が得られれば自分はメタモーフと認めてもいいと証言した。これで軍の思惑通りヘリック大佐はメタモーフであるとされかかったが、妻は再び証言の機会を求め、軍に言う通りレクサー人が冷血な生物であるなら自己犠牲によって妻を守ったりしないだろと裁判官に訴えた。

裁判は妻の訴えが認められ、ヘリック大佐は釈放された。そして妻は自宅に戻った彼に「そろそろ本当の名前を教えて」と言った。

するとヘリック大佐は「君には発音できない」と応えた。



これは短編「人間らしさ」の映像化ですね。こういうものを読んでディックが追求した人間らしさとは何だという主題がどうのこうのという人は素人。むしろこれはディック的フェミニズム作品のひとつで、高圧的で暴力的な夫は妻にとっては宇宙人以下だと皮肉ったもの。

夫を裏切り宇宙人とのセックスを楽しむところが面白い部分。夫が宇宙人に身体を乗っ取られたことを内心で笑い、不貞を働くところに魅力がある。地球人は自己犠牲という尊いものを理解するが原始的なレクサー人にそんなものはないと蔑む軍の油断に付け入り、妻はレクサー人の夫を身を挺して守った。前の夫にそんな価値はない。こういうところがディック的でいいところ。

「高い城の男」の愛国的な部分も本当は自己犠牲を必要以上に美化するアメリカを皮肉っているのに、ドラマでは皮肉がなくなって本当に愛国的になっていたのは興覚めであった。

境界線を曖昧にするディックという作家は、コンサバティブとリベラルの境界線すら曖昧にしていたのだと理解しないと面白くない。

いまのハリウッドはこれが出来ないんだよね。



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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第2話 感想 [ドラマ]

第2話は核戦争によって人類の大半が滅びてしまった後でも稼働を続ける自動工場の話。

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人類滅亡前から稼働している自動工場は、ほとんどの人類が滅びたのちも動き続けていた。工場は排気ガスを発生させ、排水を垂れ流し、頼まれもしない商品を作り続けている。排気ガスや排水は生き残った人類の生存を脅かすまでになっており、自然環境の回復を果たしたい生き残った人類は協力して自動工場を止めようと策を練った。

コンピューターの知識のあるエミリーは撃ち落とした配達用のドローンから自動工場へ苦情を入れるプログラムを発見して意味不明な言葉を送り付けた。工場はすぐに顧客対応ロボットを派遣するとメールを寄こし、やがて苦情対応ロボットがやってきた。

エメリーは彼女の協力をなかば恫喝しながら引き出し、仲間とともに工場内に核弾頭を持ち込むことに成功した。彼女たち3人はそれぞれの階に核弾頭を仕掛け、完全に自動工場を破壊するつもりでいたが、途中で別れたふたりは警備ロボットに殺害されてしまった。

ところが殺害された遺体を見たエメリーは彼らがロボットであることを知った。そして苦情対応ロボットに捕らえられ、真実を聞き出した。

本当は人類の生き残りなどいなかった。彼ら人類もどきは自動工場の作ったロボットであった。自動工場は核戦争によって人類が滅亡したことを知ったが、すぐに死んだ人間たちはロボットに置き換え可能だと気がついたのだ。そこでまだ意識のあった人類を保護して脳から情報を引き出し、それをロボットに移植していった。ロボットに置き換えられた人類は自動工場の顧客となって工場存続の理由を作った。それで万事うまくいったはずだったのに、ある一角に導入された人類だけがなぜか良き顧客とならなかった。

バグだと思った自動工場はエメリーたちからコンタクトを取ってきたのを幸いとして苦情対応ロボットを送り込んだ。そしてバグを排除するために彼女らのコロニーにミサイルを撃ち込んだ。これですべてが解決するはずだった。

しかしエメリーは自分がロボットであることを知っていたのだ。彼女はある夢から自分がロボットである可能性を感じて皮膚を切り裂き電子脳の内部を見た。そこで彼女は自分の脳にわざとウィルスを仕込み、工場に潜入することだけを目的にしていたのだ。

困惑する苦情対応ロボットは、彼女が置き換えられる前に誰だったのか知ってすべてを納得した。彼女のこの工場を作り上げた責任者だったのだ。

エメリーが送り込んだウィルスによって、自動工場は停止させられた。


第2話も凄い。ちょっと恋人同士の演出などがクドイが、エメリーが夢を接点として置き換えられる前の自分を意識したこと、人間だと思っていた自分がロボットだと告げられた瞬間に実はそれに気づいていたことなど、人間とロボット、夢と現実の境界線が曖昧になっていくところなどディックっぽさはちゃんと生かされている。

フィリップ・K・ディックという作家は、存在自体が財産といっていいね。ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞するなどという茶番をやるなら、フィリップ・K・ディックと筒井康隆が受賞すべきだったよ。



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「エレクトリック・ドリームズ」(2018年作品)第1話 感想 [ドラマ]

アメリカとイギリスの共同制作によるフィリップ・K・ディックの短編集をドラマ化した作品。

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第1話は「Real Life」。

一方の世界で主人公はサラという名の女性警官。サラにはレズビアンのパートナーがおり、完璧にデザインされた美しい街並みに棲む未来世界の住人だった。彼女は同僚を殺されたショックから逃げるために脳内で疑似体験を楽しめる装置を使って休息をとろうとした。

ところがその装置によって別の世界に行ったサラは、そこではジョージという名の仮想現実体験を得られる装置を開発する会社のオーナーだった。その世界ではまだ自動車はタイヤで地面を転がっており、愛する妻は殺されて死んでしまっていた。ジョージは妻を殺されたショックから逃れるために脳内で疑似体験を楽しめる装置を使って休息をとろうとした。

そして、どちらが本当の現実なのかわからなくなる。

ジョージの世界で彼は浮気相手の女性から心の罪を受け入れる必要性を訴えられ、ついにヘッドセットを壊して仮想世界への入り口を塞いでしまうのだが、サラの世界では彼女は意識がジョージの世界へ行ったまま戻らなくなって植物人間状態になって終わる。

これはどちらが本当の世界かわからないまま終わるディックの作風に則っているので、答えはない。

「高い城の男」をどうして嫁が観たくないというので別のを探していてこれを見つけた。まぁ確かにこちらの方が人を選ばないが、「高い城の男」も観たい。本当はね。

全10話あるのでしばらく楽しめそうだ。

もうドラマでこのレベルの映像を作れてしまうとなると、太刀打ちできないね。日本のドラマはどうしたらいいんだろうね。マジで。



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