So-net無料ブログ作成

「わんぱく王子の大蛇退治」(1963年作品)感想 [アニメ/特撮]

東映動画による長編アニメ第6作。ヴェネツィア国際映画祭児童映画祭青銅大賞受賞。

119.jpg


「わんぱく王子の大蛇退治」とは、スサノオノミコトによるヤマタノオロチ退治の話である。

この映画は日本の神話を題材にして、オノゴロ島に住む元気いっぱいの少年が、母であるイザナミの死を嘆き悲しみ、死者の国へ行かんと志して旅立ち、途中で兄であるツクヨミの国へ立ち寄ったり、火の国に立ち寄ったり、タカマガハラでアマテラスと対面したり、出雲の国でクシナダ姫と出会い、彼女を助けるためにヤマタノオロチと戦ったりする物語だ。おおむね古事記などと同じである。

スサノオの破天荒すぎる描写はさすがに省いてあり、子供に観易く工夫されている。またそれまでの東映長編アニメより演出がしっかりしており、絵が動くだけではない、しっかりとした映画の作りになっていると言っていい。それまでは演出といっても泣くシーンで悲しい音楽が流れる程度のものだったのに、一気に進歩しているのが凄い。

音楽は「ゴジラ」の伊福部昭。これがまたすごい。素人にはそれほど複雑な音楽じゃないように思えるのだが、伊福部昭の映画音楽は、情景がメロディーになっているようなもので、これほど映像にしっくり嵌っている音楽もなかなかないと思う。

圧巻は大塚康生と月岡貞夫によるヤマタノオロチ退治のシーン。この場面でスサノオは天早駒(アメノハヤコマ)に乗ってヤマタノオロチと戦うのだが、息を飲む素晴らしい作画なのだ。資料によると、この場面だけで300カット、動画1万枚らしい。まぁこれは間違いなく伝説になる。天早駒にまたがり大蛇の首の間をすり抜けて一太刀、また一太刀と浴びせていくスサノオの姿が、ヌルヌルなんてレベルじゃなく動かしてある。スサノオが馬のたてがみをグイと引いて方向転換するところなどそこだけ何度も観たくなる出来栄えだ。

まさにアニメーションの醍醐味が詰まった1作といっていい。結局はこういう時代を経て日本アニメは成り立ってきたのであり、深夜アニメをいくら模倣しても日本アニメの真似になるとは到底思えない。

本作は日本アニメの歴史的1作と言ってもいいだろう。そういっても過言じゃないほどの価値は間違いなくある。

子供のころ、夏休みなどでテレビ放送されていたものだが、いまはもう古すぎて流せないのかもしれない。アマゾンプライム特典に置いてあるので、これぜひお子さんに見せてあげてもらいたいものだ。

東映動画初期の作品群をアマプラで見させてもらったが、素晴らしいの一言だ。物心ついたころにこうしたアニメを観ていたから、いまになってもこうしてアニメを観ていられるのだろう。

大塚康生の描いた絵を観て、オレは育ったのだ。



コメント(0) 
共通テーマ:アニメ

「安寿と厨子王丸」(1961年作品)感想 [アニメ/特撮]

1961年公開の東映長編アニメ映画。リミニ国際映画祭監督賞受賞。

306.jpg


東映10周年記念作品のひとつで説経節「山椒大夫」を元に子供向けのアレンジを加えてある。森鴎外の「山椒大夫」も同じ話。

優しい父の下ですくすく育った安寿と厨子王。しかし美しい安寿を妻に娶ろうとする鬼倉陸奥守が、彼らの父である岩木判官を貶め、九州へ左遷させてしまう。何も知らされなかった家族の下へやってきた鬼倉陸奥守は、彼らを屋敷から追い出し、すべてを奪ってしまった。

流浪の身となった家族は、まずは京へと昇って事の次第を確かめようとするも悪人に騙され、母と子は離れ離れにさせられてしまう。その際に主人を庇おうとした女中の菊乃は海に流され、人魚になってしまった。母はそのままどこへと連れ去られてしまう。

安寿と厨子王のふたりは山椒大夫という小狡い男に売られてしまい、奴隷として働かされた。辛い日々の労働に負けず、健気に頑張るふたりには山椒大夫の三男三郎が世話を焼くが、安寿と厨子王は図って逃げ出し、安寿は逃亡中に捕まりのちに自害して果てた。

京へ落ち延びた厨子王は、関白に事の次第を聞かせ、父との面会を果たそうとするが父は病でこの世になく、そのまま関白の家で育てられた。のちに宮中で起こった奇怪な事件を解決した厨子王は、陸奥の国主を賜り、勇んで山椒大夫の屋敷に馳せ参じるも姉はすでになく、ようやく母と再会してお互いを慰め合ったのだった。

というお話で、オチが弱いというか、そもそも原作は厨子王も死んでしまうはずだ。

この話は、里を離れるとそこには悪い奴らがたくさんいて酷い目に遭うという教訓話で、悪人の誘いを断っただけの善人一家が艱難辛苦を味わうよくわからない内容なのだ。厨子王は最後は陸奥守となって凱旋を果たし、山椒大夫と対峙するものの、復讐するわけでなく、「ねーちゃんは死にましたか。そうですか」で終わってしまう。一応金で買って働かせていた奴隷は解放しろとは命じる。

作画は素晴らしいし、声優は当時の映画スターがズラリと並ぶ豪華キャストだし、それなりに悲しくもなるので悪くはないが、この手の古い説話はちゃんと解釈しなおして物語に筋を通さないとそのまま作ってもなんだか曖昧なだけで心に響いてこない。

里の外は怖い人間ばかりなのだから、里の中で嫌なことがあっても我慢しろ、立場が上の人間に結婚を迫られたらいやでも受け入れろではいくら何でも酷い。

例えば安寿と厨子王の父が善政を敷いていたときは国は幸せだったが悪政がはびこって人々が不幸になったところに成長した厨子王が国主となって帰ってくるとか、何かないとな。

ただ悲しいだけなんだよな。



コメント(0) 
共通テーマ:アニメ

Twitterまとめ投稿 2018/03/01 [日記]


コメント(0)